レセプト点検の代行とは、請求前のレセプトを外部の事業者が点検し、誤りを見つける業務です。院内で完結させるか外に出すかは、点検の精度と人手のどちらが課題かで決まります。

判断の材料として、まず審査側の数字を見ます。どれくらい査定されているのかを知らないまま、点検の体制を決めることはできません。

何件に1件が査定されているか

支払基金が公表している数字を並べます。令和7年5月から令和8年4月までの審査分、原審査・医科歯科計の実績です[1]。

表1 令和7年度の原審査の状況(医科歯科計・令和7年5月〜令和8年4月審査分[1])

項目

実績

前年度比

請求件数

8億6,042万件

+0.3%

査定件数

1,189.3万件

▲1.5%

請求1万件当たり査定件数

138.2件

▲1.8%

請求点数

1兆7,395億2,453万点

+2.6%

査定点数

62億838万点

+15.7%

請求1万点当たり査定点数

35.7点

+12.7%

医科だけで見ると数字が上がります。請求件数6億8,065万件に対して査定件数1,138.0万件、請求1万件当たり167.2件です[1]。請求1万点当たり査定点数は40.4点で、前年度から13.2%増えています[1]。

件数と点数が逆方向に動いている点に注意してください。 件数は1.5%減り、点数は15.7%増えました[1]。1件あたりの査定額が大きくなっているということです。支払基金は要因として、救急医療管理加算や特定入院料の査定点数の増加を挙げています[1]。

割合に直すと、請求1万件当たり138.2件は約1.38%です(2026年9月14日時点の公表値[1]からの計算)。100件に1件強という水準です。なお支払基金は「査定率」という指標を公表していないため、社内で説明するときは1万件当たりの件数のまま伝えることをおすすめします。

点検は3つの層で行われています

査定件数の内訳を見ると、どこで引っかかっているかが分かります。

令和7年度の査定件数1,189.3万件の内訳は、単月点検分755.5万件、突合点検分231.9万件、縦覧点検分202.0万件です[1]。

表2 3つの点検の違い(2026年9月14日時点[1][2])

点検

見ている範囲

令和7年度の査定件数

単月点検

当月のレセプト1枚の中

755.5万件

突合点検

医科と調剤の突き合わせ

231.9万件

縦覧点検

同一患者の複数月にわたる通覧

202.0万件

支払基金は縦覧点検を「同一患者の複数月にわたるレセプトの通覧点検により補正・査定された内容」と説明しています[2]。入外点検もあり、こちらは「同一患者の入院と入院外レセプトの通覧点検」です[2]。

院内の点検が当月のレセプト1枚に閉じていると、縦覧点検と突合点検で落ちる分が残ります。 前月の算定回数や、調剤側の内容までは、その場では見えません。この2つで年間434万件近くが査定されています[1]。

突合点検の査定件数には調剤レセプト分も含まれます[1]。自院の負担として読むときは、この点を割り引いて考えてください。それでも、医科側の算定と調剤側の内容が合わないことで落ちる分は残ります。

DPCの電子レセプトでは、返戻が増えています。令和7年度の受付件数619.4万件に対して審査返戻件数は14.3万件で、前年度から23.2%増えました[1]。受付1万件当たりでは231.2件です[1]。DPC対象病院では、返戻の傾向を別に追う必要があります。

査定の理由は8つの記号で示されます

増減点連絡書には、理由が記号で書かれています。読み方を知っておくと、点検の観点が定まります。

表3 増減点事由の記号(2026年2月版[2])

区分

記号

内容

診療内容

A

療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの

診療内容

B

療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの

診療内容

C

A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの

診療内容

D

告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの

事務上

F

固定点数が誤っているもの

事務上

G

請求点数の集計が誤っているもの

事務上

H

縦計計算が誤っているもの

事務上

K

その他

A〜Dが診療内容、F〜Kが事務上の誤りです。 自院でどちらが多いかを数えてください。事務上の誤りが多いなら、点検の手順とレセコンの設定で減らせます。診療内容の側が多いなら、算定の判断そのものを見直すことになります。

記号の分布は、点検を外に出すかどうかの判断にも使えます。F〜Kが中心なら、院内の手順を直せば減ります。A〜Dが中心なら、算定のルールに詳しい目が要ります。前者は自院で、後者は外部で、という切り分けが成り立ちます。

支払基金は具体的な取扱いも公表しています。「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)」は2026年8月31日時点で39回、累計871事例が公表されています[3]。別に「審査情報提供事例」もあり、医科82事例、歯科256事例、薬剤334事例です[4]。

ただし読み方に条件があります。公表資料は冒頭で「本公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意願います」と断っています[3]。「原則として認められない」であって、絶対の規則ではありません。

機械で見ているのは4割です

支払基金の審査は自動化が進んでいます。ただし全部ではありません。

査定の契機別の構成割合は、コンピュータチェック契機が4割、職員契機が6割です[1]。令和8年6月審査分でも、請求1万点当たりの査定点数42.6点のうち、コンピュータチェック契機が15.4点、職員契機が25.3点、審査委員契機が1.8点でした[5]。

支払基金はコンピュータチェックのルールを公開しています。2025年10月31日時点で、本部点検条件事例が306,324件、チェックマスタ事例が44,635件です[6]。

公開しない方向で扱う条件も示されています。摘要欄の記載事項の確認が必要なもの、医学的判断が必要なもの、診療行為・医薬品の適応に関するもの、医薬品の用法・用量に関するもの、その他(禁忌使用など)の5つです[6]。

適応外投与や過剰投与の判断は、機械では完結していません。 ここが人の点検が要る理由です。院内のレセコンのチェック機能を通したから安心、とはなりません。

支払基金が公開しているチェック条件は、自院の点検にも使えます。30万件を超える事例をすべて読むことはできませんが、自院でよく算定する項目について検索すれば、どの条件で引っかかるかが分かります。頻出の10項目だけでも確認しておく価値があります。

公開の目的について、支払基金は審査の透明性向上と適正請求の促進を挙げています[6]。事前に知っておけば防げる査定が、そこに含まれているということです。

代行に出すと何が変わるか

外部に点検を委託する意味は、2つあります。

1つ目は、別の目が入ることです。自院の職員が作ったレセプトを同じ職員が点検すると、同じ思い込みで同じ箇所を見落とします。2つ目は、複数月にわたる観点や、他院で見てきた査定の傾向が持ち込まれることです。縦覧点検で落ちる分は、単月の点検では見つかりません。

責任の所在は移りません。個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合に、委託先に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています[7]。個人情報保護委員会のガイドラインは、監督を適切な委託先の選定、委託契約の締結、取扱状況の把握の3つに分けています[7]。

契約前に、委託先の安全管理措置が自院と同等かを確認する必要があります[7]。点検の精度だけで選ばないでください。代行の範囲と料金はレセプト代行の料金相場に、外注できる範囲はレセプト代行とはにまとめました。

再審査で戻せる分がある

査定されたら終わりではありません。再審査の申出で戻る分があります。

令和7年度の医療機関再審査は、処理件数26.6万件、復活件数9.5万件、復活点数2億7,056万点でした[1]。前年度からは処理件数が13.5%、復活件数が15.7%、復活点数が31.4%増えています[1]。

支払基金は復活について「査定レセプトに対し医療機関から取消請求があり、同請求どおり査定取消となったもの」と説明しています[1]。

申出の期間は「原則6ヵ月以内」とされています[8]。これは法定の期限ではなく、支払基金が依頼している運用です。 早めに出すほど確実です。

再審査を出すかどうかの判断にも、点検の力が要ります。査定の理由が記号で来るため、それが自院の算定のどこに当たるかを読み解く作業が発生します。ここを代行に含めるかどうかは、契約時に確認してください。

数字の読み方にも注意が要ります。処理26.6万件に対して復活9.5万件を割ると約35.7%になりますが(公表値[1]からの計算)、処理件数と復活件数は同じレセプトを追った数字とは限りません。自院で計算した数字として扱い、公表された割合のように書かないでください。

なお、保険者側から出される再審査もあります。令和7年度の保険者再審査は処理件数990.5万件、査定件数238.0万件で、処理件数に対する査定件数の割合は24.0%でした[1]。こちらは医療機関が出す再審査とは別の流れです。

認定試験は終了しました

人材面の前提が変わっています。知っておく必要があります。

公益財団法人日本医療保険事務協会は、令和8年3月31日をもって解散しました[9]。同協会が実施していた診療報酬請求事務能力認定試験は、令和7年12月14日実施の第63回で終了しています[9]。

新しく資格を取らせて院内で育てる、という選択肢が細くなりました。 既に資格を持つ職員はいますが、新規の供給は止まります。

採用の場面でも影響が出ます。求人で資格を条件にすると、応募の母数が年々減っていきます。資格の有無ではなく、実務経験の中身で見る採用に切り替える必要があります。どの診療科で、どの規模の医療機関で、どの工程を担当していたか。この3点を聞くほうが、実態に近い判断ができます。

この変化は、点検体制の判断に影響します。院内で育てる前提が崩れるなら、外部の力を使う比重が上がります。逆に、既に経験のある職員がいる医療機関では、その人の時間をどこに使うかの設計が要ります。点検に使うのか、返戻と再審査の対応に使うのか。

まとめ

やることは2つです。直近3か月の増減点連絡書を開き、記号をA〜Dと F〜K に分けて数えてください。そして単月・突合・縦覧のどれで落ちているかを数えてください。

この2つの数字が出れば、点検体制の課題が見えます。事務上の誤りが多いなら手順の問題、縦覧で落ちているなら点検の範囲の問題です。自院の点検をどこまで外に出せるかを検討する場合は、医療レセプト代行に対応範囲を出しています。個別の相談は無料相談、事務全体の見直しは1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。

※数値は2026年9月14日時点で社会保険診療報酬支払基金が公表しているものです。審査月ベースの集計であり、診療月とは1か月ずれます。

参考文献・出典

  1. 令和7年度の支払基金の取扱状況 審査状況(令和7年5月〜令和8年4月審査分) — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年6月30日)(参照 2026-09-14)
  2. 【医療機関等・薬局】増減点連絡書・各種通知書の見方 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年2月)(参照 2026-09-14)
  3. 支払基金における審査の一般的な取扱い(医科) — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
  4. 審査情報提供事例 — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
  5. 令和8年6月審査分の審査状況 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年8月25日)(参照 2026-09-14)
  6. コンピュータチェックに関する公開 — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
  7. 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) — 個人情報保護委員会(参照 2026-09-14)
  8. 審査に関するQ&A — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
  9. 公益財団法人日本医療保険事務協会 — 同協会(参照 2026-09-14)