レセプトの査定とは、審査支払機関の審査で請求した点数が減額され、その分が支払われないことです。減額された残りは支払われます。
返戻と混同されやすい言葉です。 対応の仕方も、月の入金への影響も違います。まず2つを分けます。
査定と返戻は別物です
言葉の定義から確認します。
支払基金は増減点連絡書について、点検・審査等の結果、点数等に異動が生じた場合に知らせる増減点数や事由を表示するものと説明しています[1]。返戻内訳書については、内容確認のため医療機関等へ返すレセプトの内訳や事由を表示するものとしています[1]。
項目 | 査定 | 返戻 |
|---|---|---|
何が起きたか | 点数が減額された | レセプトが差し戻された |
その月の支払 | 減額後の分が支払われる | 支払われない |
医療機関がすること | 内容を確認し、必要なら再審査を申し出る | 修正して再請求する |
通知される書類 | 増減点連絡書 | 返戻内訳書 |
返戻の理由については、支払基金が別の説明を出しています。保険診療ルールに基づき適正に算定されているかを審査委員が医学的見地から審査し、疑義が生じた場合に照会・返戻するとしています[4]。返戻の例として、症状詳記が必要な事例、傷病名漏れ、包括点数算定で出来高部分が発生する事例が挙げられています[4]。
入金への影響が大きいのは返戻です。 その月の支払対象から外れるため、再請求は翌月以降になります。査定は減額後の分がその月に入ります。
この違いは月々の入金額に直結します。査定は減額されたうえで入金がありますから、予定していた金額とのずれとして現れます。返戻はその1枚が丸ごと翌月以降に送られるため、件数が多い月は入金そのものが落ち込みます。どちらも放置すると、原因が分からないまま毎月同じことが起こります。
院内の担当も分けたほうが進みます。査定は診療内容の説明が必要になるため、医師の確認が要ります。返戻は記載の修正が中心ですから、事務で完結する場合が多くあります。届いた書類を1か所に集め、査定と返戻に仕分けてから担当に渡してください。この一手間で対応の速度が変わります。
査定は増減点連絡書で届きます
届く書類を確認します。増減点連絡書には、どのレセプトのどの項目が、いくら減額されたかが並びます[1]。
読むときの順番は3つです。まず、どの患者のどのレセプトかを特定します。次に、減点された項目を確認します。最後に、事由の記号を読みます。
このうち3つ目が判断の起点になります。記号によって、再審査を申し出る価値があるかどうかが変わるためです。
支払基金は点検の種類についても説明を出しています。縦覧点検は同一患者の複数月にわたるレセプトの通覧点検により補正・査定された内容、入外点検は同一患者の入院と入院外レセプトの通覧点検により補正された内容です[1]。当月のレセプト1枚では説明がつかない減点があれば、この2つを疑ってください。
届いた書類は月ごとに保管してください。同じ患者、同じ項目で減点が繰り返されていれば、個別の判断というより、自院の算定の解釈そのものにずれがある可能性があります。1枚だけを見ていては気づけません。3か月分を横に並べると、繰り返しが見えてきます。
事由の記号で原因が分かります
増減点連絡書には、理由が記号で書かれています。大きく2つに分かれます。
区分 | 記号 | 内容 |
|---|---|---|
1 診療内容に関するもの | A | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの |
1 診療内容に関するもの | B | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの |
1 診療内容に関するもの | C | A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの |
1 診療内容に関するもの | D | 告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの |
2 事務上に関するもの | F | 固定点数が誤っているもの |
2 事務上に関するもの | G | 請求点数の集計が誤っているもの |
2 事務上に関するもの | H | 縦計計算が誤っているもの |
2 事務上に関するもの | K | その他 |
F・G・Hは計算の誤りです。 自院の入力かレセコンの設定に原因があります。この記号が続くようなら、再審査を申し出るより手順を直すほうが早く減ります。
A・B・C・Dは診療内容に関するものです。Aは適応外、Bは過剰・重複、Dは算定要件を満たしていないという判断です[1]。ここは説明を足せば認められる可能性があります。症状詳記や検査値を添えて再審査を申し出る場面は、この記号のときです。
記号は原因のある場所を示しています。F・G・Hが指すのは計算の過程、A・B・C・Dが指すのは診療内容の判断です。前者は手順を直せば減ります。後者は説明の量で結果が変わります。同じ「減点」という言葉で届いても、次にすることはまったく違います。
支払基金は個別の判断例も公表しています。「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)」は2026年8月31日時点で39回、累計871事例が公開されています[5]。ただし同資料は「本公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意願います」と断っています[5]。
取り戻せる査定と、取り戻せない査定
ここが実務でいちばん重要な線引きです。
北海道国民健康保険団体連合会は、再審査請求について明記しています[3]。
病名の欠落、記載誤り等による減額査定分は、再審査請求及び取下げの対象となりませんのでご注意ください。
つまり、自院の記載漏れが原因の減額は、後から取り戻せません。傷病名を書き忘れたことによる減点は、再審査を出しても戻らないということです。
この線引きが、点検の価値を決めます。請求前の点検で防げるのは、まさにこの取り戻せない部分です。請求してしまった後では、どれだけ丁寧に説明しても認められません。
逆に、医学的な判断に関する減額であれば、根拠を添えて申し出る余地があります。検査を行った理由、投薬の必要性、患者の状態。これらを説明できるのは医療機関側だけです。
院内で決めておきたいのは、再審査を申し出る基準です。たとえば次の2つが考えられます。
- 記号がA・B・C・Dで、かつ減点が一定の点数を超えているもの
- 同じ算定内容で、複数の患者に同じ減点が出ているもの
基準がないと担当者ごとに判断が変わり、出すかどうかの相談だけで時間が過ぎていきます。
申出には理由書を添えます。書くのは、減点された項目について、その診療がなぜ必要だったかの説明です。カルテの記載、検査値、患者の経過。審査委員は提出された書面だけを見て判断しますから、診療の場では当然だった前提も、書かなければ伝わりません。ここを省いた申出は認められにくくなります。
再審査を出すかどうかは、記号を見て決めてください。 すべてに出すと事務の負担だけが増えます。請求前の点検についてはレセプト点検の代行にまとめました。
再審査請求の期限と出し方
期限を確認します。支払基金のQ&Aは次のように説明しています[2]。
支払基金への再審査の申出期間については、『社会保険診療報酬支払基金に対する再審査申出について』(昭和60年4月30日保険発第40号・庁保険発第17号)により、原則6か月以内に申出いただくよう依頼しているところです。
「依頼している」という書き方に注意してください。 法定の期限ではなく、運用上の依頼です。ただし遅れれば審査が難しくなるため、実務では6か月を期限として扱います。
国保連も同様です。北海道国保連は、増減点・返戻通知書または過誤・再審査結果通知書等の送達後、6か月以内に行うよう求めています[3]。国保連は都道府県ごとに運用が異なるため、自院の請求先の案内を確認してください。
受付の締日も決まっています。支払基金は再審査請求に係る受付締日を月ごとに公表しており、令和7年度から紙レセプト、連名簿、電子レセプトをすべて同一日にしています[6]。
締日は月ごとに違います。同じ「今月中」でも、締日を1日過ぎれば翌月の受付になり、結果が届くのはさらに先です。増減点連絡書が届いたら、その月の締日を先に確認してください。理由書の作成に時間がかかりそうなら、次の締日に合わせて準備すれば十分間に合います。
もう1つ、時効があります。診療報酬請求権の時効は、令和2年4月診療分から原則5年で、起算日は診療月の翌月1日です[7]。再審査の6か月とは別の期限なので、混同しないでください。
どれくらい戻っているか
実際に戻る規模を見ておきます。判断の材料になります。
令和7年度(令和7年5月〜令和8年4月審査分)の医療機関再審査は、処理件数26.6万件、復活件数9.5万件、復活点数2億7,056万点でした[8]。前年度からは処理件数が13.5%、復活件数が15.7%、復活点数が31.4%増えています[8]。
支払基金は復活について「査定レセプトに対し医療機関から取消請求があり、同請求どおり査定取消となったもの」と説明しています[8]。
処理件数も復活件数も増えています。 出せば一定の割合は戻る、という状況です。ただし処理件数と復活件数は同じレセプトを追った数字とは限らないため、両者を割って「復活率」と呼ばないでください。公表されている指標ではありません。
もう1つ、伸び方に差があります。復活点数が前年度から31.4%増えたのに対し、処理件数の伸びは13.5%にとどまりました[8]。1件あたりの復活点数が大きくなっている、という読み方ができます。高い点数の項目で査定を受けたときほど、申し出る価値があると示す数字です。
自院で追うなら、出した件数と戻った点数を記録してください。3か月続ければ、どの記号で出すと戻りやすいかが見えてきます。
誰が審査しているのか
最後に、審査の体制を確認します。相手を知っておくと、再審査の書き方が変わります。
支払基金の審査委員会は、診療担当者代表、保険者代表、学識経験者の三者で構成されています[2]。委員の任期は2年です[2]。
審査の基準は「保険医療機関及び保険医療養担当規則、診療報酬点数表、関連通知等の国が定めた保険診療ルール」に基づく医学的見地です[2]。薬剤については、薬価基準や医薬品医療機器等法上の承認内容に基づいて算定・使用されているかが確認されます[2]。
三者で構成されている点は、再審査の書き方に関わります。診療担当者代表が加わっているため、医学的な説明は通じます。同時に保険者代表もいますから、保険診療のルールから外れた主張は認められません。求められるのは、ルールの範囲内で診療の必要性を説明することです。
なお、支払基金には調査権限がありません[2]。不正請求への対応は地方厚生局や保険者が行います[2]。査定は不正の指摘ではありません。 算定の解釈が審査委員会の判断と合わなかった、という結果です。ここを取り違えると、院内の受け止め方が過剰になります。
外注できる範囲についてはレセプト代行とはにまとめています。
まとめ
増減点連絡書が届いたら、記号を見てください。F・G・Hなら自院の手順を直します。A・B・C・Dなら、説明を足して再審査を出す余地があります。
査定をゼロにすることはできません。審査には医学的な判断が含まれますから、解釈の違いは必ず残ります。目指すのは、防げる減点を減らし、説明すれば戻る減点を取りに行くことです。
そして、傷病名の記載漏れによる減額は戻らないことを、請求担当者と共有してください。防げるのは請求前だけです。自院の点検体制を見直す場合は医療レセプト代行に対応範囲を出しています。個別の相談は無料相談、事務全体の見直しは1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。
※内容は2026年9月14日時点で社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会が公開している資料に基づきます。運用は連合会ごとに異なります。
参考文献・出典
- 【医療機関等・薬局】増減点連絡書・各種通知書の見方 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年2月)(参照 2026-09-14)
- 審査に関するQ&A — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
- 再審査請求方法について — 北海道国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
- 疑問7 なぜ、医療機関に対して返戻を行うのか — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
- 支払基金における審査の一般的な取扱い(医科) — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
- 再審査請求に係る受付締日 — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
- 請求支払に関するQ&A — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-14)
- 令和7年度の支払基金の取扱状況 審査状況 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年6月30日)(参照 2026-09-14)


