訪問介護の請求の流れは、サービス提供の実績を確定させるところから始まります。居宅介護支援事業所から届くサービス提供票に実績を記入し、給付管理票と内容が合った状態にしてから、翌月10日までに国民健康保険団体連合会へ請求します。この一連の流れの中で、事業所の収入に差が出るのは締切の管理と加算の記録の2点です。
期限は命令で翌月10日と決まっています
法令上の期限から確認します。
介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(平成12年厚生省令第20号)の第3条は、次のように定めています[1]。
介護給付費等又は総合事業費(審査支払機関を通じて請求が行われるものに限る。)の請求は、各月分について翌月十日までに行わなければならない。
到達の時点も同じ条文にあります。電子情報処理組織による請求は「審査支払機関の電子計算機に備えられたファイルに記録された時に審査支払機関に到達したものとみなす」とされています[1]。送信した時点ではなく、記録された時点です。
回線の混雑を考えると、10日当日の送信は避けたほうが安全です。 記録されるまでに時間がかかれば、期限を過ぎます。
請求の方法も同じ命令に定めがあります。第2条は請求方法を電子情報処理組織による請求、または光ディスク等の提出としています[1]。紙で請求する場合の様式も附則に置かれており、給付管理票は様式第十一です[1]。現在は伝送での請求が中心ですが、様式の根拠はこの命令にあります。
締切と支払日は連合会ごとに違います
命令の期限と、各連合会の運用は一致しないことがあります。ここを確認せずに前年の感覚で動くと、月遅れ請求になります。
連合会 | 締切の案内 | 支払の案内 |
|---|---|---|
北海道 | 毎月10日必着(10日が土・日・祝祭日の場合でも10日必着)。伝送は10日午後11時30分までに送信完了 | 年度日程表で公表 |
岩手県 | 令和8年度は月ごとに指定。10日が休日の月は翌営業日12時 | 4月10日締切分は5月29日 |
宮城県 | サービス提供月の翌月10日午後5時15分まで | サービス提供月から翌々月末日まで |
大阪府 | 毎月1日から10日まで。郵送は10日必着 | 原則24日 |
北海道と岩手県で扱いが逆になっている点に注目してください。 北海道は10日が休日でも10日必着です[2]。岩手県は令和8年度の日程表で、5月・10月・翌年1月の締切を翌営業日12時に繰り下げています[3]。
宮城県国保連は処理の流れも公表しています。国保連合会から保険者への請求はサービス提供月の翌々月15日、保険者から国保連合会への振込は翌々月25日、国保連合会から事業者への振込は翌々月末という順序です[5]。サービスを提供してから入金まで、約2か月かかります。 資金繰りの計画はこの前提で立ててください。4月に提供したサービスの入金は6月です。開業直後の事業所や、利用者が急に増えた事業所では、この2か月のずれが資金の不足として現れます。
大阪府国保連は「受付期間(10日)を過ぎた分については、翌月請求分として取り扱います」と案内しています[4]。1日遅れると、入金は1か月後ろにずれます。
年度の初めにやっておくと安全な作業が1つあります。自事業所の請求先が公表している年度の締切・支払日程表を印刷し、事務所の見える場所に貼ることです。多くの連合会が日程表をPDFで公開しています。毎月サイトを見に行く運用にすると、確認そのものを忘れます。紙にしておけば、休みの月がある年度でも気づけます。
給付管理票と突き合わされます
請求明細書は単独で審査されません。居宅介護支援事業所が提出した給付管理票と突き合わされます。
つまり、自事業所の請求内容が正しくても、居宅側の給付管理票が届いていなければ止まります。逆に、給付管理票の計画単位数を超えて請求すれば、超えた分は認められません。サービス提供票の実績を居宅側へ返す期限を、事業所内で決めておいてください。 月初の数日が勝負になります。
給付管理票を作る側の実務については居宅介護支援の請求業務にまとめました。返戻の理由については介護レセプトの返戻理由を参照してください。
実績の返し方も事業所によって差が出ます。紙のサービス提供票に手書きで実績を入れて持参している事業所もあれば、ソフトからデータで送っている事業所もあります。どちらでも構いませんが、返した日付を記録に残しておいてください。返戻になったときに、実績の返しが遅れていたのか、居宅側の提出が遅れていたのかを切り分けられます。
利用者から受け取る額の根拠
請求の流れを理解するうえで、利用者負担の位置づけも確認しておきます。
介護保険法第41条第4項は、居宅介護サービス費の額を「当該指定居宅サービスに要する平均的な費用…の百分の九十に相当する額」と定めています[7]。残りが利用者負担です。同法第49条の2は、一定以上の所得がある場合に「『百分の九十』とあるのは、『百分の八十』とする」、さらに上の区分では「『百分の七十』とする」と読み替えを定めています[8]。2割負担と3割負担の根拠がここです。
事業所が利用者から受け取る額の決まりは、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第20条にあります[9]。
法定代理受領サービスに該当する指定訪問介護を提供した際には、その利用者から利用料の一部として、当該指定訪問介護に係る居宅介護サービス費用基準額から当該指定訪問介護事業者に支払われる居宅介護サービス費の額を控除して得た額の支払を受けるものとする。
国保連から入る分を差し引いた残りを、利用者から受け取ります。負担割合証の確認を月初に行う手順がないと、請求額と実際の入金がずれます。負担割合は年度の途中でも変わることがあります。
同条第2項には、法定代理受領に該当しないサービスについての定めもあります。「法定代理受領サービスに該当しない指定訪問介護を提供した際にその利用者から支払を受ける利用料の額と、指定訪問介護に係る居宅介護サービス費用基準額との間に、不合理な差額が生じないようにしなければならない」というものです[9]。保険の対象外で提供するサービスの料金設定にも、基準が置かれています。
取りこぼしやすい加算
加算は、算定できる場面があったことを記録していなければ請求できません。単位数そのものより、記録があるかどうかで結果が変わる領域です。訪問介護費の告示から、記録と直結する3つを挙げます。
加算 | 単位 | 算定の単位 |
|---|---|---|
初回加算 | 200単位 | 1月につき |
緊急時訪問介護加算 | 100単位 | 1回につき |
口腔連携強化加算 | 50単位 | 1月に1回に限る |
初回加算の注は「指定訪問介護事業所において、新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して、サービス提供責任者が初回若しくは初回の指定訪問介護を行った日の属する月に指定訪問介護を行った場合又は当該指定訪問介護事業所のその他の訪問介護員等が初回若しくは初回の指定訪問介護を行った日の属する月に指定訪問介護を行った際にサービス提供責任者が同行した場合は、1月につき所定単位数を加算する」としています[6]。サービス提供責任者が初回に入ったか、同行したかが条件です。 誰が入ったかを記録していないと、後から証明できません。
緊急時訪問介護加算は、居宅サービス計画に入っていない訪問を緊急に行った場合の加算です。注は「利用者又はその家族等からの要請に基づき、指定訪問介護事業所のサービス提供責任者が指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員と連携し、当該介護支援専門員が必要と認めた場合」としています[6]。ケアマネジャーとのやり取りが要件に入っています。電話で済ませたやり取りを記録に残す習慣がないと、算定の根拠が残りません。
緊急の訪問こそ、記録が後回しになります。 訪問の直後に、誰からの要請で、どのケアマネジャーがいつ認めたかを書き残してください。この1行の有無で、100単位が付くかどうかが決まります。
口腔連携強化加算は1月に1回が限度です[6]。歯科との連携を月に複数回行っても、算定できるのは1回です。要件を満たす連携を行ったのに算定していない月がないか、月末の確認項目に入れておくと取りこぼしが減ります。
返戻になったときの再請求
返戻は珍しいことではありません。大阪府国保連は再請求の手順をこう案内しています[4]。
必要箇所を修正し再度ご提出をお願いします
添付物の扱いにも注意があります。「返戻付せんについては外して再請求ください」とされています[4]。付せんを付けたまま送り返すと、処理が止まります。
同じ保険者であれば「当月分・月遅れ分・返戻再請求分をまとめてご請求いただけます」という案内もあります[4]。分けて送る必要はありません。
給付管理票の修正には制限があります。大阪府国保連は「既に給付管理票は決定しているが、内容を修正する場合」の手続きとして修正を案内し、「決定済みの給付管理票に上書きされます」「過誤調整を行う月と同じ月に給付管理票の『修正』を提出することはできません」と説明しています[4]。過誤調整と修正を同じ月に出すことはできません。 順番を間違えると、翌月にもう一度やり直しになります。
2026年6月施行の改定に注意
単位数と加算の要件は改定で変わります。厚生労働省は「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第87号)」を掲載しており、施行は令和8年6月以降とされています[10]。
告示19号の最終改正も令和8年3月13日厚生労働省告示第87号です[6]。つまり、2026年5月以前に書かれた解説記事は、改定前の内容を説明している可能性があります。加算の単位数を確認するときは、必ず厚生労働省の法令等データベースで告示の本文を見てください。
まとめ
訪問介護の請求の流れで金額に差がつくのは、締切の管理と加算の記録です。
締切は法令で翌月10日ですが、実際の運用は連合会ごとに違います。自事業所の請求先が公表している年度の日程表を、年度初めに印刷して掲示してください。支払日も同じです。
加算は、算定できる場面を記録に残しているかどうかで決まります。初回にサービス提供責任者が入ったか。緊急訪問の要請は誰からで、ケアマネジャーはいつ認めたか。訪問の直後に書き残す手順を作れば、月末にまとめて思い出す必要はありません。
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※内容は2026年9月14日時点で厚生労働省・e-Gov法令検索・各国民健康保険団体連合会が公開している資料に基づきます。締切日と支払日は連合会ごとに異なるため、自事業所の請求先の案内を必ず確認してください。
参考文献・出典
- 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(平成12年厚生省令第20号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 請求受付及び処理の日程について(介護) — 北海道国民健康保険団体連合会(令和8年度分)(参照 2026-09-14)
- 提出締切日時・支払日程表(介護) — 岩手県国民健康保険団体連合会(令和8年度分)(参照 2026-09-14)
- よくある質問(介護保険事業所等の皆様) — 大阪府国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
- 介護給付費等請求 — 宮城県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号) — 厚生労働省(最終改正 令和8年3月13日厚生労働省告示第87号)(参照 2026-09-14)
- 介護保険法 第41条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 介護保険法 第49条の2 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第20条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 令和8年度介護報酬改定について — 厚生労働省(参照 2026-09-14)


