BPOの費用相場は、月額固定・従量課金・時間単価のどれを採るかで変わります。同じ業務でも、件数の振れ幅によって年額が大きく動きます。
金額の話に入る前に、確認しておくことがあります。契約の種類を間違えると、安く済んだかどうか以前の問題になります。 順に見ます。
費用の前に、契約の種類を確認する
BPOは業務そのものを外部に任せる形です。人材派遣とは契約の構造が違います。
派遣では、派遣元が雇用する労働者に対して、派遣先が指揮命令を行います。請負や委任では、受託者が自分の労働者を指揮命令します。発注者が受託者の労働者に直接指示を出すと、契約書の名称にかかわらず労働者派遣とみなされます。
厚生労働省は、この区分の基準を告示で示しています。いわゆる37号告示です[3]。第2条は、請負の形式による契約で自己の雇用する労働者を業務に従事させる事業主であっても、次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする、としています[3]。
号 | 求められること |
|---|---|
第1号 イ | 業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと/労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと |
第1号 ロ | 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理を自ら行うこと/時間外・休日労働の指示その他の管理を自ら行うこと |
第1号 ハ | 服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと/労働者の配置等の決定および変更を自ら行うこと |
第2号 イ | 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること |
第2号 ロ | 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと |
第2号 ハ | 単に肉体的な労働力を提供するものでないこと |
読み方に注意が要ります。第1号と第2号の両方を満たす必要があります[3]。片方だけでは足りません。
偽装請負になる4つの形
東京労働局は、書類上は請負契約でも実態としては労働者派遣であるものを偽装請負として整理しています[4]。判断の目安として「自分の使用者からではなく、発注者から直接、業務の指示や命令をされる」ことを挙げています[4]。
類型は4つです。代表型、形式だけ責任者型、使用者不明型、一人請負型です[4]。
中小企業でよく起きるのは2つです。1つ目は、常駐している受託者のスタッフに、社長や部長が直接その日の作業を指示する形です。これは第1号イに反します[3]。2つ目は、自社のパソコン・ソフト・席をすべて貸して作業させる形です。第2号ハの「単に肉体的な労働力を提供するものでないこと」を満たしにくくなります[3]。
委託先が悪い、では済みません。 偽装請負は、委託した側の会社も労働者派遣法上の問題を問われます。窓口を1人決め、その人を通して受託者の責任者に依頼する形にしてください。個々の担当者に直接依頼を飛ばさないことが、実務上の線になります。
急ぎの用件ほど、この線が崩れます。目の前にいるスタッフに声をかけるほうが早いからです。だからこそ、依頼の経路を業務の設計に組み込んでおく必要があります。チャットの宛先を責任者だけにする、依頼票を経由させるといった形にすると、忙しい日でも崩れません。
厚生労働省は、判断に迷う場面についての疑義応答集を第3集まで公開しています[5]。第3集は2026年5月25日に更新されています[5]。常駐型の委託を始める前に、自社の形が載っていないか確認してください。
業務別の料金水準
ここから金額です。業務によって水準が違うため、まとめて「BPOの相場」と語れません。
税抜と税込が混ざっている点に注意してください。各社の表記をそのまま載せています。比較表を自分で作るときは、税別に揃えてから並べてください。
電話代行と経理では、月額に20倍以上の差があります(2026年9月13日時点の公開料金[1][2])。 電話代行は1件あたりの対応時間が短く、判断も定型です。経理は月次の締めまで含むと、担当者の稼働時間で決まります。「BPOは月いくら」という聞き方ができない理由がここにあります。
経理の相場を仕訳数別に見たい場合は、経理BPOの相場にまとめました。
料金の決まり方は3通り
金額の見方を揃えます。決まり方は3つです。
1つ目は月額固定です。一定の範囲内なら件数が増えても金額が変わりません。件数の振れ幅が小さい業務に向きます。2つ目は従量課金です。1件いくらで積み上げます。繁忙期と閑散期の差が大きい業務に向きます。3つ目は時間単価です。稼働時間で決まります。作業の内容が毎月変わる業務に向きます。
業務の性質で選び方が決まります。件数が読める業務に従量課金を当てると、管理の手間だけが増えます。件数が読めない業務に月額固定を当てると、少ない月に払いすぎます。自社の件数が読めるかどうかを、先に確かめてください。
多くの会社は組み合わせています。電話代行の例では、基本料金10,000円に50件までを含み、51件目から1件200円という設計です[1]。月100件なら、10,000円に50件分の10,000円が加わって20,000円になります(公開料金からの計算)。
自社の件数を2つ置いて計算してください。 平常月と、いちばん多かった月です。この2つで金額を出すと、年額の見当が付きます。平常月だけで比べると、繁忙期に想定外の請求が来ます。年額で見れば差は小さく見えても、資金繰りは月単位で動きます。
社員を1人雇う場合と比べる
外注か採用かで迷うときは、比べる土台を揃えます。給与だけでは足りません。
事業主が負担する社会保険料を並べます。健康保険は東京都で9.85%の労使折半、子ども・子育て支援金は0.23%の労使折半です[10]。厚生年金は18.3%の労使折半で[11]、子ども・子育て拠出金は0.36%が全額事業主負担です[12]。雇用保険は一般の事業で、事業主負担が8.5/1000です[13]。
項目 | 事業主の負担率 |
|---|---|
健康保険(9.85%の折半) | 4.925% |
子ども・子育て支援金(0.23%の折半) | 0.115% |
厚生年金(18.3%の折半) | 9.15% |
子ども・子育て拠出金 | 0.36% |
雇用保険 | 0.85% |
合計 | 約15.4% |
ここに労災保険料が加わります。率は業種ごとに決まっているため、自社の業種区分で確認してください。40歳から64歳の従業員には介護保険料率が加わります[10]。
月給30万円なら、社会保険の事業主負担は月約4.6万円です(表3の料率[10][11][12][13]からの計算)。給与と合わせて月約34.6万円、年間で約415万円になります。賞与、通勤手当、採用費、教育費、席とパソコンの費用は含んでいません。
この金額と、外注の年額を並べてください。 電話代行なら年24万円前後、オンライン経理なら年270万円です(2026年9月13日時点の公開料金[1][2]からの計算)。業務の範囲が違うため、単純な大小では判断できません。
委託先を監督する義務が残ります
外に出しても、責任が全部移るわけではありません。個人情報を扱う業務では、法律上の義務が残ります。
個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合に、委託先に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています[14]。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、監督の中身を適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における個人データ取扱状況の把握の3つに分けています[14]。
選定にあたっては、委託先の安全管理措置が自社に求められるものと同等であることを、あらかじめ確認する必要があります[14]。取扱状況の把握については、定期的に監査を行うなどの方法が示されています[14]。再委託先についても同様の監督が必要です[14]。
契約書を交わして終わりにしないでください。 年に1回、委託先から安全管理措置の実施状況について報告を受け、記録に残す運用をおすすめします。
再委託の確認も落とせません。委託先がさらに別の会社に一部を出しているかどうかを、契約時に確認してください。海外の拠点で処理される場合は、扱いが変わることがあります。どこで誰が作業しているかを把握できる状態にしておいてください。
導入率は12.9%。入れない理由の1位は費用です
最後に全体像を見ます。中小企業でBPOがどれくらい使われているかの調査があります。
従業員300人未満の中小企業の経営層・管理職550名を対象とした調査では、BPOの導入率は12.9%でした(調査期間2025年2月18〜20日[15])。導入しない理由の上位は「結果的にコストが高くなる」24.4%、「勤務先内で対応できており必要性を感じない」22.3%です[15]。導入した企業の効果としては「従業員の負担が軽減され、はたらきやすい環境が整った」21.1%、「業務コストが削減できた」19.7%が挙がっています[15]。この調査はBPO事業者が実施したものです。
市場全体では、2024年度のBPO市場規模が前年度比4.0%増の5兆786億円とされています(事業者売上高ベース[16])。うち非IT系が1兆9,566億5,000万円、IT系が3兆1,220億円です[16]。
導入しない理由の1位が費用である点は、そのまま検討の順番を示しています。 先に自社の人件費を計算し、そこに置き換えられる業務があるかを確認してから、見積もりを取ってください。
「結果的にコストが高くなる」という回答には、2つの読み方があります。1つは、実際に外注のほうが高かった場合です。もう1つは、外注した後も社内の確認作業が残り、人が減らなかった場合です。後者であれば、原因は金額ではなく範囲の決め方にあります。どこまで任せるかを曖昧にしたまま契約すると、この結果になります。
まとめ
今週やることは2つです。外に出したい業務について、平常月と繁忙月の件数を数えること。そして、その業務に何時間かかっているかを1週間分だけ記録することです。
この2つが手元にあると、見積もりの比較ができます。無いまま問い合わせると、各社が想定した範囲がばらばらの金額が並びます。バックオフィスの業務代行についてはBPO(業務代行)に対応範囲を出しています。どの業務から外に出すかの判断は無料相談でお聞きします。現在地の確認は1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。
※料金・料率・統計は2026年9月13日時点で公開されているものです。改定されるため、契約前に各社および官公庁の公式ページでご確認ください。
参考文献・出典
- 料金 — fondesk(株式会社うるる)(参照 2026-09-13)
- 料金プラン — CASTER BIZ accounting(株式会社キャスター)(参照 2026-09-13)
- 参照条文及び関係資料掲示先(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準) — 文部科学省(参照 2026-09-13)
- 偽装請負について — 東京労働局(参照 2026-09-13)
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集 — 厚生労働省(参照 2026-09-13)
- 電話代行サービス料金プラン・価格 — 電話代行サービスのCUBE(参照 2026-09-13)
- 記帳代行料金表 — 松﨑佳史税理士事務所(参照 2026-09-13)
- 給与計算アウトソーシングの料金 — 税理士法人YFPクレア(参照 2026-09-13)
- データ入力参考料金 — データ入力株式会社(参照 2026-09-13)
- 令和8年度の協会けんぽの保険料率 — 全国健康保険協会(参照 2026-09-13)
- 厚生年金保険の保険料 — 日本年金機構(参照 2026-09-13)
- 保険料額表(令和2年9月分〜) — 日本年金機構(参照 2026-09-13)
- 令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内 — 厚生労働省 山梨労働局(参照 2026-09-13)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) — 個人情報保護委員会(参照 2026-09-13)
- 中小企業におけるBPO・業務代行(アウトソーシング)の導入に関する実態調査 — パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社(参照 2026-09-13)
- BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年) — 株式会社矢野経済研究所(参照 2026-09-13)


