レセプト代行とは、診療報酬請求の作成・点検・提出を外部の事業者に委託することです。請求事務のすべてを出せるわけではありません。

「法律で禁止されているのでは」という質問をよく受けます。条文を確認すると、そういう規定はありません。委託を禁じる条文も、委託先の資格を定める条文もありません。ただし出せない部分は別の形で残ります。 どこが出せてどこが残るのかを、順に条文で確認します。

診療報酬請求は8つの工程に分かれています

まず全体を見ます。支払基金は審査・支払業務の流れを公開しています。受付、事務点検・審査事務、審査、計数整理、保険者別編集等、請求、支払、再審査等整理事務の8段です[6]。

この8段は審査支払機関側の工程です。医療機関側の工程と対応させて見ると、どこまでが自院の仕事かが分かります。

医療機関側から見ると、工程はこうなります。患者の受付と資格確認、カルテへの記録、点数の算定、レセプトの作成、点検、審査支払機関への提出、返戻・査定への対応、入金の確認です。

表1 請求事務の工程と、代行に出しやすいかどうか(2026年9月13日時点の一般的な区分)

工程

内容

代行の対象

受付・資格確認

保険証・マイナ保険証の確認

院内に残る[5]

カルテへの記録

診療内容の記載

保険医の義務[5]

点数の算定

点数表にあてはめる

出せる

レセプトの作成

明細書を作る

出せる

点検

誤りを探す

出せる

提出

オンライン請求

出せる

返戻・査定への対応

再請求・再審査の申出

一部出せる

入金の確認

振込額の突合

出せる

代行会社が引き受けるのは、この表の3番目から7番目のどこかです。 会社によって範囲が違うため、料金の比較は範囲を揃えてからになります。

返戻・査定への対応を「一部出せる」としたのには理由があります。返戻されたレセプトの修正と再請求は代行に出せます。一方で、査定に納得できない場合の再審査の申出は、医療機関の名前で行う手続きです。内容の検討まで手伝ってもらうことはできても、申し出るのは医療機関です。

金額の水準はレセプト代行の料金相場にまとめました。

医療法が縛っているのは8業務。レセプトは入っていません

医療機関の業務委託には、法令で委託先の基準が決まっているものがあります。ただし対象は限られます。

医療法第15条の3第1項は検体検査の委託先を定め、第2項は「医師若しくは歯科医師の診療若しくは助産師の業務又は患者(略)の入院若しくは入所に著しい影響を与えるものとして政令で定めるもの」を委託する場合に、厚生労働省令で定める基準に適合する者への委託を求めています[1]。

その「政令で定めるもの」が医療法施行令第4条の8です。列挙されているのは7業務です[2]。

表2 医療法施行令第4条の8が定める業務(2026年9月13日時点[2])

号

業務

一

医療機器等の滅菌又は消毒

二

病院における患者等の食事の提供

三

患者等の搬送

四

厚生労働省令で定める医療機器の保守点検

五

医療の用に供するガスの供給設備の保守点検

六

患者等の寝具又は衣類の洗濯

七

診療等の用に供する施設又は入院の用に供する施設の清掃

この7業務に共通するのは、患者の身体や入院生活に直接触れる仕事だという点です。滅菌が不十分なら感染が起きます。食事の提供が滞れば入院患者が困ります。だから委託先の能力を法令で縛っています。

検体検査を加えて8業務です。診療報酬請求事務は、この列挙に入っていません。 つまり医療法上の委託基準は存在しません。「医療法で決まっているから外注できない」という説明は、条文と合っていません。

なお平成5年の通知や古い解説では、この政令の条番号が「第4条の7」と書かれています[2]。現行では第4条の8です。古い資料を参照するときは番号のずれに気をつけてください。

個人情報保護法では「委託」にあたります

医療法で縛られていないかわりに、個人情報保護法が適用されます。ここが実務の中心です。

個人情報保護法第27条第5項第1号は、「個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合」について、提供を受ける者は第三者に該当しないと定めています[3]。レセプトデータを代行会社に渡すことについて、患者から個別に同意を取る必要はありません。

そのかわり第25条が監督義務を課します。「個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」[3]。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、監督の中身を3つに分けています[7]。適切な委託先の選定、委託契約の締結、取扱状況の把握です。選定については、委託先の安全管理措置が委託元に求められるものと同等であることを、あらかじめ確認しなければならないとしています[7]。取扱状況の把握については、定期的に監査を行うなどして実施の程度を調査し、評価することが望ましいとしています[7]。

表3 契約書に入れる項目(2026年9月13日時点のガイドラインの整理[7])

項目

確認すること

委託先の選定

安全管理措置が自院と同等か、事前に確認する

契約の締結

双方が同意した安全管理措置を書面にする

取扱状況の把握

定期的に報告を受け、必要なら監査する

「契約書を交わした」で終わらせないでください。 定期的に状況を確認するところまでが監督義務です。

確認の方法は大がかりでなくて構いません。年に1回、代行会社から安全管理措置の実施状況について書面で報告を受け、その内容を院内で記録に残すだけでも監督の実施になります。担当者が変わったときに、この記録が引き継ぎの材料になります。

診療録を院外に置く場合だけ別の条件が付きます

レセプトの作成を外に出すと、代行会社が診療内容を見ることになります。ここで気をつける点が1つあります。

診療録等を外部に保存する場合は、平成14年の通知が条件を示しています[8]。電子媒体による外部保存では真正性・見読性・保存性の確保が求められ、電気通信回線を用いる場合の設置先は「病院又は診療所その他これに準ずるもの」または「行政機関等が開設したデータセンター等」とされています[8]。加えて「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等の遵守と、事故が発生した場合の責任の所在を明確にしておくことが示されています[8]。

区別が必要です。多くの代行では、レセプトのデータを送って点検してもらうところまでで済みます。診療録そのものを院外のサーバーに保存する行為とは別です。後者に該当する場合だけ、この通知の条件が加わります。 契約前に、代行会社がどのデータをどこに置くのかを確認してください。

代行に出しても院内に残る4つの仕事

出せない仕事は、法令が医療機関や保険医の義務として定めているものです。4つあります。

1つ目は資格確認です。保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条は、療養の給付を求められた場合に、電子資格確認などの方法で資格を確認しなければならないと定めています[5]。2つ目は診療録の記載です。同規則第22条は「保険医は、患者の診療を行つた場合には、遅滞なく(略)診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない」としています[5]。

3つ目は帳簿の保存です。同規則第9条は、療養の給付の担当に関する帳簿・書類を完結の日から3年間、診療録は5年間保存することを求めています[5]。4つ目は施設基準の届出です。届出先は地方厚生局で、加算を算定するかどうかの判断と届出は医療機関が行います[9]。

表4 院内に残る4つの仕事と根拠(2026年9月13日時点[5][9])

仕事

根拠

資格確認

療担規則第3条

診療録の記載

療担規則第22条(保険医の義務)

帳簿3年・診療録5年の保存

療担規則第9条

施設基準の届出

地方厚生局へ届出

この4つを先に書き出すと、代行に出す範囲が自動的に決まります。 残る仕事を決めずに見積もりを取ると、提案された範囲をそのまま受け入れることになります。

保存期間にも注意してください。帳簿は3年、診療録は5年です[5]。代行に出した期間の書類がどちらの手元に残るのかを、契約書に書いておく必要があります。契約を終了したときに、データの返却または廃棄をどうするかまで決めておいてください。終わり方を決めずに始めると、解約のときに書類が戻らない事態が起きます。

返戻と査定は別物です

代行の範囲を決めるときに、いちばん誤解されるのがここです。名前が似ていて、対応の仕方が違います。

返戻は、審査支払機関が疑義のあるレセプトを医療機関に差し戻すことです。支払基金は、保険診療ルールに基づき適正に算定されているかを審査委員が医学的見地から審査し、疑義が生じた場合に照会・返戻するとしています[10]。返戻されたレセプトは、その月の支払対象になりません。修正して再請求します。

査定は、点数が減額されて支払われることです。減額に納得できない場合は再審査を申し出ます。申出の期間について、支払基金は「原則6か月以内に申出いただくよう依頼している」としています[11]。国保連も同様の案内を出しており、北海道国保連は通知の送達後6か月以内に行うよう求めています[12]。

ここに注意点があります。北海道国保連は「病名の欠落、記載誤り等による減額査定分は、再審査請求及び取下げの対象となりません」と明記しています[12]。記載漏れが原因の減額は、後から取り戻せません。 点検の精度がそのまま収入に反映される部分です。

だから点検を外に出す価値があります。自院の職員が自分で作ったレセプトを自分で点検すると、同じ思い込みで同じ箇所を見落とします。別の目が入ると、その箇所が見つかります。代行に出す理由を「人手が足りないから」だけで説明すると、院内の合意が取りにくくなります。減額を減らすための第三者の点検という説明のほうが、数字で効果を確認できます。

締切も確認しておきます。請求は「各月分について翌月十日までに行わなければならない」と定められています[4]。代行会社の作業日程がこの期限に間に合うかを、契約前に日付で確認してください。何日までにデータを渡せば、何日に点検結果が戻るのか。その日程で院内の確認時間が取れるのか。この2点を月次のカレンダーに書き込んでから契約してください。口頭の確認では足りません。

まとめ

代行に出すかどうかを決める順番は1つです。先に院内に残る4つの仕事を書き出し、次に8つの工程のどこを出すかを決め、最後に見積もりを取ります。

この順番で進めると、質問の内容が具体的になります。「レセプト代行をお願いできますか」ではなく、「算定と作成と点検の3工程を、月300件でお願いできますか。返戻の再請求まで含めるといくらですか」と聞けます。具体的に聞くほど、返ってくる見積もりの精度が上がります。

条文の確認は済みました。医療法は請求事務の委託を縛っていません。残るのは個人情報保護法の監督義務と、療担規則が定める院内の義務です。自院の請求事務をどこまで出せるか判断したい場合は、医療レセプト代行に当社の対応範囲を出しています。個別の事情は無料相談でお聞きします。事務全体の見直しから考えたい場合は1分でわかるAI活用度診断もお使いください。

※条文・通知の内容は2026年9月13日時点のものです。改正があるため、実務での判断は最新の原典でご確認ください。

参考文献・出典

  1. 医療法 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-13)
  2. 医療法施行令 — 厚生労働省法令等データベース(参照 2026-09-13)
  3. 個人情報の保護に関する法律 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-13)
  4. 療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令 — e-Gov法令検索(参照 2026-09-13)
  5. 保険医療機関及び保険医療養担当規則 — 厚生労働省法令等データベース(参照 2026-09-13)
  6. 診療報酬の審査・支払業務の流れ — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-13)
  7. 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) — 個人情報保護委員会(参照 2026-09-13)
  8. 診療録等の保存を行う場所について — 厚生労働省(参照 2026-09-13)
  9. 施設基準の届出等 — 関東信越厚生局(参照 2026-09-13)
  10. 疑問7 なぜ、医療機関に対して返戻を行うのか — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-13)
  11. 審査に関するQ&A — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-13)
  12. 再審査請求方法について — 北海道国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-13)