介護報酬請求とは、事業所が提供したサービスの費用を、国民健康保険団体連合会を通じて市町村へ請求する手続きです。請求は翌月10日までに行いますが、そこで終わりではありません。そこから審査が走り、結果が2回に分けて返ってきて、翌々月に入金されます。どの段階で何が起きているかを知っていると、返戻が来たときの動きが速くなります。 国民健康保険中央会が出している手引きの記載を軸に、1か月の中身を追います。

国保連が審査するのは市町村からの委託です

先に位置づけを確認します。国保連が独自の裁量で審査しているわけではありません。

介護保険法第41条第9項は、市町村について次のように定めています[2]。

市町村は、指定居宅サービス事業者から居宅介護サービス費の請求があったときは、第四項各号の厚生労働大臣が定める基準及び第七十四条第二項に規定する指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準(指定居宅サービスの取扱いに関する部分に限る。)に照らして審査した上、支払うものとする

続く第10項に委託の定めがあります。「市町村は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を連合会に委託することができる」というものです[2]。

連合会側の根拠は第176条です。同条第1項第1号は、連合会の業務として「第四十一条第十項の規定により市町村から委託を受けて行う……請求に関する審査及び支払」を挙げています[3]。

審査の基準は、厚生労働大臣が定める基準と運営基準です。 連合会ごとに基準が違うわけではありません。違うのは日程や帳票の運用です。

請求の期限は命令で決まっています。「介護給付費等又は総合事業費……の請求は、各月分について翌月十日までに行わなければならない」という定めです[4]。締切日や受付時刻の連合会ごとの違いは訪問介護の請求の流れにまとめました。

1か月の日程

手引きは、サービス提供月の翌月と翌々月にまたがる日程を示しています。

表1 請求から支払までの基準日(2026年9月14日に参照した令和7年12月版の記載[1])

時期

何が起きるか

翌月1日〜10日

請求受付期間。10日が請求締切日

翌月29日前後

審査結果通知の送付

翌々月19日前後

支払通知の送付

翌々月

介護給付費の支払日(銀行の最終営業日前日)

手引きは、これらが2026年9月14日に参照した令和7年12月版の時点で基準日であることを明記しています[1]。

上記日程の「請求締切日:10 日」「審査結果通知の送付:29 日」「支払通知の送付:19 日」は基準日ですので月によって前後します。

実際の日付は毎年3月に連合会から送られます。手引きには「毎年3月(新規登録の事業所については国保連合会から別途送付)に翌年度の日程を送付していますので確認して下さい」とあります[1]。年度初めに届く日程表を保管しておいてください。 月ごとに1日から3日ずれます。

通知の届き方も媒体で違います。伝送で届出をしている事業所へは伝送で、磁気媒体で届出をしている事業所へは郵送で送られます[1]。

国保連の中での3つのチェック

手引きは、審査の流れを段階で示しています。請求明細書は、事前チェックを経たあと、一次チェック、資格チェック、上限チェックの順に見られます[1]。

表2 各チェックが見ているもの(令和7年12月版の記載[1])

段階

見ているもの

一次チェック

データ内容や入力(記入)誤り

資格チェック

事業所台帳、受給者台帳との突合

上限チェック

給付管理票と請求明細書の突合

台帳の元は行政です。受給者台帳は保険者(市町村)から送られた受給者の情報で、被保険者番号、氏名、要介護状態区分、サービス計画作成事業所などが入ります[1]。事業所台帳は都道府県から送られた情報で、事業所番号、開設日、廃止日、各加算体制などが入ります[1]。

自事業所の届出が台帳に反映されていないと、資格チェックで止まります。 加算の体制届を出した月は、特に確認が要ります。

台帳が更新される経路も覚えておくと、問い合わせ先を間違えません。受給者の情報は保険者から、事業所の情報は都道府県から国保連へ送られます[1]。地域密着型の事業所や基準該当事業所、指定権限が委譲されている分については、保険者から事業所台帳の情報が送られます[1]。つまり、台帳が違っているときの直し先は国保連ではありません。 保険者か都道府県です。

大阪府国保連は、同じ内容を4区分で説明しています。一次審査は「事業所番号、保険者番号、生年月日、実日数等の誤りや記入漏れ等基本的事項を審査」、資格審査は「事業所台帳及び受給者台帳との突合不一致、明細書の重複、給付管理票の重複等を審査」、上限審査は「明細書情報のサービス種類ごとの合計請求単位数(日数)が、給付管理票の計画単位数(日数)の支給限度基準内の請求であるかどうかの突合」です[5]。呼称は連合会で違いますが、見ている中身は同じです。

要介護認定の申請中も注意が要ります。手引きは、認定申請の翌月に請求すると12P0エラー(受給者台帳に該当する受給者情報が存在しません)、変更申請の場合は12PAエラー(変更申請中の受給者です)になり返戻になると説明しています[1]。認定の決定まで通常30日程度かかるとされています[1]。

結果は4つに分かれます

審査を通ると、請求明細書の結果は4つのいずれかになります。手引きの説明を引きます[1]。

決定:請求した分が国保連合会から事業所へ支払われる。 査定:請求した分の一部が国保連合会から事業所へ支払われる。 返戻:請求明細書又は給付管理票に誤りがあったため、国保連合会から事業所へ返却された。支払はない。 保留:請求明細書に誤りはないが、給付管理票が未提出または返戻のため、支払が行われない。

保留は自事業所の誤りではありません。 居宅介護支援事業所の給付管理票が届いていない状態です。手引きには「決められた期間内に給付管理票が提出されれば国保連合会から事業所へ支払いが行われる」とあります[1]。

ただし条件が2つ付きます。「保留の有無、期間は国保連合会ごとに異なる」こと、そして「他県被保険者分の明細は保留とはならず、返戻となる」ことです[1]。他県の被保険者を担当している事業所は、給付管理票の遅れがそのまま返戻になります。

給付管理票の側の結果は2つです。返戻は「給付管理票に誤りがあったため、国保連合会に登録されずに返却された」状態、決定は「給付管理票が正しく国保連合会に登録された」状態です[1]。給付管理票を作る側の実務は居宅介護支援の請求業務にまとめています。

保留が出たら、まず居宅介護支援事業所へ連絡してください。手引きも「減単位や、返戻(保留)となった明細書等については、関係の居宅介護支援事業所等と連絡・調整をして下さい」と書いています[1]。自事業所で直せる内容ではないため、待っているだけでは解決しません。

届く帳票は2回に分けて来ます

通知は1度に来ません。翌月末の審査結果通知と、翌々月の支払通知の2回です。

表3 送られる帳票(令和7年12月版[1]・宮城県国保連の説明[6])

時期

帳票

内容

審査結果通知(29日前後)

介護保険審査決定増減表

審査の結果生じた返戻、査定増減、保留及び保留復活分を保険者別に連絡

審査結果通知

介護保険審査増減単位数通知書

査定増減の内容(単位数及び事由等)を連絡

審査結果通知

請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表

返戻及び保留について請求明細書単位に連絡

支払通知(19日前後)

介護給付費等支払決定額通知書

支払決定額を連絡

支払通知

介護給付費等支払決定額内訳書

審査決定した支払額を保険者別サービス提供月別に連絡

支払通知

介護給付費過誤決定通知書

申し立てられた過誤の決定状況等を連絡

該当がなければ送られません。手引きには「月末に送付する『審査結果通知』は該当がなければ送付されません」とあり、過誤決定通知書と再審査決定通知書についても同様の注記があります[1]。

審査結果通知が翌月末に届くのには理由があります。 手引きは「『審査結果通知』は次回の請求に間に合うように送付しています」と書いています[1]。返戻を受けたら、翌月の受付期間中に再請求する前提の日程です。返戻の理由と対応は介護レセプトの返戻理由にまとめました。

事前チェックで先に気づけます

伝送で請求している事業所には、審査の前に結果を知る手段があります。

手引きによると、データを送信すると受付処理の後に事前チェック処理が行われ、「データ送信から50分程で、受付確認及び事前チェックエラーを受信することが可能となります」[1]。連合会側の事前チェックは「8:20 から 23:50 まで30分間隔」で実行されます[1]。

10日ぎりぎりに送ると、この機会を使えません。 5日や6日に一度送っておけば、エラーがあっても受付期間内に直せます。伝送で請求している事業所にとって、これが最も効果の大きい運用の工夫です。

手順にすると3段階です。

  1. 月初にサービス提供の実績を確定させます
  2. 5日前後に一度送信して、事前チェックの結果を受け取ります
  3. エラーがあれば直して、10日までに再送します

この流れを毎月同じ日付でこなせるよう、担当者の予定に入れておいてください。

事前チェックで見つかるのは形式的な誤りが中心です。台帳との不一致や給付管理票との突合は、審査の段階で判明します。事前チェックを通ったからといって、返戻がゼロになるわけではありません。 それでも、直せるものを締切前に直す価値は大きいままです。

月次サイクルの外にある審査

もう1種類、数か月後に届く審査があります。月次の流れと混同しないでください。

東京都国保連は、介護給付適正化事業として縦覧審査と医療情報との突合審査を行っていると説明しています[7]。医療情報との突合審査は「医療保険と介護保険で同一月(または同日)に算定(請求)できないサービスの請求があると思われるもの」を確認するものです[7]。確認は確認票または電話照会で行われ、結果は審査結果一覧表または審査結果通知書で通知されます[7]。

長野県国保連は縦覧点検について、「複数月の明細書における算定回数やサービス間・事業所間の給付の内容を確認し、提供されたサービスの整合性について点検」すると説明しています[8]。不明点があると「介護給付費縦覧審査確認表」が送られ、期限までに回答します[8]。

確認票が届いても、その月の請求が止まるわけではありません。 過去の請求についての照会です。慌てず、該当月の記録を確認して回答してください。

請求できる期限も押さえておきます。東京都国保連は「介護給付費はサービス提供月の翌々々月の1日から起算して2年、総合事業費は5年」と案内しています[9]。起算日はサービス提供月ではありません。

まとめ

介護報酬請求の流れは、10日の締切で終わりません。翌月末に審査結果通知、翌々月に支払通知という2段構えです[1]。

国保連の中で見られているのは3つ。入力の誤り、台帳との突合、給付管理票との突合です[1]。自事業所だけで完結しないのは3つ目で、保留はここで起きます[1]。

伝送で請求しているなら、10日より前に一度送って事前チェックの結果を受け取ってください。50分ほどで返ってきます[1]。この1回で、返戻の何割かは締切前に潰せます。

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※内容は2026年9月14日に参照した国民健康保険中央会「介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)」令和7年12月版、e-Gov法令検索、および各国民健康保険団体連合会の案内に基づきます。日程と保留の運用は連合会ごとに異なるため、自事業所の請求先が公表する年度の日程表を確認してください。

参考文献・出典

  1. 介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説)令和7年12月 — 国民健康保険中央会(愛知県国民健康保険団体連合会が掲載)(参照 2026-09-14)
  2. 介護保険法 第41条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
  3. 介護保険法 第176条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
  4. 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
  5. 審査・支払結果通知書等(介護保険事業所等の皆様) — 大阪府国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
  6. 国保連合会から送付する通知帳票 — 宮城県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
  7. 介護給付適正化事業に係る縦覧審査、医療情報との突合審査等 — 東京都国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
  8. 介護給付費請求の適正化に伴う点検業務(縦覧点検) — 長野県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)
  9. 請求時効について(介護事業所等の皆様) — 東京都国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)