介護レセプトの返戻とは、請求明細書または給付管理票に誤りがあり、国保連合会から事業所へ返却されることです。返却された分について支払は行われません[1]。
毎月10日を過ぎると「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」が届きます。枚数が多いと、それだけで気が重くなります。ただし、そのうち何もしなくてよいものが混ざっています。ここで最初に確かめるのは、返戻なのか保留なのかです。 扱いが正反対になります。
返戻・保留・査定・過誤は別のものです
4つの言葉が混ざると、対応を誤ります。順に分けます。
4つのうち、事業所が当月に動く必要があるのは返戻だけです。保留はケアマネジャー側の提出待ちで、査定は支払われた内容の確認、過誤は保険者への依頼から始まります。当月の作業量を見積もるには、まず返戻の件数だけを数えてください。
いちばん多い誤りは、保留を返戻だと思って再請求してしまう対応です。 千葉県国保連は、保留について「再請求する必要はありません」と明記しています[2]。二重に請求すると、今度は重複提出の返戻が返ってきます。
一覧表の見方も確認しておきます。宮城県国保連は「4文字のコードまたは『返戻』と表示されている場合は返戻扱い、『保留』と表示されている場合は、請求明細書等の受付は行っていますが、審査ができないため保留扱いとなります」と説明しています[5]。
国保連は3段階で見ています
返戻の理由を覚える前に、どういう順番で見られているかを知ると整理しやすくなります。
神奈川県国保連は、審査の順序を3段階で示しています[4]。一次チェックでデータ内容や入力の誤りを見て、資格チェックで事業所台帳・受給者台帳と突合し、最後に給付管理票と請求明細書を突合します[4]。
順番が分類になります。以下では段階ごとに見ます。なお、ここで挙げるコードは神奈川県国保連が公開している解説(令和3年度版)からのもので、同資料自身が「主なエラーコードについて、抜粋しております」と断っています[6]。自事業所の都道府県の国保連が出している解説も確認してください。
受給者情報で止まる返戻
いちばん件数が多いのがこの層です。市町村が国保連に登録している受給者台帳と合いません。
コード | 内容 | 主な原因 |
|---|---|---|
12P0 | 証記載保険者番号、被保険者番号:市町村の認定情報が未登録 | 入力した保険者番号・被保険者番号に該当する被保険者がいない |
12PD | 対象年月、証記載保険者番号、被保険者番号:認定有効期間外の被保険者 | 要介護認定の有効期間が切れた後のサービス年月分を提出した |
12PA | 証記載保険者番号、被保険者番号:市町村の認定変更が未決定 | 要介護認定が変更申請中(更新申請中を含む)の被保険者について提出した |
12P4 | 支援事業所番号、被保険者番号:市町村の認定情報と不一致 | 保険者が登録している居宅支援事業所の番号と、提出した事業所番号が違う |
12P5 | 計画作成区分等:市町村の認定情報と不一致 | 受給者台帳の居宅サービス計画作成区分と一致しない、または自己作成になっている |
12QJ | サービス種類、サービス項目:市町村認定の要介護度と相違 | その要介護度では算定できないサービスコードを入力した |
12SA | 保険給付率:市町村認定の給付率と相違 | 受給者台帳上の保険給付率と、入力した保険給付率が違う |
この層で止まる原因は、事業所の入力よりも、市町村側の登録状況にあることが多くなります。新規の利用者、認定の更新月、区分変更の月に集中します。新規と更新の月を、利用者ごとに一覧にしておくと、事前に確認できます。
12PAは事業所の誤りではありません。認定の手続きが進んでいないだけです。この場合、翌月以降に認定が下りてから再請求します。 急いでも通りません。
12PDは月をまたぐ利用者で起きます。認定の有効期間が切れる月に、更新の手続きが間に合っていない場合です。ケアマネジャーと情報を共有していないと、事業所側では気づけません。
12P4と12P5は、居宅介護支援事業所の情報に関するものです。利用者が居宅支援事業所を変更した月に出ます。変更の連絡が事業所に届いていないと、古い事業所番号のまま提出することになります。
事業所台帳と必須項目で止まる返戻
次の層は自事業所のデータです。ここは自分で直せます。
コード | 内容 | 主な原因 |
|---|---|---|
ABB0 | 必須項目が未設定 | 指定された項目に正しい数値が入力されていない |
ADD0 | 無効もしくは事業所基本台帳に未登録 | 給付管理票作成時にサービス事業所の番号を誤って入力した |
ADD1 | 無効もしくはサービス台帳に未登録 | 事業所台帳には登録されているが、取り扱っているサービスが登録されていない |
ADD2 | 当該保険者等情報が保険者台帳等に未登録 | 保険者番号を誤って入力した |
AEE2 | 日数が期間を超過 | サービス開始年月日・中止年月日から計算した可能日数より、サービス実日数が多い |
AEFE | 算定に必要なサービス未請求 | 加算等、基本報酬に加えて請求が必要な項目が請求されていない |
ASSA | 記載された値が計算値を超過 | 国保連のシステムで検算した値より、請求明細書の値が多い |
ADD1が出たときは、新しく始めたサービスの届出を確認してください。事業所番号は合っているのに、そのサービスが台帳に載っていない状態です。加算を新たに算定し始めた月に出やすくなります。
日数や計算値の不整合は、月の途中で認定が変わった利用者や、資格を喪失した利用者で起きます。認定日・資格喪失日と、実際にサービスを提供した日数を並べて確認してください。
ABB0のような「必須項目が未設定」は、介護ソフトの入力画面では気づきにくい誤りです。画面上は空欄に見えないのに、伝送データでは値が入っていない場合があります。同じコードが毎月出るようなら、ソフトの設定か入力手順に原因があります。担当者を替えても直りません。
重複提出の返戻は、再請求しないほうがよい場合があります
ここが要注意です。コード名だけ見て再提出すると、事態が悪くなります。
コード | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
ANN0 | 同月に同じ給付管理票(新規)を提出済 | 既に正しい給付管理票が登録されている。再提出の必要なし |
ANN2 | 同月に同じ請求明細書を提出済 | 複数請求されても1件は登録されるため、再請求の必要なし |
ANN4 | 過去に同じ請求明細書を提出済 | 既に請求支払が終了している。再請求の必要なし |
ANN9 | 給付管理票の作成区分新規での提出が必要 | 誤りが無い場合は「修正」ではなく「新規」として再提出する |
ANN7 | 同月に市町村等による過誤調整を実施済 | 翌月以降に「修正」または「取消」の給付管理票を再提出する |
ANNJ | 過去に同じ給付管理票(新規)を提出済 | 既に登録されている。再提出の必要なし |
ANN0・ANN2・ANN4・ANNJは、何もしないのが正解です。 一覧表に載っているだけで、支払は済んでいます。ここで再請求すると、翌月また同じコードが返ってきます。
なぜ重複が起きるのか。多くは、伝送の途中でエラーが出たように見えて、担当者がもう一度送った場合です。送信結果を確認せずに再送すると、この形になります。送信後に受付の結果を確認する手順を決めておいてください。1分で済みます。
ANN9は対応を間違えやすいコードです。返戻された給付管理票の保険者番号・被保険者番号・サービス年月に誤りが無い場合は、作成区分を「修正」にせず「新規」にして出し直します[6]。返戻された時点で登録が無い状態になっているため、「修正」では受け付けられません。
ANN7は別です。保険者側で先に過誤調整が行われている状態を指します。翌月以降に「修正」または「取消」の給付管理票を再提出します[6]。この場合も、当月中に何かをする必要はありません。
給付管理票との突合で止まる保留
居宅サービスでは、サービス事業所の請求明細書と、居宅介護支援事業所が出す給付管理票を突合します[2]。ここが合わないと保留になります。
保留の期間は連合会ごとに違います。宮城県国保連は「国保連合会では、通常2ヶ月間請求情報を保留するようにしています。(この保留期間は、各県の国保連合会によって違います)」としています[5]。千葉県国保連は最大4か月としています[2]。
保留期間内に給付管理票が提出されなければ、請求明細書は返戻になります[5]。そうなれば再請求が必要です。期限があります。保留の一覧が届いたら、まず担当のケアマネジャーに給付管理票の提出状況を確認してください。自事業所では直せません。
突合で見られているのは、サービス種類ごとの合計単位数です[2]。給付管理票に記載された単位数と、請求明細書の単位数が一致しないと止まります。月の途中でサービスを追加したり、回数を減らしたりした場合に起きやすくなります。変更が出た日のうちにケアマネジャーへ連絡する運用にすると、この保留は減ります。
サービス提供票の内容と、実際に提供したサービスがずれている場合も、この段階で止まります。月末までに変更があったときは、ケアマネジャーへの連絡を当月中に済ませてください。
入金がいつになるか
返戻がキャッシュフローに与える影響を確認します。
請求の締切は「各月分について翌月十日までに行わなければならない」と省令で定められています[3]。受付期間は毎月1日から10日で、郵送の場合は10日必着です[7]。受付最終日の10日を過ぎて受け付けられた場合、翌月受付の扱いになります[7]。
千葉県国保連は毎月25日に介護給付費等の支払を行うとしています[2]。京都府国保連は、審査後その翌月末までに支払うと説明しています[8]。日程は連合会ごとに違うため、自事業所の請求先を確認してください。
返戻になると、その月の入金は立ちません。 再請求は翌月以降になるため、入金は1か月以上先送りになります。月の請求額が大きい事業所ほど、この遅れが資金繰りに影響します。
影響を読むには、返戻の金額を毎月記録してください。件数ではなく金額です。件数が少なくても、単価の高いサービスが1件返戻されれば、資金繰りへの影響は大きくなります。記録があれば、翌月の入金予定を早い段階で修正できます。
過誤の期限も確認しておきます。通常過誤では、保険者から国保連への過誤申立が20日必着とされており、事業所は20日より前に保険者へ過誤の依頼をする必要があります[9]。同月過誤はさらに早く、鹿児島県国保連では3日必着としています[9]。東京都国保連では同月過誤の締切を7日としています[1]。
時効にも上限があります。介護給付費を受ける権利は2年で時効により消滅し、起算日はサービス提供をした日の属する月の翌々々月の1日です[8]。なお介護予防・日常生活支援総合事業費は、地方自治法の規定により5年とされています[8]。月遅れ請求を放置できる期間には限りがあります。
まとめ
一覧表が届いたら、手順は3つです。
- 返戻か保留かを分けます
- 返戻なら、コードの先頭2文字で層を見分けます
- 保留なら、担当のケアマネジャーに給付管理票の提出状況を確認します
12で始まるコードは受給者情報です。ADDやABBは自事業所のデータ、ANNは重複提出を指します。ANNの多くは何もしないのが正解です。この分け方を覚えるだけで、対応の時間が短くなります。新しい担当者への引き継ぎも、この3つの層で説明すると早く伝わります。
毎月同じコードが出ているなら、原因は個々の入力ではなく手順にあります。コードごとに件数を記録し、3か月続けて見てください。上位2つのコードを潰すだけで、返戻の総数が目に見えて減ります。
返戻の件数が毎月10件を超えるようなら、担当者1人で抱える範囲を超えています。手順を見直すか、外に出すかの判断に入ってください。請求業務そのものを外に出すことを検討している場合は、介護レセプト代行に対応範囲を出しています。記録業務の負担については介護のAI活用事例にまとめました。個別の相談は無料相談、現在地の確認は1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。
※コードと運用は2026年9月時点で各国保連合会が公開している資料に基づきます。連合会によって解説の範囲と運用が異なるため、実務では自事業所の請求先が公開している資料をご確認ください。
参考文献・出典
- 介護給付費請求の手引き(審査支払結果帳票の解説) — 東京都国民健康保険団体連合会(国民健康保険中央会 令和7年12月)(参照 2026-09-13)
- 新規指定介護サービス事業所等説明会 — 千葉県国民健康保険団体連合会(令和6年10月23日)(参照 2026-09-13)
- 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-13)
- 国保連合会でのチェックと支払までの流れ — 神奈川県国民健康保険団体連合会(令和3年度版)(参照 2026-09-13)
- 「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」が届いたら — 宮城県国民健康保険団体連合会(令和3年8月11日)(参照 2026-09-13)
- 返戻(保留)事由の解説 — 神奈川県国民健康保険団体連合会(令和3年度版)(参照 2026-09-13)
- 受付日程・提出方法について — 東京都国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-13)
- 時効について — 京都府国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-13)
- 【介護保険】過誤について — 鹿児島県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-13)


