訪問看護の請求で医療保険と介護保険のどちらを使うかは、要介護認定の有無を起点に、告示が列挙する例外に当たるかどうかで決まります。例外に当たる訪問だけを訪問看護療養費明細書で請求し、残りは介護給付費明細書で国保連(国民健康保険団体連合会)に請求します。2026年6月1日に令和8年度診療報酬改定が適用されましたが[8]、医療保険に切り替わる例外を列挙した基準告示の第四の一は改正されていません[15]。それでも毎月、判断に迷う利用者が出ます。別表第八に当たる利用者と、月の途中で特別訪問看護指示書が出た利用者です。

どちらで請求するかは、認定の有無と4つの例外で決まります

要介護・要支援の認定を受けている利用者は介護保険、受けていない利用者は医療保険です。例外は4つです。認定があっても、特別訪問看護指示書の期間、別表第七の疾病等、精神科訪問看護、入院中の外泊日の訪問は医療保険で請求します。

根拠は2段になっています。健康保険法第55条第3項は、同じ疾病について介護保険法の給付を受けられる場合には、訪問看護療養費を支給しないと定めています[4]。介護保険が優先するという原則で、ここが1段目です。国民健康保険法第56条と高齢者の医療の確保に関する法律第57条にも、同じ趣旨の規定があります[17][18]。「認定のある人」は介護保険法第62条の要介護被保険者等で、要介護の人だけでなく要支援の人も含みます[5]。

2段目は例外の列挙です。令和8年3月5日の留意事項通知(保発0305第19号)は、基準告示の第四の一に規定する場合を除いて、要介護被保険者等については訪問看護療養費の算定の対象としないと書いています[3]。基準告示とは、平成18年厚生労働省告示第103号「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等」のことです。その第四の一に並んでいるのは、特別訪問看護指示書に係る訪問、別表第七に掲げる疾病等の人への訪問、精神科訪問看護基本療養費が算定される訪問の3つです[1]。別表第七は「特掲診療料の施設基準等」の別表で、末期の悪性腫瘍や神経難病など20項目が載っています[10]。別表第八は入っていません。

令和8年の改正告示(厚生労働省告示第75号)の新旧対照表を見ると、第四の一は改正後・改正前の両方の欄が「(略)」になっており、今回の改定で文言が動いていないことが分かります[15]。

もう1つの例外は、医療保険と介護保険の給付調整通知にあります。この通知は令和8年3月27日付(保医発0327第4号・老老発0327第2号)で改正され、6月1日から適用されています[2]。入院中(外泊日を含む)に退院に向けて行う訪問は、要介護被保険者等でも訪問看護療養費を算定できます[2]。同じ通知は、精神科訪問看護の例外を「認知症でない患者に指定訪問看護を行う場合に限る」と絞っています[2]。

表1 利用者の状態と請求する保険(2026年9月時点)

利用者の状態

請求する保険

根拠

要介護・要支援の認定がない

医療保険

健康保険法第55条[4]、介護保険法第7条[5]

認定があり、下の例外のどれにも当たらない

介護保険

健康保険法第55条第3項[4]、留意事項通知 第1の2[3]

認定があり、別表第七の疾病等に該当する

医療保険

基準告示 第四の一(2)[1]

認定があり、特別訪問看護指示書の期間中

交付日から14日を限度に医療保険

基準告示 第四の一(1)[1]、留意事項通知[3]

認定があり、精神科訪問看護基本療養費を算定する訪問(認知症でない患者に限る)

医療保険

基準告示 第四の一(3)[1]、給付調整通知[2]

認定があり、入院中の外泊日に退院に向けて訪問する

医療保険

給付調整通知[2]

認定があり、別表第八に該当するだけ

介護保険

基準告示 第四の一に別表第八の記載がない[1]

介護保険の側の通知も同じです。老企第36号は、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者と、特別指示の交付日から14日を限度に「医療保険の給付の対象となるものであり、訪問看護費は算定しない」としています[9]。精神科訪問看護の利用者については、同一日に介護保険の訪問看護費を算定できないと書いています[9]。医療側と介護側で、例外の範囲はそろっています。

別表第七の20項目と別表第八の状態の一覧は、訪問看護レセプトの特記事項と別表7・8に告示の原文から転記しています。

別表第八と認定申請中の利用者は、判定を誤りやすい場面です

別表第八は、医療保険の中で訪問の回数と加算を決める表です。切り替えの条件ではありません。

基準告示の第二の一は、週3日を超えて訪問が必要な利用者として、別表第七の疾病等の人と別表第八に掲げる人を並べて書いています[1]。ところが第四の一、つまり要介護被保険者等を医療保険で算定できる場合の列挙には、別表第八が出てきません[1]。

たとえば、在宅酸素療法を受けている要介護2の利用者です。在宅酸素療法指導管理を受けている状態は別表第八に当たります。請求は介護保険です。特別管理加算も介護保険の側で算定します。

医療保険の訪問が混ざる月は、制約がもう1つあります。給付調整通知は、介護保険で特別管理加算を算定している月は、医療保険の特別管理加算を算定できないとしています[2]。

認定申請中の利用者は、判定が後から動きます。結果が出るまで確定しません。要介護認定は、申請のあった日にさかのぼって効力を生じます(介護保険法第27条第8項)[5]。認定が下りれば申請日以降は訪問看護療養費を支給しない期間になり、申請中の月に医療保険で出した請求もこれに含まれます[4][17][18]。非該当の通知が届けば、医療保険で確定します。

申請日と結果通知日は、利用者ごとに控えます。請求をやり直す範囲が、この2つの日付で決まります。申請中の月の請求方法と、認定後の取下げ・再請求の手順は、請求の前に保険者(市町村)に確かめます。

年齢にも注意が要ります。40歳から64歳の人は、要介護状態の原因が政令で定める特定疾病によるときに限って要介護者に当たります(介護保険法第7条第3項)[5]。40歳未満の人と、特定疾病に当たらない40〜64歳の人は要介護者・要支援者に当たらないため、医療保険で請求します[5]。

特別訪問看護指示書が出た月は、同じ利用者で2種類の明細書になります

特別訪問看護指示書に書かれた指示期間(交付日から14日が上限)の訪問は訪問看護療養費明細書で、期間外の訪問は介護給付費明細書で請求します。1人の利用者について、同じ月に2つの請求が並びます。境目は日付です。

期間は交付日を1日目として数えます[3]。特別訪問看護指示書による算定は月1回に限られ、14日が限度です[3]。気管カニューレを使用している人と、真皮を越える褥瘡の人は月2回です[3]。

指示期間が14日間の場合で考えます。10月8日に交付されたなら、8日から21日までの訪問が医療保険、1日から7日と22日以降が介護保険、という配分になるイメージです。

医療保険の明細書には、記載要領が定める次の3か所に書き込みます[10]。

  • 情報欄に見出し<特別指示期間>を立て、特別指示の有効期間の年月日を書く
  • 訪問日欄のうち、特別指示に基づいて訪問した日に「△」を付ける
  • 情報欄の特記事項に「5 介」を書く(要介護被保険者等を医療保険で算定した場合)

月をまたぐ指示もあります。前月に交付された特別訪問看護指示書の期間が当月にかかるときは、前月の年月日も<特別指示期間>に書きます[10]。10月25日の交付なら、11月分の明細書にも10月25日からの期間が載ります。

介護保険の側では、特別指示の期間の訪問を介護給付費明細書に載せず[9]、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)に伝える介護保険の実績からも同じ期間を外します。同じ日が両方の書類に残っていると、1回の訪問を2つの制度に請求した形になります。

加算にも制限があり、給付調整通知が同じ月に重ねて算定できないものを列挙しています[2]。

表2 同じ月に介護保険で算定していると、医療保険で算定できないもの(2026年6月1日適用[2])

介護保険で算定した加算

医療保険で算定できないもの

緊急時訪問看護加算・緊急時介護予防訪問看護加算・緊急時対応加算

24時間対応体制加算

特別管理加算

特別管理加算

看護・介護職員連携強化加算

看護・介護職員連携強化加算

専門管理加算

専門管理加算

ターミナルケア加算(遠隔死亡診断補助加算を含む)

訪問看護ターミナルケア療養費(遠隔死亡診断補助加算を含む)

ターミナルケアの月は、最後の1回の保険で決まります。死亡日と死亡日前14日以内に、医療保険と介護保険の訪問をそれぞれ1日以上行った場合は、最後に行った訪問が医療保険のときに訪問看護ターミナルケア療養費を算定します[3]。

医療保険と介護保険では、提出先と受付の時刻が違います

期限はどちらも翌月10日です。違うのは、送信を始められる日、10日の締めの時刻、提出先です。

期限の根拠は、それぞれの命令にあります。訪問看護療養費等の請求は「各月分について翌月十日までに行わなければならない」とされています(平成4年厚生省令第5号第3条)[6]。介護給付費も同じ文言で、翌月10日までです(平成12年厚生省令第20号第3条)[7]。提出先は保険の種類で変わります。医療保険は、社保が社会保険診療報酬支払基金(支払基金)、国保と後期高齢者医療が国保連です[12][16]。

表3 両方を扱う事業所の月次の締め(2026年9月時点)

項目

医療保険

介護保険

請求する書類

訪問看護療養費明細書

介護給付費明細書

提出先

社保は支払基金[16]、国保・後期高齢者医療は国保連[12]

国保連[13]

期限

翌月10日[6]

翌月10日[7]

送信できる日時

5〜7日は8時〜21時、8〜10日は8時〜24時[11]

1〜10日。伝送は24時間受付、3時〜5時を除く(大阪府国保連)[13]

送信後にすること

請求確定まで実行する(静岡県国保連)[12]

送信結果を受信して到達を確かめる(宮城県国保連)[14]

同じ月に国保連が受け付ける書類

なし

居宅介護支援事業所が出す給付管理票[13]

医療保険のオンライン請求は、支払基金の稼働時間の表どおり、5日にならないと送信できません[11]。介護保険は1日から受け付けます[13]。送る順番を決めておきます。月初の1日から4日に介護保険分を送り、5日以降に医療保険分を送る順番にすると、10日に2つの作業が重なりません。

締めの時刻も国保連ごとに違います。宮城県国保連は、介護給付費のインターネット請求の締切を毎月10日の午後5時15分としています[14]。大阪府国保連は伝送請求を24時間受け付け、止まるのは設備の点検と保守にあてる午前3時から5時までの2時間だけだとしています[13]。静岡県国保連は、訪問看護療養費の請求書等の提出期限を毎月10日の17時必着としています[12]。

10日が休日にあたる月の扱いも、国保連によって違います。大阪府国保連は、原則として土日祝日は受付を行わないものの、10日が土日祝日の場合は受け付けるとしています[13]。静岡県国保連は、10日が休日の日に会館を開けて受付だけを行うと案内しています[12]。自事業所の請求先の案内は、年度の初めに1回確かめておきます。

まとめ:判定は月初に、送信は1日と5日から

利用者ごとの保険は、認定の有無と基準告示第四の一の例外、それに入院中の外泊の扱いで決まります。毎月の作業は、月初に全利用者の判定を確定させ、特別訪問看護指示書の交付日と指示期間の終了日を控えてから明細書を作る順番になります。

判定と2つの締めを、管理者が訪問の合間に毎月続けるのが難しい場合は、訪問看護レセプト代行に、医療保険・介護保険の両方をまとめて引き受ける範囲を載せています。判定に迷っている利用者がいる場合は、無料相談からお知らせください。

※内容は2026年9月26日時点で厚生労働省、e-Gov法令検索、社会保険診療報酬支払基金、各国民健康保険団体連合会が公開している資料に基づきます。

参考文献・出典

  1. 訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等(平成18年厚生労働省告示第103号) — 厚生労働省(参照 2026-09-26)
  2. 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(令和8年3月27日 保医発0327第4号・老老発0327第2号) — 厚生労働省保険局医療課・老健局老人保健課(参照 2026-09-26)
  3. 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保発0305第19号) — 厚生労働省保険局(参照 2026-09-26)
  4. 健康保険法 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
  5. 介護保険法 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
  6. 訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(平成4年厚生省令第5号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
  7. 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(平成12年厚生省令第20号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
  8. 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号) — 厚生労働省(参照 2026-09-26)
  9. 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日 老企第36号)(全国老人保健施設協会掲載・更新日 令和8年3月13日) — 全国老人保健施設協会 介護保険制度情報サービス(参照 2026-09-26)
  10. 「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(令和8年3月27日 保医発0327第2号)別添3 訪問看護療養費請求書等の記載要領 — 厚生労働省保険局医療課(参照 2026-09-26)
  11. オンライン請求システムの稼働時間等 — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-26)
  12. 請求事務の取扱い(訪問看護) — 静岡県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-26)
  13. 請求期間・方法等(介護保険事業所等の皆様) — 大阪府国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-26)
  14. 介護給付費のインターネット請求 — 宮城県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-26)
  15. 訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第75号) — 厚生労働省(参照 2026-09-26)
  16. 支払基金ってどんなところ? — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-26)
  17. 国民健康保険法 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
  18. 高齢者の医療の確保に関する法律 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)