訪問看護のレセプトで特記事項の一覧を探すとき、最初につまずくのは「どの一覧を見ればよいか」です。医科の診療報酬明細書の特記事項と、訪問看護療養費明細書のものは別の通知で定められています。検索で上位に出てくる「01 公」「02 長」といったコード表は医科のものです。そのまま訪問看護に流用すると、請求の内容が変わります。
番号一覧は記載要領の通知にあります
特記事項の番号と略称は、厚生労働省が出している「訪問看護療養費請求書等の記載要領について」という通知に載っています。この通知は診療報酬改定のたびに一部改正されます。
2026年度改定でも改正通知が出ています。厚生労働省の令和8年度診療報酬改定のページには、「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日 保医発0327第2号)が掲載されています[1]。同じ日付で「訪問看護計画書等の記載要領等について」(保医発0327第10号)も出ています[1]。
つまり、番号一覧は固定ではありません。手元にある一覧がいつ時点のものかを、まず確認してください。 数年前にダウンロードした表をそのまま使っている事業所は少なくないはずです。改定をまたぐと、追加された項目が抜けます。
参照するのは厚生労働省の原文です。まとめサイトの転記では、改正が反映されているかどうかが分かりません。請求に直結する情報ですから、一次情報だけを見てください。
医科の明細書と様式が別であることにも理由があります。訪問看護療養費請求書と訪問看護療養費明細書の様式は、請求に関する命令の附則第3条で「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める様式による」と定められています[7]。診療報酬明細書とは別の告示・通知の系統で管理されている書類です。似た欄名があっても、中身は同一とは限りません。
医療保険か介護保険かが最初の分岐
特記事項に入る前に、確認しておくことがあります。その訪問が医療保険の対象か、介護保険の対象かです。ここを誤ると、特記事項以前に請求先が変わります。
法律上の根拠は健康保険法第55条第3項です。同項は「被保険者に係る療養の給付又は…訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給は、同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない」と定めています[4]。介護保険が優先します。
例外があります。厚生労働省の給付調整通知は、次のように書いています[5]。
介護保険における訪問看護ステーションからの訪問看護を受けている者の急性憎悪等により、特別指示書に係る指定訪問看護又は指定老人訪問看護を受ける場合の給付は、医療保険から行われるもの
介護保険の利用者でも、特別訪問看護指示書が出れば医療保険に切り替わります。期間も決まっています。老企第36号は「交付の日から一四日間を限度として医療保険の給付対象となるものであり、訪問看護費は算定しない」としています[6]。14日間は介護保険の訪問看護費を算定しません。
この14日をまたぐ月は、1人の利用者で2つの請求が発生します。 月の途中で切り替わるためです。請求担当者が最も間違えやすい場面がここです。
現場では、指示書の日付が事務に伝わるのが遅れます。看護師が受け取った特別訪問看護指示書が、請求の締切間際に事務へ回る。よくある流れです。指示書を受け取った時点で事務に共有する決まりを作っておくと、この遅れは避けられます。紙の指示書をその日のうちにスキャンして共有フォルダへ置く。それだけでも変わります。
別表第七の20の疾病等
別表第七は「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)に置かれています。2026年9月14日時点で表示されている最終改正は令和8年5月29日厚生労働省告示第229号です[2]。
見出しは「在宅患者訪問診療料(Ⅰ)及び在宅患者訪問診療料(Ⅱ)並びに在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する疾病等」です[2]。
区分 | 疾病等 |
|---|---|
悪性腫瘍 | 末期の悪性腫瘍 |
神経難病等 | 多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症 |
神経難病等 | パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎 |
代謝性疾患等 | ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎 |
その他 | 後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態 |
合わせて20項目です。このうち1つでも該当すれば、週3日の限度から外れます。 該当の見落としは、請求できたはずの訪問を請求しない結果につながります。
告示の正式名は「特掲診療料の施設基準等」です。事業所の中で「別表7」と略して呼んでいても、原文を探すときは正式名で検索してください。訪問看護療養費の告示(告示第67号)は、この別表を「別に厚生労働大臣が定める疾病等」として引く構造になっています[3]。2つの告示をまたいで読む必要があるため、どちらか一方だけを見ていると条件を取り違えます。
別表第八の5つの状態等
別表第八も同じ告示の中にあります。見出しは「退院時共同指導料1の注2に規定する特別な管理を要する状態等にある患者並びに退院後訪問指導料、在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に規定する状態等にある患者」です[2]。
状態等 |
|---|
在宅麻薬等注射指導管理等を受けている状態 |
気管カニューレ、留置カテーテルを使用している状態 |
在宅自己腹膜灌流、在宅血液透析、在宅酸素療法等の指導管理を受けている状態 |
人工肛門又は人工膀胱を設置している状態 |
真皮を越える褥瘡の状態、在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している状態 |
別表第七が病名で決まるのに対し、別表第八は処置や医療機器の使用状況で決まります。同じ利用者でも、カテーテルが入った月から該当します。月ごとに確認が必要な別表です。 前月の判断をそのまま引き継ぐと誤ります。
退院直後の利用者は、特に確認が必要です。入院中に留置カテーテルや人工肛門の管理が始まっていれば、退院したその月から別表第八に該当します。病院からの情報提供書を事務まで回す経路がないと、この変化は請求に反映されません。
逆に、状態が改善して該当しなくなる場合もあります。褥瘡が治癒したときや、在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定が終わったときです。該当が外れた月に前月の判断を引き継ぐと、請求できない内容を請求することになります。どちらの方向にも起こる誤りです。
週3日の限度と、その例外
回数の根拠は告示です。訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年3月5日厚生労働省告示第67号)は、訪問看護基本療養費について「週3日を限度(別に厚生労働大臣が定める疾病等の利用者に対する場合を除く。)」と定めています[3]。
この「別に厚生労働大臣が定める疾病等」が別表第七です。
1日に複数回訪問する場合の根拠も同じ告示にあります。「別に厚生労働大臣が定める疾病等の利用者又は…特別訪問看護指示書の交付を受けた利用者に対して、必要に応じて1日に2回又は3回以上指定訪問看護を行った場合」と書かれています[3]。複数回の訪問を請求できるのは、この条件を満たすときです。
整理すると、判断の順番は3段階になります。医療保険か介護保険か。別表第七に該当するか。別表第八に該当するか。この3つが決まれば、請求できる回数と加算の範囲が決まります。
金額は改定で変わります。この記事では金額を書きません。告示の改正反映を確認したうえで、厚生労働省の原文から転記してください。
判断に迷ったときの調べ先も決めておくと早くなります。回数と加算の条件は告示第67号、疾病等の範囲は告示第63号の別表、保険の切り分けは健康保険法第55条と給付調整通知。この対応を1枚の紙にしておけば、担当者が代わっても同じ場所を見られます。
提出はオンラインが原則です
請求の方法も命令で決まっています。訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(平成4年厚生省令第5号)の第1条は、訪問看護療養費の請求を「当該指定に係る訪問看護事業を行う事業所ごとに、電子情報処理組織の使用による請求により行うものとする」としています[7]。
期限は第3条です。「第一条の請求は、各月分について翌月十日までに行わなければならない」と定めています[7]。到達の時点についても、「審査支払機関の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該審査支払機関に到達したものとみなす」と書かれています[7]。
ただし、実務の締切は審査支払機関ごとに別に案内されます。静岡県国民健康保険団体連合会は、紙請求の提出期限を毎月10日(17時必着)とし、オンライン送信は毎月5日から10日の指定時間帯としています[8]。「翌月10日まで」と「10日17時必着」は別の話です。 自分の請求先の案内を必ず確認してください。
同じ命令の第1条は、公費負担医療の対象も列挙しています。小児慢性特定疾病医療費、自立支援医療費、生活保護法の医療扶助、原爆援護法、戦傷病者特別援護法、感染症法、石綿健康被害救済法、難病法の特定医療費の8つです[7]。公費との併用がある利用者は、記載欄が増えます。
記載を間違えないための院内の手順
手順にしておくと、確認漏れが減ります。
- 月初に、記載要領の通知が改正されていないかを厚生労働省のページで確認する
- 利用者ごとに、別表第七・別表第八の該当状況を月単位で記録する
- 特別訪問看護指示書が出た利用者は、交付日と14日後の日付を控える
- 提出前に、公費併用の有無と請求先の締切を突き合わせる
この4つを月次の作業に組み込めば、特記事項の記載で迷う場面はかなり減ります。記録は紙でもかまいません。続けられる形にすることのほうが重要です。
返戻を受けたときの振り返りも同じ表で行えます。どの利用者の、どの月の、どの判断が誤っていたか。別表の該当判定なのか、保険の切り分けなのか、締切なのか。原因を4つのどれかに分類していくと、自事業所で繰り返している誤りが見えてきます。3か月も記録すれば傾向が出ます。
事務の量そのものを減らしたい場合は、外注も選択肢になります。対応範囲の考え方はレセプト代行とはに、料金の相場はレセプト代行の料金にまとめました。
まとめ
訪問看護レセプトの特記事項は、番号の一覧を手に入れて終わりではありません。その番号を選ぶ判断が、医療保険と介護保険の区別、別表第七、別表第八の3つで決まるからです。
一覧は改定ごとに更新されます。2026年3月27日に改正通知が出ている点を踏まえ、手元の資料の日付を確認してください[1]。
自事業所の請求体制を見直す場合は医療レセプト代行に対応範囲を出しています。個別の相談は無料相談からどうぞ。
※内容は2026年9月14日時点で厚生労働省およびe-Gov法令検索が公開している資料に基づきます。特記事項の番号一覧そのものは記載要領の通知(PDF)にあり、本記事では番号の転記を行っていません。請求の際は通知の原文を確認してください。
参考文献・出典
- 令和8年度診療報酬改定について — 厚生労働省保険局(参照 2026-09-14)
- 特掲診療料の施設基準等(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)別表第七・別表第八 — 厚生労働省(最終改正 令和8年5月29日厚生労働省告示第229号)(参照 2026-09-14)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(平成20年3月5日厚生労働省告示第67号) — 厚生労働省(参照 2026-09-14)
- 健康保険法第55条 — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について(平成12年3月31日 保険発第55号ほか) — 厚生労働省(参照 2026-09-14)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日 老企第36号) — 厚生労働省(参照 2026-09-14)
- 訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(平成4年厚生省令第5号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-14)
- 請求事務の取扱い(訪問看護療養費) — 静岡県国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-14)


