省力化投資補助金でAIが対象になるかは、申請する型によって変わります。同じAIでも、設備と一体なら通り、ソフトウェア単体なら通りません。

結論から確認します。判断の軸はAIかどうかではありません。機械装置と一体になっているかどうかです。 順に見ます。

制度は2つに分かれています

中小企業省力化投資補助事業には、カタログ注文型と一般型(オーダーメイド型)があります[6]。2026年9月13日時点で、どちらも動いています。

表1 2つの型の違い(2026年9月13日時点[1][5][7])

項目

カタログ注文型

一般型

選び方

登録済みの製品カタログから選ぶ

自社向けに設計する

補助率

2分の1以下

2分の1(小規模企業者は3分の2)

補助上限(5名以下)

200万円(賃上げ達成時300万円)

750万円

労働生産性の目標

年平均成長率3.0%以上

年平均成長率4.0%以上

公募

随時受付中

回ごとの締切あり

カタログ注文型は2026年3月19日に制度が改定され、上限額が変わっています[7]。改定前の数字を載せた解説が残っているため、金額を調べるときは改定日を確認してください。

2つの型は、手間のかかり方も違います。カタログ注文型は登録済みの製品から選ぶため、仕様を詰める工程がありません。そのかわり自社の業務に合う製品がカタログに無ければ、それで終わりです。一般型は自社向けに設計できますが、システムインテグレータとの打ち合わせが要ります。どちらが向くかは、自社の工程が標準的かどうかで決まります。

一般型ならAIは対象です

一般型の公式FAQは、オーダーメイド設備をこう定義しています[1]。

ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム

定義の中に「AI」が入っています。 生産工程の自動化に使うAIであれば、一般型の対象として想定されています。

対象経費も確認します。一般型では、機械装置・システム構築費が必須で、そこに技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費が加わります[5]。

ここに条件が1つあります。機械装置・システム構築費が必須経費です[5]。クラウドサービス利用費だけ、外注費だけという申請は成立しません。SaaSを1つ契約して終わりという使い方には向いていません。

AIを使う設備の例で言えば、画像認識で不良品を弾く検査装置、センサーの値をAIが判断して動く搬送設備、複数の工程をつなぐ自動化システムが該当します。いずれも機械が動きます。

逆に対象になりにくいのは、人が使うソフトウェアだけで完結する用途です。議事録の自動作成、請求書の読み取り、問い合わせへの自動応答は、機械装置を伴いません。これらを一般型で申請しても、必須経費の要件を満たしません。この判断を先にしておかないと、SIerとの打ち合わせを何回か重ねてから気づくことになります。

定義のもう1つの要点は「事業者の個々の業務に応じて専用で設計された」という部分です[1]。汎用のパッケージ製品をそのまま導入する形は、この定義から外れます。自社の工程に合わせた設計が入っているかどうかが、申請書で説明すべき点になります。

カタログ注文型はソフトウェア単体が対象外です

カタログ注文型は逆の線引きです。事務局のFAQに明記されています[2]。

本補助金では、情報システム等ソフトウェアのみの製品は登録の対象外になります。そのため、機械装置等と密接不可分なソフトウェア・情報システム等を合わせて申請・登録をお願い致します。

つまりソフトウェアだけの製品は、そもそもカタログに載りません。カタログに載っていない製品は対象外です[2]。

一方で、機械と一体のAI製品は実際に登録されています。製品カタログには「AI外観検査用画像処理システム」が2026年4月23日に、「映像解析AIによる交通誘導システム」が2026年2月26日に追加されました[3]。AIという理由で除外されているわけではありません。

自社が検討している製品がカタログにあるかどうかは、事務局の製品カタログページで確認できます[3]。無ければ、一般型で設計するか、別の制度を見ることになります。設計から入ると、打ち合わせと見積もりで数か月かかります。

カタログは随時更新されています。今日無かった製品が来月追加されることがあります。急ぎでなければ、カタログの新着を定期的に見ておく価値があります。逆に、販売店から「この製品は補助金の対象です」と言われた場合は、その場でカタログを検索して確認してください。登録の有無は事務局のページで誰でも確認できます。

第8回の締切は10月16日17時です

一般型は回ごとに締切があります。第8回の日程を確認します。

表2 一般型 第8回公募の日程(2026年9月13日時点[4])

段階

日時

公募開始

2026年8月18日(火)

申請受付開始

2026年9月18日(金)10:00

締切

2026年10月16日(金)17:00

採択発表

2027年2月上旬(予定)

採択発表まで約4か月かかります。 設備の導入時期から逆算して申請回を決めてください。年度内に稼働させたい設備であれば、この回では間に合わない可能性があります。

採択の状況も公表されています。申請数と採択数は、第1回1,809件/1,240件、第2回1,160件/707件、第3回2,775件/1,854件、第4回2,100件/1,456件、第5回2,035件/1,251件、第6回1,841件/1,176件です[8]。事務局は採択率として公表していないため、社内で説明するときは件数のまま伝えることをおすすめします。

件数の並びを見ると、回によって申請数が倍近く動いています。第2回の1,160件に対し、第3回は2,775件です[8]。申請が集中する回と、そうでない回があります。ただしこれは結果論で、事前に読むことはできません。締切に合わせて準備を進め、間に合わなければ次の回に回す、という構えのほうが現実的です。

カタログ注文型は随時受付です[7]。締切を待つ必要がありません。急ぎであれば、まずカタログに該当製品があるかを確認する順番になります。

補助上限は従業員数で決まります

金額の幅が大きいので、自社がどこに入るかを先に確認します。

表3 一般型の補助上限(2026年9月13日時点[9])

従業員数

補助上限

5人以下

750万円

6〜20人

1,500万円

21〜50人

3,000万円

51〜100人

5,000万円

101人以上

8,000万円

補助率は2分の1、小規模企業者は3分の2です[9]。さらに2つの特例があります。大幅賃上げを行う場合は補助上限額が250万〜2,000万円上乗せされ、101人以上では1億円になります[5]。最低賃金の引上げに関する特例では、補助率が3分の2に上がります[5]。

要件も確認しておきます。労働生産性は年平均成長率4.0%以上の増加、1人当たり給与支給総額は年平均成長率3.5%以上の増加、事業所内最低賃金は事業実施都道府県の最低賃金プラス30円以上の水準が求められます[5]。賃上げの要件が2つ入っている点が、この制度の特徴です。 設備を入れて人件費を下げる、という使い方は想定されていません。省力化した分の余力を、賃金と生産性に回すことが前提になっています。

達成できなかったときに何が起きるか

要件を見て不安になる方が多いので、未達の扱いを確認します。ここは2つで扱いが違います。

労働生産性の目標について、事務局は「労働生産性の向上目標を達成できなかったことで交付決定取消、補助金返還になることはありません」としています[1]。

給与支給総額は別です。未達の場合、1人当たり給与支給総額の達成率に応じて補助金の返還を求められます[1]。ただし付加価値額が増加せず営業利益が赤字である場合などには返還を求めないとされています[1]。

表4 未達時の扱い(2026年9月13日時点[1])

要件

未達のとき

労働生産性 年平均+4.0%以上

取消・返還にはならない

1人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上

達成率に応じて返還を求められる

給与を上げる前提で計画を立ててください。 設備投資の効果が出る前に人件費が先に上がるため、資金繰りの計画に入れておく必要があります。

要件の期間も確認しておいてください。年平均成長率での評価なので、単年度の数字ではなく複数年での推移を見られます。計画を立てる段階で、何年後にどの水準を目指すかを数字で置いておく必要があります。この数字は申請書に書くだけのものではなく、後の実績報告で実際に確認されます。

デジタル化・AI導入補助金とどちらを見るか

似た時期に2つの制度が動いているため、迷う方がいます。判断は単純です。

自社が導入したいものがソフトウェアだけなら、デジタル化・AI導入補助金2026を見てください。こちらはソフトウェア購入費とクラウド利用料が対象経費の中心です[10]。議事録、請求書の読み取り、問い合わせ対応はこちらの側です。制度の中身はデジタル化・AI導入補助金2026の要点にまとめました。

機械や設備を伴うなら省力化投資補助金です。検査装置、搬送設備、自動化ラインが該当します。

判断に迷うのは、機械の制御にソフトウェアが付く場合です。ここは「機械装置と密接不可分か」で判断します。装置が動くために必要なソフトウェアなら一体として扱われ、装置とは独立して動く業務システムなら別扱いになります。カタログ注文型のFAQが示す「密接不可分」という言葉が判断の軸です[2]。

併用については、一般型のFAQが「同じ補助対象に対して併用することは不可としておりますが、別の補助対象に対してであれば可能です」としています[1]。同じ設備で二重に受け取ることはできませんが、別の投資であれば両方を使う余地があります。 工場の検査装置を省力化投資補助金で、事務所の会計ソフトをデジタル化・AI導入補助金で、という組み合わせです。

ただし2つを同時に進めると、事務作業がそれぞれ発生します。どちらも交付決定前の発注が禁じられ、実績報告の提出も別々です。社内で手続きを担当できる人数を見てから、同時に進めるか順番に進めるかを決めてください。担当が1人しかいない会社では、片方ずつのほうが確実に終わります。

まとめ

判断の順番は1つです。導入したいものに機械装置が含まれるかを確認してください。含まれない場合、この制度で時間を使う意味はありません。5分で判断できます。含まれるなら省力化投資補助金、ソフトウェアだけならデジタル化・AI導入補助金です。

一般型を狙う場合、第8回の締切は2026年10月16日17時です[4]。採択発表が2027年2月上旬の予定なので、設備の導入時期から逆算して回を選んでください。どの業務を自動化するかから相談したい場合はAI導入コンサルティングで一緒に決めます。現在地の確認は1分でわかるAI活用度診断から、個別の相談は無料相談へどうぞ。

※制度の内容・金額・日程は2026年9月13日時点で公表されているものです。公募要領は更新されるため、申請前に事務局の公式サイトで最新版をご確認ください。

参考文献・出典

  1. よくあるご質問(一般型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  2. よくあるご質問(カタログ注文型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  3. 製品カタログ(カタログ注文型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  4. スケジュール(一般型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  5. 事業概要(一般型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  6. 省力化投資補助金 — 経済産業省 中小企業庁(ミラサポplus)(参照 2026-09-13)
  7. カタログ注文型とは — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  8. 採択結果(一般型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  9. 中小企業省力化投資補助事業(一般型) — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
  10. 通常枠|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)