デジタル化・AI導入補助金2026とは、中小企業がAIを含むITツールを導入する費用の一部を国が補助する制度です。2026年の名称変更まで「IT導入補助金」と呼ばれていた制度と同じものです[1]。
制度名に「AI」が入りました。そのため、AIツールなら何でも補助されると読む方がいます。ここが最大の誤解です。補助の可否を決めるのは、そのツールが事務局に登録されているかどうかです。 機能の高さは判断に入りません。
締切が迫っているので、日程から先に確認します。
いま申請できるのは9月29日17時締切の回です
日程は公表されています。参照時点で受付中なのは次の回です。
枠 | 締切 | 交付決定日(予定) |
|---|---|---|
通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠 | 2026年9月29日(火)17:00 | 2026年11月9日(月) |
複数者連携枠 | 2026年10月30日(金)17:00 | 2026年12月10日(木) |
事務局は「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております」と書いています[3]。次の回がいつになるかは、2026年9月13日時点では公表されていません。 今回を見送ると、次の締切の告知を待つことになります。
注意点が1つあります。交付決定日の意味です。11月9日は「お金が振り込まれる日」ではありません。ここから発注して、導入して、支払いを済ませ、実績報告を出した後に補助金が入ります。交付決定の前に契約や発注をすると、その分は補助の対象から外れます。 事務局は「交付決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができません」と明記しています[10]。見積もりを取るところまでは自由です。注文書を出すのは11月9日を過ぎてからにしてください。
期限もあります。この回で交付決定を受けた場合、実績報告の提出期限は2027年4月30日(金)17時です[3]。実績報告までに、導入したツールの利用と運用が始まっている必要があります[10]。年度末に契約だけ済ませて、稼働は翌期から、という進め方はできません。
補助金が入るのは、実績報告が受理されたあとです。 交付決定から入金までの半年近く、ツールの利用料は自社で立て替えます。月額のクラウドサービスを2年分まとめて契約する場合、この立て替え額が資金繰りに響きます。申請の前に、支払い時期と入金時期を月ごとに並べておくことをおすすめします。
枠は5つ。従業員100名までの会社が使うのは2つ
枠は5つです。補助率と上限額が別々に決まっています。
枠 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
通常枠 | 5万〜450万円 | 2分の1以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 〜350万円 | ソフトウェア50万円以下は4分の3以内、50万円超は3分の2以内 |
インボイス枠(電子取引類型) | 〜350万円 | 3分の2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万〜150万円 | 2分の1以内 |
複数者連携枠 | 〜3,000万円 | 3分の2以内 |
見るのは2つです。従業員5〜100名の会社が実際に使うのは、通常枠とインボイス枠になります。通常枠は業務プロセスの数で金額帯が変わり、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万〜450万円になります[2]。会計と受発注の2つを入れ替えるなら、通常枠の下の帯に入ります。
補助率はインボイス枠のほうが高くなっています。ソフトウェアが50万円以下なら4分の3以内です[6]。ただし対象は会計・受発注・決済の機能を持つツールに限られ、50万円以下でも1機能以上、50万円超なら2機能以上を満たす必要があります[6]。会計ソフトを入れ替えるなら、通常枠で申請するより先にインボイス枠を見てください。 同じ製品で補助率が上がることがあります。
セキュリティ対策推進枠は別物です。IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に載っているサービスが対象で、利用料は最大2年分まで見てもらえます[7]。AIを社内で使い始めると、ログ監視や端末対策の必要性が先に来ます。ここを同時に手当てする選択肢があります。
ChatGPTを直接契約しても対象になりません
誤解が集中するのはここです。
事務局は「登録されていないITツールは交付申請をすることができません」と明記しています[4]。ITツールの登録は、IT導入支援事業者が事務局のポータルから申請して承認を受ける手続きです[4]。つまり補助の対象かどうかは、登録の有無だけで決まります。製品の性能は関係しません。
登録が全てです。自社でOpenAIやAnthropicと直接契約した月額利用料は、この手続きを経ていません。同じAIを使う場合でも、登録済みのITツールとして提供されている製品を選ぶ必要があります。 検索画面では「生成AI」「生成AI以外のAI技術」のタグで絞り込めるようになっています[4]。
中小企業庁は、AIの活用範囲として「文章作成、チャット対応、データ分析、業務予測、書類作成支援など」を挙げています[9]。同じ記事の中で「IT導入支援事業者任せにしない」とも書いています[9]。補助金が出る製品の一覧から選ぶ形になるため、自社の業務に合っているかの判断は自社に残ります。どの業務をAIに渡すかを先に決めてから、対象ツールを探してください。判断の順番についてはAI導入の進め方にまとめています。
申請までに要る2つのID
書類より先にIDが要ります。日数を読み違えると締切に間に合いません。
準備するもの | 所要日数の目安 | 備考 |
|---|---|---|
GビズIDプライム | おおむね2週間 | 法人の印鑑証明書が要る |
SECURITY ACTION の宣言 | おおむね2〜3日 | IPAのサイトで宣言する |
IT導入支援事業者とITツールの選定 | 会社による | 事前登録済みの中から選ぶ |
壁は日数です。GビズIDプライムの発行は「おおむね2週間」と案内されています[5]。9月29日17時の締切に対して、9月13日時点から動くなら日程に余裕はありません。まだIDを持っていない場合は、今回の回ではなく次回を狙う判断のほうが確実です。
申請は事業者が単独で出すものではありません。IT導入支援事業者と共同で交付申請を作る流れになっています[5]。相手が決まらないと申請そのものが始まりません。支援事業者の選び方は、この制度でいちばん結果が変わる部分です。
補助されるのはソフトウェア代だけではありません
対象経費の範囲は見落とされます。ソフトウェアの購入費だけを申請して終わる会社が少なくありません。
通常枠の対象経費は、ソフトウェア購入費とクラウド利用料が必須で、クラウド利用料は最大2年分まで含められます[2]。そこにオプションと役務が乗ります。オプションは機能拡張、データ連携ツール、セキュリティです。役務は導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポートです[2]。
区分 | 含まれるもの | 扱い |
|---|---|---|
ソフトウェア | 購入費、クラウド利用料(最大2年分) | 必須 |
オプション | 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ | 任意 |
役務 | 導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート | 任意 |
導入研修が対象経費に入っている点は、AIツールでは特に大きい意味を持ちます。 ツールを入れただけで社内の使い方が変わることはありません。誰がどの業務でどう使うかを決める時間が要ります。その時間を補助対象として申請できるなら、使わない理由がありません。
もう1つ条件があります。通常枠では、1種類以上の業務プロセスを持つソフトウェアを申請する必要があり、汎用プロセスだけの申請は認められません[2]。会計・受発注・在庫・顧客管理のように、業務の名前が付く機能を含むツールを選んでください。
「実質無料になります」と言われたら断ってください
事務局は不正行為の例を公開しています。一度読んでください。契約を持ちかけられたときに、その場で判断できるようになります。
挙げられているのは、購入費用を後日ベンダーや第三者から返金してもらう行為、営業先への紹介料としてコンサル料などを受け取る行為、GビズIDを他者に共有して申請手続きを代わりにやらせる行為、そして導入や研修が実際には行われていない状態での申請です[11]。
行為 | 措置 |
|---|---|
購入費用の一部を後日返金してもらう | 交付決定取消・補助金の返還請求 |
紹介料やコンサル料を受け取る | 同上、IT導入支援事業者の登録取消 |
GビズIDを他者に共有して手続きさせる | 同上 |
導入や研修が実際には行われていない | 事業者名の公表、警察への通報を含む措置 |
加算金も課されます[11]。「自己負担は実質ゼロになります」という説明を受けたら、その場で契約せずに事務局へ確認してください。 補助率は2分の1以内なので、自己負担がゼロになる設計は制度上ありません。
GビズIDの共有も同じです。申請の手間を減らすためにIDを渡す会社がありますが、これは不正行為として名指しされています[11]。交付申請は、申請者と支援事業者がそれぞれのアカウントで分担して入力する仕組みになっています[5]。自社の入力を誰かに肩代わりさせる設計にはなっていません。
通るかどうかの目安は、公表されている件数から読む
採択率の公表はありません。事務局が出しているのは申請件数と交付決定件数です。
枠 | 申請件数 | 交付決定件数 |
|---|---|---|
通常枠 | 1,913件 | 807件 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 3,982件 | 1,781件 |
セキュリティ対策推進枠 | 18件 | 13件 |
通常枠は申請1,913件に対して交付決定807件です(2026年9月2日公表の件数[8])。割ると4割強になりますが、事務局が率として出した数字ではないため、社内で説明するときは件数のまま伝えることをおすすめします。
この数字から読めることが1つあります。落ちる会社のほうが多い制度です。 申請したら通る前提で設備投資の計画を立てると、交付決定が出なかったときに動けなくなります。補助金が出なくても導入する価値がある業務から選んでください。この考え方はAI研修の助成金でも同じです。
ソフトウェアだけならこの制度、設備と一体なら別の制度
似た名前の制度があります。中小企業省力化投資補助金です。入口で迷う方が多いため、違いを先に書きます。2026年9月13日時点で両方とも動いています。
条件は1つです。この補助金はソフトウェアとクラウド利用料が対象の中心で、省力化投資補助金の一般型は機械装置・システム構築費が必須経費になっています[12]。設備を伴わないSaaSの導入は、省力化投資補助金の一般型では申請が成立しません。
省力化投資補助金のカタログ注文型はさらに明確です。事務局は「情報システム等ソフトウェアのみの製品は登録の対象外になります」と書いています[13]。機械装置と密接不可分なソフトウェアなら、設備と合わせて登録できる扱いです[13]。
導入するもの | 見る制度 |
|---|---|
会計・受発注・顧客管理などのソフトウェア、クラウドサービス | デジタル化・AI導入補助金2026 |
AI外観検査装置など、機械と一体になったシステム | 中小企業省力化投資補助金 |
ソフトウェア単体で、設備の購入を伴わない | デジタル化・AI導入補助金2026 |
多くは前者です。AIを業務に入れる場合、対象になるのはソフトウェア側の制度になります。議事録、請求書の読み取り、問い合わせ対応はソフトウェアだけで完結します。製造ラインの検査工程を自動化するなら後者を見てください。
まとめ
順番は1つです。先にGビズIDプライムの申請状況を確認してください。持っていれば9月29日17時の回に間に合う可能性があります。持っていなければ次回に回し、その間に「どの業務をAIに渡すか」を決めておきます。
補助金は導入の理由になりません。業務の課題が先にあり、その解決策が対象ツールと一致したときだけ使う制度です。自社のどの業務から手を付けるか迷っている場合は、1分でわかるAI活用度診断で現在地を確かめてから、無料相談でご相談ください。AI導入の進め方そのものはAI導入コンサルティングでも承っています。
※本記事の金額・日程・要件は2026年9月13日時点で公表されている情報に基づきます。公募要領は更新されるため、申請前に事務局の公式サイトで最新版をご確認ください。
参考文献・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026の概要について — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 通常枠|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 事業スケジュール|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- ITツールの登録申請 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 新規申請・手続きフロー詳細 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- インボイス枠(インボイス対応類型) — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- セキュリティ対策推進枠 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 交付決定事業者一覧 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 中小企業庁担当者に聞く|業務改善につながるITツールの導入を支援 — 経済産業省 中小企業庁(ミラサポplus)(参照 2026-09-13)
- 交付決定後の手続き — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 不正行為にご注意ください — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-13)
- 事業概要(一般型)|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)
- よくあるご質問(カタログ注文型)|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-09-13)


