訪問看護の請求代行とは、訪問看護ステーションが医療保険(訪問看護療養費)と介護保険(介護給付費)の請求事務を外部の会社に委託するサービスです。料金の決まり方には、件数によらない定額、件数に応じた従量、基本料に従量を足す形があります。
どれが安いかは、料金表だけでは決まりません。同じ利用者が同じ月に医療保険と介護保険の両方で請求になることがあり、「1件」の数え方も会社ごとに違うからです。医科を含むレセプト代行の相場はレセプト代行の料金相場と選び方にまとめています。ここでは訪問看護に固有の論点だけを扱います。
料金は「定額」「従量」「基本料+従量」の3通りです
公式ページで料金を公開している訪問看護向けの請求代行を並べると、表1のようになります。
決まり方 | 公開されている料金 | ページに書かれている条件 |
|---|---|---|
基本料+従量 | 基本料金15,000円+レセプト件数に応じた料金(ビジカン) | 金額は例示で、請求枚数や利用システムで変動[7] |
基本料+従量(件数の区切り) | 明細書件数50件ごとに月額50,000円。初期費用・基本料金は別(ケアチーム) | 初期費用と基本料金の額は個別に確認[8] |
基本料+枚数帯 | 「お試しプラン」導入(3か月間)の料金として、基本料金50,000円〜/月、請求枚数25枚未満は追加0円、25〜49枚未満30,000円、50〜74枚未満100,000円、75〜99枚未満150,000円、100枚以上は要見積もりと掲載(レセケア) | お試しプラン終了後の料金は記載なし[10] |
表1の額はすべて税別です。予算を組むときは消費税を加えます。
件数だけで料金が決まる純粋な従量制の公開価格は、確認した範囲では見つかりませんでした。従量の部分があっても、基本料金や初期費用が別に設定されている形がほとんどです。
月額の外にかかる費用もあります。公開ページで確認できたものを挙げます。
- 初期費用。ケアチームは初期費用と基本料金を、明細書の件数に応じた料金とは別に設定している[8]
- オプション作業の料金。ビジカンは計画書・報告書の郵送、指示書の依頼、利用者への請求書の作成を別メニューとし、料金は問い合わせとしている[7]
- 利用料の請求と回収。ケアチームは債権管理・口座振替、利用料請求書の発送をオプションに置いている[8]
- 付帯の相談。レセケアは経営相談を別料金としている[10]
見積もりは、月額に初期費用と最低契約期間を加えた年額で比べます。ケアチームは利用開始から最低1年間の契約としています[9]。ビジカンも基本の契約期間を1年とし、解約希望月の2か月前までに連絡すれば違約金なしで途中解約できるとしています[7]。
件数の数え方で、同じ事業所でも請求額が変わります
表1の「件数」「請求枚数」「明細書件数」は、会社ごとに言葉が違います。この違いは、そのまま金額に表れます。
医療保険の分は訪問看護療養費明細書、介護保険の分は介護給付費明細書で請求します。介護保険の利用者に特別訪問看護指示書が出ると、指示の日から14日間は介護保険の訪問看護費を算定せず[11]、医療保険の訪問看護療養費として算定します[2]。14日間の前後にも訪問があれば、その月は1人の利用者に2枚の明細書ができます。
送り先も1つではありません。医療保険の分は利用者の保険者によって社会保険診療報酬支払基金か国民健康保険団体連合会へ、介護保険の分は国民健康保険団体連合会へ送ります。代行会社がどの送り先まで扱うかも、件数と並べて確かめる項目です。
件数の数え方には「利用者数」と「明細書の枚数」があります。特別訪問看護指示書が出て明細書が2枚になった利用者は、利用者数では1件、明細書の枚数では2件と数えられます。利用者が60人のステーションで、介護保険の利用者5人がこの形になれば、明細書は65枚になるというイメージです。差は5枚です。区切りの境目にいる事業所では、この差で料金の段が1つ上がることがあります。
規模ごとの向き不向きは、次のように考えると判断しやすくなります。
- 開設して1年以内で、利用者数が月ごとに大きく動く事業所は、件数に連動する体系なら件数が少ない月の支払いを抑えられる。ただし区切りを越えた月は請求額が一段上がる
- 利用者数が安定している、または増えている事業所は、定額なら件数が増えても月額が変わらず、年間の予算を立てやすい。件数が少ないうちは1件あたりの額が割高になる
- 医療保険の利用者の割合が高い事業所は、医療保険分と介護保険分を別々に数えて別料金にする会社か、まとめて扱う会社かで総額が変わる
定額と、基本料+従量のどちらが安くなるかの境目の件数は、(定額の月額−基本料)÷1件あたりの単価で出せます。1件あたりの単価を公開していない会社も多いため、見積もりでは自事業所の件数を伝えて月額で答えてもらうほうが確実です。
判断の材料は手元の請求データです。直近6か月の明細書の枚数を医療保険と介護保険に分けて月ごとに並べ、その数字を各社の料金表に当てはめて年額で比べます。件数の数え方は、見積もりの段階で質問する項目です。
代行に出せるのは入力・作成・送信・返戻対応までです
出せる作業と出せない作業は、はっきり区別できます。表2は、公式ページの記載と法令・通知から、作業ごとに分けたものです。
作業 | 扱い | 根拠・公開例 |
|---|---|---|
予定と実績の入力、指示書と保険情報の入力・更新 | 出せる | ケアチームの委託範囲例に含まれる[9] |
介護給付費明細書と訪問看護療養費明細書の作成 | 出せる | |
提供実績のケアマネジャーへの送付 | 出せる | ケアチームの委託範囲例[9] |
オンライン請求の送信、返戻・査定への対応 | 出せる会社がある | レセケアは返戻・査定対応までを範囲に挙げる[10] |
計画書・報告書の郵送、指示書の依頼、利用者への請求書作成 | オプションの例 | ビジカンは料金を問い合わせとしている[7] |
訪問看護計画書・報告書の作成と主治医への提出 | 事業所に残る | 提出は訪問看護管理療養費の算定要件[2] |
加算の届出、利用者の同意の取得 | 事業所に残る | |
委託先の監督 | 事業所に残る | 個人情報保護法第25条[5] |
計画書と報告書が事業所に残るのには理由があります。訪問看護管理療養費は、訪問看護計画書と訪問看護報告書を主治医に提出していることが算定の条件です[2]。作成が止まれば、請求の段階で管理療養費の要件が欠けます。郵送の作業だけなら外に出せます。
請求そのものの責任も事業所にあります。送信を任せても変わりません。訪問看護療養費の請求は、指定訪問看護事業者が訪問看護ステーションごとに電子情報処理組織を使って行うと定められています[3]。代行会社が送信作業をしても、請求するのは事業所です。送信を任せるには手続きも要ります。支払基金は、事務代行者を介してオンライン請求する場合の届出の様式を公開しています[12]。介護保険の分は、代行会社が代理人として国保連に登録します[13]。
月末から翌月10日までの作業は、たとえば次の順に進みます。ケアチームの委託範囲例[9]と、法令が定める請求期限[3][4]から組み立てた流れです。
- 月末に、当月の訪問実績を確定する。記録と実績の突き合わせは訪問した看護師等が行う
- 翌月の初めに、介護保険の利用者の提供実績をケアマネジャーに送る
- 翌月の上旬に、医療保険と介護保険の明細書を作り、点検する
- 翌月10日までに、それぞれの審査支払機関へ送信する
- 返戻や査定の通知が届いたら、原因を確かめて再請求する
期限も委託によって変わりません。医療保険の訪問看護療養費も介護保険の介護給付費も、各月分を翌月10日までに請求します[3][4]。代行会社の作業日程が、自事業所の月初の締めと合っているかを確かめてください。ケアチームは、提供実績の送付を翌月2日・3日、明細書の作成を翌月7日・8日とする流れを例示しています[9]。
返戻への対応を範囲に含める場合は、直す人も決めておきます。原因が書類の不備なら事業所が、入力の誤りなら代行会社が直します。分担が決まっていれば、再請求を翌月の締めに間に合わせやすくなります。
外注できる範囲の一般論はレセプト代行とはにまとめています。
指示書と保険証の期限切れは、代行に出しても事業所で止めます
期限の切れた書類に基づく訪問は、見つかった時点で請求のやり直しになります。期限のある書類を表3に並べました。
代行会社は、入力された有効期間を見て、期限が近づいたら知らせられます。それでも新しい指示書を主治医からもらうのは事業所です。負担割合証の更新を利用者から受け取るのも事業所です。ここは委託できません。
期限の管理を代行の範囲に入れるなら、次のことを契約前に決めてください。
- 期限の何日前に、誰に、どの手段で知らせるか
- 期限が切れた書類で訪問していたと分かったとき、その月の請求をどう扱うか
- 新しい指示書や負担割合証の写しを、いつまでに代行会社へ渡すか
特別訪問看護指示書は、月の途中で交付されます。医療保険に切り替わる14日間の始まりと終わりが事務に伝わらなければ、代行会社は2枚の明細書を作れません。保険の切り分けは訪問看護レセプトの特記事項と別表7・8で扱いました。
契約前に確かめる8項目
見積もりを取る前に次の質問を質問票にまとめ、各社に同じものを渡すと、答えを横に並べて比べられます。
- 件数の数え方。 利用者数か明細書の枚数か。医療保険分と介護保険分を別々に数えるか
- 両保険と公費への対応。 ケアチームは自立支援医療や特定医療費、都道府県独自の医療費助成への対応を挙げている[9]
- 請求ソフトへの対応。 レセケアは対応ソフトをカイポケとカナミッククラウドサービスに限っている[10]。自事業所のソフトが対象外なら候補から外れる
- 返戻・査定への対応が料金に含まれるか。 ビジカンは契約前に発生した返戻も原因を調べて再請求するとしている[7]
- 期限管理の分担。 表3の書類を誰が見て、誰に知らせるか
- 契約期間と解約の条件。 最低1年、2か月前の連絡、3か月のお試しなど、会社ごとに違う[7][9][10]
- 開始できる月。 ケアチームは契約を結んだ月の翌提供月分の請求から対応するとしている[9]
- 個人情報の扱い。 事業所は委託先を監督する義務を負う[5]。プライバシーマークの有無や、書類の受け渡し方法を確認する
8項目のうち、金額に直結するのは1と4です。件数の数え方で月額が変わり、返戻対応が別料金なら追加の費用が出ます。5と6は、始めた後に困らないための項目です。
お試し期間のある会社なら、その期間に返戻の件数と締めの日程が守られたかを記録しておくと、本契約に進むかどうかを数字で決められます。
質問票には、自事業所の条件も書き添えます。
- 月ごとの明細書の枚数(医療保険と介護保険の別)
- 使っている請求ソフトの名前
- 公費を使う利用者の人数
- 直近3か月の返戻の件数
条件をそろえて渡すと、各社の答えを同じ表に並べられます。
まとめ
訪問看護の請求代行を比べる前に、直近6か月の明細書の枚数を医療保険と介護保険に分けて数えてください。その数字と8項目の質問票を各社に渡せば、同じ条件で見積もりが返ってきます。数えるときは、特別訪問看護指示書で医療保険に切り替わった利用者と、公費を使う利用者に印を付けておくと、各社が件数をどう数えるかの違いが見積もりの段階ではっきりします。
2026年9月時点のAX総合研究所の料金は、訪問看護レセプト代行:医療保険・介護保険まとめてフルプラン月額80,000円・点検のみ月額40,000円(税別・1拠点・件数によらず定額)です。見積もりの前に請求の現状を確かめたい場合の点検範囲は、訪問看護レセプト代行のページに載せています。自事業所の件数でどの料金体系が合うかの相談は、無料相談で受け付けています。
※料金は2026年9月26日時点で各社が公式ページに掲載している内容です。改定される場合があるため、契約前に各社へ確認してください。
参考文献・出典
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保発0305第19号) — 厚生労働省保険局(参照 2026-09-26)
- 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号) — 厚生労働省(参照 2026-09-26)
- 訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(平成4年厚生省令第5号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
- 介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令(平成12年厚生省令第20号) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
- 個人情報の保護に関する法律 第25条(委託先の監督) — e-Gov法令検索(デジタル庁)(参照 2026-09-26)
- 「介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて」の一部改正について(介護保険最新情報Vol.1390・令和7年6月4日 老介発0604第1号) — 厚生労働省老健局介護保険計画課(参照 2026-09-26)
- ビジカン 訪問看護ステーション専門のレセプト請求代行サービス — 株式会社キャンドゥ(参照 2026-09-26)
- 料金 — ケアチーム(株式会社雲紙舎)(参照 2026-09-26)
- レセプト代行サービス|ケアチーム訪問看護 — ケアチーム(株式会社雲紙舎)(参照 2026-09-26)
- レセケア【レセプト請求代行サービス】 — 株式会社訪看総合研究所(参照 2026-09-26)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号) — 厚生労働省 法令等データベース(参照 2026-09-26)
- 保険医療機関・保険薬局及び訪問看護に係るオンライン請求 — 社会保険診療報酬支払基金(参照 2026-09-26)
- 介護給付費等のインターネット請求について — 東京都国民健康保険団体連合会(参照 2026-09-26)


