年内に動く運送会社が最初に確かめる締切は、10月30日のデジタル化・AI導入補助金、11月27日の国交省の物流補助、11月30日の働き方改革推進支援助成金です(2026年10月10日時点)。運送業の補助金・助成金とは、トラック運送会社が機器・システム・研修にかけた費用の一部を、国や自治体があとから負担する制度の総称です。このうち国交省の補助だけは、導入と支払いを終えてから申請します。

2024年4月から、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用されました。臨時的な特別の事情があっても、時間外労働の上限は年960時間(休日労働を含まない)です[1]。

運送会社が2026年度に使える国の制度と締切

表1のうち2026年中に締切が来るのは3制度で、最も早いのは10月30日のデジタル化・AI導入補助金です。

表1 運送会社がDX・研修に使える主な国の制度(2026年10月10日時点[2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][14][17])

制度(所管)

主な対象経費

補助率・助成率

上限

申請の締切

デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(中小企業庁)

事務局に登録されたITツール、導入研修

2分の1以内(条件により3分の2以内)

5万〜450万円

6次締切 2026年10月30日17時

中小物流事業者の労働生産性向上事業(国交省)

配車計画・運行・労務管理システム、予約受付システム、人材育成(上限15万円・自主行動宣言等が条件)、テールゲートリフター等

システム・人材育成は2分の1、車両の設備は4分の1

業務効率化システムは1事業者250万円

2026年11月27日17時必着(先着順)

働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース(厚労省)

労務管理ソフト、デジタコ、研修、外部専門家のコンサルティング

4分の3(条件により5分の4)

成果目標ごとに25万〜250万円

2026年11月30日17時

事故防止対策支援推進事業 運行管理の高度化(国交省)

デジタコ、映像記録型ドラレコ、一体型

3分の1(条件により2分の1)

1事業者80万円(条件により120万円)

2027年1月29日17時

同 過労運転防止(国交省)

IT点呼・遠隔点呼・自動点呼の機器、疲労や睡眠状態の測定機器

2分の1

1事業者80万円

2027年1月29日17時

中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型(中小企業庁)

カタログに登録された製品

2分の1以下

従業員5人以下200万円〜21人以上1,000万円

随時受付

人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース(厚労省)

職務に直結するDX等の訓練(10時間以上)

経費75%、賃金1時間1,000円

1人30万円(10時間以上100時間未満)

訓練開始日の1か月前までに計画届

国交省の2事業は申請順に受け付け、申請額が予算に達すると受付期間の途中でも締め切ります[4][6]。申請前に、各事務局のサイトで受付状況を確認してください。働き方改革推進支援助成金も、11月30日より前に予告なく受付を締め切る場合があると案内しています[8]。

運送会社向けの燃料費の補助は、都道府県や市町村が独自に行っている例があります。時期も金額も自治体ごとに違うため、J-Net21の支援情報ヘッドラインで所在地を指定して探せます[15]。

申請の順番を間違えると、補助金は1円も出ません

表1の制度は、申請と導入の順番が3通りに分かれ、順番を取り違えると要件を満たしていても支給されません。

表2 申請と導入の順番(2026年10月10日時点[4][6][8][14][16])

順番

制度

先にやってはいけないこと

導入・支払いのあとに申請

事故防止対策支援推進事業、中小物流事業者の労働生産性向上事業

導入と支払いを終える前に申請すること

交付決定のあとに導入

デジタル化・AI導入補助金、働き方改革推進支援助成金

交付決定より前の契約・発注

計画届のあとに研修

人材開発支援助成金

訓練開始日の6か月前〜1か月前の期間外に計画届を出すこと

事故防止対策支援推進事業は、2026年4月1日以降に購入して車両に取り付け、申請の時点で支払いまで終えた機器が対象です[4]。中小物流事業者の労働生産性向上事業も、2026年2月7日から申請日までに導入と支払いを済ませた分が対象です[6]。

国交省の2事業は、ほかの国の補助金と同じ経費に重ねて使えません[4][6]。デジタコを入れるなら、どの制度で申請するかを先に1つに決めてください。

国交省の2事業でデジタコ・点呼機器・配車システムを導入する

国交省の2事業は、運送業の機器とシステムに対象を絞った制度です。どちらにも5両以上という車両数の条件があり、数え方は異なります。事故防止対策支援推進事業は機器を入れる営業所の届出車両数[4]、中小物流事業者の労働生産性向上事業は事業者全体の緑ナンバーのトラック(軽自動車・被けん引車を除く)で数えます[6]。

事故防止対策支援推進事業の運行管理の高度化の区分では、デジタコや映像記録型ドラレコを取得した費用の3分の1を補助します。保有車両が10両未満の一般貨物・特定貨物の事業者が、初めてデジタコを入れる車両は2分の1です[4]。デジタコの車載器は1台3万円、事務所用機器は1台10万円が上限で、1事業者の上限は80万円です[4]。通信機能付き一体型の車載器を含めて購入した場合は、1事業者の上限が120万円になります(2回以上申請する場合を除く)[4]。

過労運転防止の区分は、IT点呼・遠隔点呼・自動点呼の機器や、運転手の疲労・睡眠状態を測る機器が対象で、補助率は2分の1です[3]。

中小物流事業者の労働生産性向上事業では、業務効率化システムの例として、配車計画システムや、自動点呼を含む運行・労務管理システムが挙がっています。補助率は2分の1、上限は1事業者250万円です[6]。荷主や倉庫と連携して入れる予約受付システムなどは、上限が500万円になります[6]。

注意点は費用の範囲です。公募要領(2次公募・2026年9月24日版)は、次の費用を補助の対象外としています[6]。

  • 消費税
  • 月額利用料(利用開始時に支払う初期費用を除く)
  • 通信料・プロバイダー利用料(システム利用料に含まれる場合を除く)
  • パソコン・タブレット・スマートフォン、自動点呼で使う体温計・血圧計・アルコールチェッカーなどの汎用機器
  • ロボット・AGVなど、機械を用いた自動化の費用

クラウドの配車システムを月額で契約すると、補助されるのは初期費用の分だけです。

働き方改革推進支援助成金は、研修とコンサルティングも対象です

働き方改革推進支援助成金の業種別課題対応コース(運送業等)は、自動車運転の業務に就く労働者を雇う中小企業が対象です[7]。交付申請の締切は2026年11月30日17時で、事業は2027年1月31日までに終える必要があります[8]。

この助成金は、成果目標を1つ以上選び、その達成に向けた改善事業の経費を助成します。改善事業は7つあり、労務管理担当者や労働者への研修(業務研修を含む)、外部専門家のコンサルティング、労務管理用ソフトやデジタル式運行記録計の導入・更新などが含まれます[8]。

助成率は4分の3です。常時使用する労働者が30人以下で、機器・設備の導入費が30万円を超える場合は5分の4になります[8]。上限は成果目標ごとに決まり、所定外労働時間をいずれか1か月で前年同月より1人あたり10時間以上減らす目標なら100万円、11時間以上の勤務間インターバルを新たに入れる目標なら170万円です[8]。乗用車やパソコン、タブレット、スマートフォンは、原則として対象外です[7]。

当社は、2024年問題への対応を急ぐ運送会社なら、まずこの助成金を確かめることをおすすめします。デジタコの導入と担当者への研修を、1つの計画に入れられるからです。ただし、助成額は成果目標の達成状況に応じて決まります[8]。申請前に、所在地の働き方改革推進支援センターか労働局に相談してください[8]。

デジタル化・AI導入補助金と省力化投資補助金は、何を買うかで選ぶ

ソフトウェアならデジタル化・AI導入補助金、機械と一体の設備なら省力化投資補助金です。運送会社の場合、配車や請求のソフトは前者、倉庫の荷役機器は後者に入ります。

デジタル化・AI導入補助金の通常枠で、いま申請できる6次締切は2026年10月30日17時で、交付決定は12月10日の予定です[9]。7次以降の締切日は、申請前に事業スケジュールのページで確かめてください[9]。150万円以上を申請する場合の賃上げ要件は6次までもあり[19]、10月9日に公表された第7回公募以降の公募要領では、1年後に1人当たり給与支給総額を3%以上引き上げる要件が加わりました。IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は3.5%以上です[18]。制度の全体はデジタル化・AI導入補助金2026の要点に、支援事業者の選び方はIT導入支援事業者の記事にまとめています。

省力化投資補助金のカタログ注文型は、登録された製品の中から選ぶ制度です。2026年3月19日以降の申請の上限と補助率は表1のとおりで、応募・交付申請は随時受け付けています[11][17]。一般型は第8回の締切が10月16日で、第9回の日程は2026年10月10日時点で公表されていません[12]。AIがどちらに当たるかの判断の目安は省力化投資補助金でAIは対象かにあります。

配車システムは、国交省の補助とデジタル化・AI導入補助金のどちらでも候補になり、申請の順番は表2のとおり逆です。当社は、すでに導入済みか、11月27日までに支払いと書類の提出を終えられるなら国交省の補助を使う分け方がよいと考えます。10月30日の申請に間に合わない場合は、デジタル化・AI導入補助金の7次以降を待ちます。7次で150万円以上を申請するなら、1年後に3%の賃上げを計画に入れられるかを先に確かめてください(2026年10月時点)[6][18]。

AI研修は人材開発支援助成金の対象になり得ます

担当業務でAIを使う技能を学ぶ研修は、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースの対象になり得ます。中小企業は経費の75%と、受講中の賃金1時間あたり1,000円が助成されます[14]。訓練時間は10時間以上が条件で、経費の上限は1人30万円です(10時間以上100時間未満の場合)[14]。

2026年8月3日からは、特定の業務に結びつかない、汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ訓練は助成の対象外です[13]。運送会社なら「配車担当が、配車表の作成に生成AIを使う」というように職務と結びつけて研修を組み、その職務を担う社員を受講者に選びます[13]。研修の時間に実際の配車表を完成させると、通常の事業活動として対象外になるおそれがあります[14]。

AX総合研究所のAI研修は経営者・幹部向けの対面研修で、配車や事務を担う社員も同席できます。料金は2026年10月時点で受講者1人20万円(税別)、標準は2時間×5回・計10時間で、助成金を使うかどうかで変わりません。助成金を使う研修は、申請用のカリキュラム(各回2時間10分・計10時間50分)で行います。表3は、雇用保険に入っている社員1人が受講した場合の計算例です。

表3 AI研修を社員1人が受講した場合の計算例(2026年10月時点の助成率から計算[14])

項目

金額

受講料(税込)

220,000円

経費助成(75%)が支給された場合

−165,000円

経費助成が支給された場合の差額

55,000円

賃金助成(所定労働時間内の実訓練1時間あたり)

1,000円

助成の対象は雇用保険の被保険者で、役員は通常対象になりません。賃金助成は、所定労働時間内に受けた実訓練時間で計算します[14]。消費税も経費助成の対象経費です[14]。助成金はあとから支給されるため、受講料はいったん全額を支払います[14]。支給を決めるのは労働局で、受講者の立場や計画の内容によって結果は変わります。

研修を12月上旬に始めるなら、計画届は11月上旬までに出します[14]。計画届などの申請書類は、貴社か顧問の社会保険労務士が作成・提出します。国の制度ごとの違いはリスキリング助成金|中小企業が使える国と都の制度に、改正の詳しい中身はAI研修の助成金|2026年8月改正後の要件にまとめています。

まとめ

どの制度を使うにしても、先に決めるのは「どの業務の時間を減らすか」です。機器とシステムは補助金で揃えられても、使い方が社内に定着しなければ労働時間は減りません。研修の内容が助成金の要件(職務との結びつき・10時間以上)に沿うかを確かめたい方は、無料相談でご相談ください。研修の詳細はAI研修、システム導入はAI導入コンサルティングをご覧ください。

※本記事の金額・日程・要件は2026年10月10日時点の公表情報に基づきます。公募要領は年度の途中でも更新されるため、申請前に各事務局・労働局の最新の案内で確認してください。個別の採択や支給を約束するものではありません。

参考文献・出典

  1. 運輸業の「働き方改革」について — 厚生労働省 茨城労働局(参照 2026-10-10)
  2. 事故防止対策支援推進事業に係る補助金の申請受付を開始 — 国土交通省(令和8年7月28日・参照 2026-10-10)
  3. 令和8年度 自動車運送事業者の安全対策補助金 事業概要 — 令和8年度被害者保護増進等事業費補助金事務局(参照 2026-10-10)
  4. 運行管理の高度化に対する支援 公募要領 — 令和8年度被害者保護増進等事業費補助金事務局(参照 2026-10-10)
  5. 「中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)」の2次公募を実施します — 国土交通省(令和8年9月14日・参照 2026-10-10)
  6. 中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)公募要領【2次公募】令和8年9月24日版 — テールゲートリフター等導入支援事務局(株式会社日本能率協会コンサルティング)(参照 2026-10-10)
  7. 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース) — 厚生労働省(参照 2026-10-10)
  8. 令和8年度 働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース(運送業等)のご案内 — 厚生労働省(参照 2026-10-10)
  9. 事業スケジュール|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-10-10)
  10. 通常枠|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-10-10)
  11. カタログ注文型とは|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-10-10)
  12. スケジュール(一般型)|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-10-10)
  13. 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について — 厚生労働省・都道府県労働局(参照 2026-10-10)
  14. 人材開発支援助成金 支給要領(事業展開等リスキリング支援コース・令和8年8月3日版) — 厚生労働省(参照 2026-10-10)
  15. 支援情報ヘッドライン — 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21(参照 2026-10-10)
  16. 交付決定後に必要な手続き|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-10-10)
  17. スケジュール(カタログ注文型)|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業省力化投資補助事業事務局(参照 2026-10-10)
  18. デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)第7回公募~ — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(2026年10月9日・参照 2026-10-10)
  19. デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)第1回公募~第6回公募 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-10-10)