運送業のAI点呼とは顔認証やアルコール検知の自動判定を使い、運行管理者が立ち会わずに点呼を進める機器・システムの通称で、法令上は遠隔点呼・業務前自動点呼・業務後自動点呼・IT点呼のどれかに当たります(2026年10月時点)[1][7]。使える場面は、国土交通省(国交省)の告示などが定めるどの方式に当たるかで決まります[1]。

早朝4時の出庫と深夜の帰庫のたびに、運行管理者か補助者が立ち会っていませんか。2025年4月末の告示改正で業務前の点呼も自動化できるようになり、選べる方式は増えました[3]。ただし、機器を買っても運行管理者は要ります。

AI点呼は法令上どの点呼に当たるか

「AI点呼」は法令上の区分ではなく、点呼告示が定める遠隔点呼・業務前自動点呼・業務後自動点呼か、解釈通達が定めるIT点呼のどれかとして扱われます[7]。点呼とは、運転者が乗務する前と後に、酒気帯びの有無や疾病・疲労・睡眠不足の状態を運行管理者等が確かめる手続きで、原則は対面です[1][7]。例外として「対面による点呼と同等の効果を有するもの」を国土交通大臣が定めたのが、令和5年国土交通省告示第266号(点呼告示)です[2]。

点呼告示が定める方式は、遠隔点呼・業務前自動点呼・業務後自動点呼の3つです[7]。このほか、「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」(解釈通達)は、Gマーク(安全性優良事業所)の営業所に、IT点呼という別の方法を認めています。Gマークがなくても、開設3年以上などの条件を満たせば、営業所と自社の車庫の間に限って行えます[7]。一人で事業を行う場合の自己確認と、遠隔地で業務を始める・終えるときの電話点呼もありますが、どちらも点呼の自動化には当たりません[7]。

「AI点呼」「ロボット点呼」は、機器メーカーが製品の特徴を伝えるための呼び名で、制度の名前ではありません。認定機器の一覧にも「AI点呼システム」という製品名が載っています[4]。

国土交通省の自動点呼機器の認定は、告示が定める機能を審査するもので、アルコール検知器や体温計・血圧計の本体と測定精度は対象外です。測定精度を国が保証しているわけではありません[6]。機器を正常に作動する状態に保つのは、事業者の務めです[1]。

表1 「AI点呼」と呼ばれる機能と、告示上の扱い(2026年10月時点)

製品がうたう機能

告示・通達上の扱い

補足

顔認証・静脈認証による本人確認

遠隔点呼・自動点呼とも、生体認証等による識別が必須[1]

ID・パスワードや免許証だけの認証は認められない[1]

アルコール検知の自動判定

自動点呼では検知時に運行管理者へ通知し、点呼を中止する機能が必須[1][6]

再開はできない。運行管理者が安全と判断した場合に限り、対面点呼などに切り替えるか、点呼予定を入力し直してやり直す[6]

体温・血圧と平時の値との比較

業務前自動点呼で必須。差異が大きいと点呼を中断[1]

平時の値は運転者ごとに事前登録が必要[1]

対話型ロボットの案内

告示上の要件ではない

操作を案内する画面・音声の役割

点呼記録の自動保存

電磁的記録で1年保存、CSV出力が必須[1]

修正前の情報を残し、消去できない仕組みが必要[1]

AI点呼に使える点呼の方式は4つ(要件・機器・届出の比較)

2026年10月時点で対面点呼に代えられる方式は、IT点呼・遠隔点呼・業務後自動点呼・業務前自動点呼の4つで、認定機器の要否・立ち会う人・届出の期限が異なります[1][7]。

表2 点呼の方式ごとの要件・機器・手続き(2026年10月時点)

方式

根拠

主な要件

機器

手続き

対面点呼

輸送安全規則

運行管理者等が対面で実施

アルコール検知器

なし

IT点呼

解釈通達[7]

Gマーク営業所(営業所と自社の車庫の間は、開設3年以上などの条件を満たす営業所も可)。営業所間は1営業日のうち連続16時間以内

IT点呼機器

運輸支局等へ10日前までに報告[7]

遠隔点呼

点呼告示 第2条第1号

生体認証、全身を映すカメラ、通信環境、情報共有[1]

要件を満たす機器(認定制度なし)

10日前までに届出。他社と行う場合は2か月前までに許可申請[1]

業務後自動点呼

点呼告示 第2条第3号

国交省の認定機器、点呼予定の事前入力[1]

認定機器34機器(2026年10月7日時点。うち16機器は営業所又は車庫に限る)[5]

10日前までに届出[1]

業務前自動点呼

点呼告示 第2条第2号

認定機器、体温・血圧の平時値の登録、異常時の対応体制[1]

認定機器28機器(2026年9月28日時点。うち14機器は営業所又は車庫に限る)[4]

10日前までに届出[1]

遠隔点呼はIT点呼と違ってGマークを要件にしていません[1][7]。2024年4月からは、営業所や車庫のほか、車内や宿泊施設、待合所でも受けられるようになりました[3]。2025年4月末には、別の会社の運行管理者と行う事業者間遠隔点呼も始まっています[3]。

2026年6月26日に公布・施行された令和8年国土交通省告示第792号は、点呼告示に第4条第2項を加えました[8]。運転者が所属する営業所以外の運行管理者等が、遠隔点呼機器を用い、映像と音声による確認の機能を使わずに対面で行う点呼は、遠隔点呼とみなされます[8]。遠隔点呼機器を通じて運転者の情報を共有できることが前提で、事業者間の遠隔点呼にも適用されます[9]。

国交省の資料では、2025年12月末までに、同一事業者内の遠隔点呼の届出が延べ7,372件、業務前自動点呼が延べ3,306件ありました。バス・タクシー・軽貨物を含む数で、トラック(軽を除く)に限ると5,111件と2,950件です[3]。2025年4月末より前に書かれた解説には「業務前は自動化できない」とあるものが残っているため、日付を確かめて読む必要があります。

自動点呼でも、異常時の判断は運行管理者が行います

自動点呼を入れても、酒気帯びや体温・血圧の異常、機器の故障が出たときに判断するのは運行管理者で、国交省は事業者に対応体制の整備を求めています[1]。パンフレットが求める体制は次の5つです[1]。

  • 運転者ごとの点呼予定と、責任を持つ運行管理者の氏名を事前にシステムへ入力すること
  • 酒気帯びや健康状態の異常が出たとき、運行管理者が対応できること
  • 予定時刻を過ぎても点呼が終わらないとき、通知を受けて対応できること
  • 機器が故障したとき、同じ営業所の運行管理者等が対面点呼などに切り替えられること
  • 営業所の点呼機器が持ち出されないよう措置をとること(パンフレットはワイヤーロックでの固定を例に挙げています)

業務前の自動点呼では、体温や血圧が平時の値から外れると点呼が中断します。再開できるのは、運行管理者が安全に運行できると判断した場合だけです[1][6]。アルコールが検知されたときや日常点検で異常が出たときは中止となり、その点呼は再開できません[6]。

自動点呼を入れても、深夜や早朝に「呼ばれたらすぐ判断できる人」は必要です。当社は機器を選ぶ前に、異常時に判断する担当者を決めておくことを勧めます。たとえば、夜間に携帯電話で通知を受け、ビデオ通話で運転者の様子を見て判断する担当を、曜日ごとに割り当てる方法です。パンフレットも異常時に対面やビデオ通話で状況を確かめられるようにしておくことを例に挙げています[1]。

自動点呼を始める前に、運行管理規程の改定と、運転者の同意の取得が必要です[1]。生体認証の情報や体温・血圧の測定結果を扱うためです[1]。

費用の目安と、使える補助(2026年10月時点)

公開価格のある自動点呼システムは、初期費用10万〜20万円、月額1.1万〜3.8万円(拠点または台あたり・税抜・2026年10月時点)です[14][15]。周辺機器と通信環境の費用は別にかかり、ほかの認定機器の多くは要見積りです。見積りは台数・拠点数・検知器の有無・契約年数をそろえて取ります。

表3 公開価格のある点呼システムの料金(2026年10月時点・税抜)

製品

会社

初期費用

月額

別途必要な機器

IT点呼キーパー

テレニシ株式会社

10万円

IT点呼1万円、業務後自動点呼つき1.1万円、遠隔点呼1.2万円、業務前・業務後の自動点呼つき1.6万円(いずれも/拠点)[14]

対応するアルコール検知器。自動点呼では血圧計・体温計も[14]

SAN点呼(ロボット型・業務前後の自動点呼)

中央矢崎サービス株式会社

20万円(2027年3月31日までの契約は15万円)

3.8万円/台[15]

静脈センサー・IC免許証リーダー、アルコール検知器、血圧計・体温計、制御用PC[15]

中央矢崎サービス株式会社のロボット型「SAN点呼」は、2027年3月31日までの契約なら初期費用が15万円になり、静脈センサーとIC免許証リーダー(通常は計4.55万円)も無償になります。アルコール検知器は購入のほか月額レンタルも選べます[15]。

2026年10月24日時点で申請できる補助は、国交省の中小物流事業者の労働生産性向上事業(11月27日17時まで)と全日本トラック協会の助成の2つです[13][17]。

表4 点呼機器の導入に使える補助・助成(2026年10月時点)

制度

対象

補助の額

期限・条件

受付状況(2026年10月24日時点)

国交省 事故防止対策支援推進事業(令和8年度被害者保護増進等事業費補助金)過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援

中小の一般・特定貨物運送事業者など。導入営業所の車両5両以上、過去3年に行政処分なし[11]

機器取得費の1/2、1事業者80万円まで[10][11]

購入・支払いを終えてから申請[11]

2026年10月22日に予算上限に達し受付終了。2026年度の新規申請はできない[12]

国交省 中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)2次公募 業務効率化事業

中小トラック運送事業者など。自動点呼を含む運行・労務管理システム[16][17]

1/2、1事業者250万円まで。月額利用料(初期費用を除く)や体温計・血圧計・アルコールチェッカーなどは対象外[17]

2026年2月7日以降の導入分。期限までに支払いと書類の提出を終える(先着順)。交付決定を受けた分だけが対象[17]

受付中(11月27日17時まで)[16][17]

全日本トラック協会 自動点呼機器導入促進助成事業

都道府県トラック協会の会員で中小の事業者[13]

1台10万円まで。Gマーク事業所があれば2台20万円まで[13]

2026年4月1日以降の契約・利用開始。受付印のある届出書の写しが必要[13]

受付中[13]

過労運転防止の補助は、2026年10月22日に申請額が予算に達し、公募要領の期限(2027年1月29日)より前に受付を終えました[11][12]。この補助は購入・支払いを終えてから申請する仕組みのため、来年度の公募を待つ場合は、要領が出る前に買わないでください。対象は選定機器の取得費で、パソコンや導入後のメンテナンス費は外れます[11]。リースは、リース事業者が申請し、原則5年以上の契約で補助金をリース料に反映させる形で対象になります。月額のシステム利用料は取得費に当たらないため対象外です[11]。同じ機器に国の2制度を重ねることもできません[11]。全日本トラック協会の助成と併用できるかは、所属する都道府県トラック協会に確認してください。

運送業で使える補助金を、点呼機器以外も含めて並べた記事は運送業の補助金・助成金です。

中小の運送会社は、どの順番で入れるか

AX総合研究所は業務後の自動点呼から始め、業務前、営業所間の遠隔点呼へと広げる順番を提案します。業務後の自動点呼は、中止の条件がアルコール検知だけです。体温・血圧の平時値の登録も要りません[1][6]。早朝の出庫が一番の負担なら、平時値の登録と異常時の担当を先に決めたうえで、業務前から始める選択もあります。

導入の手順は4つで、最初の1手は点呼の時刻と担当者を2週間記録することです。

  1. 点呼の時刻と担当者を2週間記録します。 早朝・深夜・休日の点呼が何件あり、誰が何時間拘束されているかを数えます。導入の効果はこの拘束時間で測ります
  2. 業務後の自動点呼を1営業所で始めます。 帰庫が遅い便から切り替えると、夜間の待機が減ったかどうかを確かめやすくなります
  3. 業務前の自動点呼に広げます。 運転者ごとの体温・血圧の平時値を登録してから始めます[1]。中断したときに判断する担当を、曜日ごとに決めておきます
  4. 営業所が複数あれば遠隔点呼を検討します。 夜間だけ点呼を1か所に集める使い方です

仮に車両15台・運行管理者2名の営業所なら、AX総合研究所は業務後の自動点呼で深夜の帰庫待ちをなくし、3か月後に業務前へ広げる計画を勧めます。届出は10日前まででも、機器の納品と運行管理規程の改定、運転者への説明まで含めて、当社は1か月ほど見込んでおくことを勧めます。

点呼記録(CSV)を生成AIで集計する方法

自動点呼機器が出力する点呼記録のCSVを月1回生成AIで集計し、運転者ごとの中断・中止の回数や血圧が平時から外れた日を表にする使い方です[1]。点呼の可否そのものを生成AIに判断させる使い方は勧めません。

生成AIに集計させる項目は、運転者ごとの中断・中止の回数、予定を過ぎた点呼の件数、血圧が平時から外れた日などです。「先月より中断が増えた運転者」を表にさせ、運行管理者が確かめて面談につなげます。数字の拾い間違いは起こるため、気になった行は元のCSVで見直します。確認の組み方はハルシネーション対策に、任せる範囲の決め方はAIに任せてはいけない業務の見分け方にまとめました。

点呼記録には健康情報が含まれます。生成AIで集計するなら、点呼記録の利用目的に「生成AIを使った集計」を加えて運転者に示し、同意を得てください。そのうえで氏名を社員番号に置き換え、入力した内容が学習に使われない法人向けの契約を選んでください。

配車や日報、受注の事務など、点呼以外の業務でのAI活用は運送業のAI活用にまとめています。

まとめ

AI点呼を検討するときは、製品名ではなく、告示上どの方式に当たるかで比べます。当社の提案は業務後の自動点呼から入り、異常時に判断する担当を決めてから業務前へ広げることです。国交省の点呼機器の補助は2026年10月22日に受付を終えたため、2026年度に使えるのは全日本トラック協会の助成と、11月27日締切のシステム補助です。

最初の一歩は、自社の点呼に早朝・深夜・休日の分が何件あるかを2週間数えることです。その数字をもとに方式と運用体制を相談したい方はAI導入コンサルティングの内容をご覧のうえ、無料相談からお問い合わせください。

参考文献・出典

  1. 遠隔点呼・自動点呼 解説パンフレット(令和7年11月発行) — 国土交通省(参照 2026-10-10)
  2. 対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示(改正後全文・令和8年6月) — 国土交通省(参照 2026-10-24)
  3. 令和8年度以降の取組について(令和7年度第3回運行管理高度化ワーキンググループ資料4) — 国土交通省(参照 2026-10-24)
  4. 認定を受けた業務前自動点呼機器一覧(令和8年9月28日時点) — 国土交通省(参照 2026-10-24)
  5. 認定を受けた業務後自動点呼機器一覧(令和8年10月7日時点) — 国土交通省(参照 2026-10-24)
  6. 業務前自動点呼機器及び業務後自動点呼機器の要件 よくある質問とその回答(FAQ) — 国土交通省(参照 2026-10-10)
  7. 貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について(最終改正 令和8年6月26日) — 国土交通省(参照 2026-10-24)
  8. 対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示(令和8年国土交通省告示第792号) — 国土交通省(参照 2026-10-10)
  9. 対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示について(令和8年6月) — 国土交通省 物流・自動車局(北海道運輸局掲載)(参照 2026-10-10)
  10. 事故防止対策支援推進事業に係る補助金の申請受付を開始(令和8年7月28日) — 国土交通省(参照 2026-10-10)
  11. 令和8年度 過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援 公募要領 — 令和8年度被害者保護増進等事業費補助金事務局(国土交通省掲載)(参照 2026-10-24)
  12. 令和8年度被害者保護増進等事業費補助金 申請ポータルサイト(2026年10月22日「3つの支援策 交付申請受付終了のお知らせ」) — 令和8年度被害者保護増進等事業費補助金事務局(参照 2026-10-24)
  13. 令和8年度 自動点呼機器導入促進助成事業について — 公益社団法人全日本トラック協会(参照 2026-10-10)
  14. 料金プラン・シミュレーション|IT点呼キーパー — テレニシ株式会社(参照 2026-10-24)
  15. 自動点呼システム SAN点呼 — 中央矢崎サービス株式会社(参照 2026-10-24)
  16. 「中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)」の2次公募を実施します — 国土交通省(令和8年9月14日・参照 2026-10-10)
  17. 中小物流事業者の労働生産性向上事業 (2)業務効率化事業 個別説明会資料 — テールゲートリフター等導入支援事務局(株式会社日本能率協会コンサルティング)(参照 2026-10-10)

※制度・機器の認定・料金・補助の内容は2026年10月24日時点の公開資料に基づきます。告示や通達、補助の受付状況は変わることがあるため、導入や申請の前に国土交通省・管轄の運輸支局・各事務局と機器メーカーで最新の内容をご確認ください。