東京都のAI導入で使える補助金は、2026年9月14日時点で2系統あります。制度の名前が年度ごとに変わるため、まず現在の名称を確認します。

都の制度は「募集していない期間」が長いのが特徴です。 通年で受け付けているものと、年に数回だけ窓口が開くものがあります。いま動けるものから見ます。

いま申請できるのは2系統です

2026年9月14日時点の状況を整理します。

表1 東京都の主な助成制度の状況(2026年9月14日時点)

制度

用途

状況

DXリスキリング助成金

研修費

受付中(令和9年2月28日まで)[1]

事業外スキルアップ助成金

研修費

受付中(令和9年2月28日まで)[3]

躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(第14回)

設備・ソフトウェア

2026年10月23日から受付[2]

中小企業デジタル導入促進補助事業

ソフトウェア・クラウド

第1回終了。第2回は9月頃予定[4]

DX推進トータルサポート事業(AI活用コース)

AI導入の伴走と助成

アドバイザー募集は終了[5]

通年で受け付けているのは研修費の2つだけです。 設備系は窓口が開く時期が決まっています。この違いを知らないと、思い立ったときに使える制度が無い、という事態になります。

研修費に使う:DXリスキリング助成金

いちばん使いやすいのがこれです。東京しごと財団が実施しています。

助成率は助成対象経費の4分の3で、上限は助成対象受講者1人1研修あたり75,000円です[1]。1申請企業等あたりの上限は100万円で、上限額に達するまで複数回の申請ができます[1]。

要件は「都内に本社又は主たる事業所があること」です[1]。交付申請書の受付期間は令和8年3月1日から令和9年2月28日までで[1]、提出は研修開始予定日の1か月前までです[6]。

この「1か月前まで」が実務上いちばん大事な期限です。 研修の日程が決まってから申請しようとすると間に合いません。研修を探す段階で、開始日から1か月を逆算してください。

上限100万円という金額は、中小企業にとって十分な規模です[1]。1人1研修あたり75,000円の上限があるため[1]、単価の高い研修を1人に受けさせるより、複数名に受けさせる設計のほうが枠を使い切れます。受講者の人選を先に決めてから、研修を探してください。

対象は「DXに関する専門的な知識・技能の習得と向上を目的とする研修又は専門的な資格を取得するための研修」です[6]。生成AIの研修が該当するかは、研修の内容によります。申請前に財団へ確認してください。

国の人材開発支援助成金とは制度が別です。要件も窓口も違うため、片方の判断をもう片方に持ち込まないでください。同じ研修について両方に申請して、両方で交付決定を受けた場合の扱いも、それぞれの規定で決まります。

申請は紙またはJグランツの電子申請で、Jグランツを使うにはGビズIDプライムが必要です[6]。

もう1つ、事業外スキルアップ助成金もあります。こちらは教育機関が計画した既存の公開研修が対象で、3時間以上10時間未満のものに限られます[3]。助成率は小規模企業者で3分の2、中小企業等で2分の1、上限は1人1研修あたり25,000円、1申請企業あたり150万円です[3]。

設備とソフトウェアに使う:躍進的な事業推進のための設備投資支援事業

金額の規模が大きいのがこちらです。第14回の募集が2026年9月1日に始まりました[2]。

表2 第14回の概要(2026年9月14日時点[2][7])

項目

内容

申請受付

2026年10月23日(金)9時〜11月24日(火)13時

助成額

100万〜1億円(アップグレード促進は1億〜2億円)

助成率

競争力強化は2分の1以内(小規模企業者3分の2以内)

対象経費

機械装置、器具備品、ソフトウェアの導入経費

要件

都内に本店登記、2年以上継続して事業を営んでいる中小企業

対象経費にソフトウェアが入っている点が要点です[2]。ゼロエミッション化や賃上げの枠では助成率が4分の3以内、小規模企業者の賃上げ枠では5分の4以内になります[2]。

ただし下限があります。 助成額の下限は100万円、対象となる機械装置等は1基あたり50万円(税抜)以上です[7]。従業員5〜100名の会社では、この下限が実際の壁になります。小さく始めたい場合は向きません。

助成率が2分の1なら、助成額100万円に対して事業費は200万円です(表2の条件[2][7]からの計算)。自己負担も100万円出ます。AIツールの導入だけでこの規模になる会社は多くありません。製造設備や検査装置と組み合わせる計画であれば、金額が届きます。

日程も長くなります。一次審査(書類)が12月中旬から2月下旬、現地調査、二次審査(面接)を経て、交付決定は3月中旬、事業開始は4月1日以降です[2]。申請から交付決定まで約5か月かかります。 年度をまたぐ計画として組んでください。

なお第13回は令和8年7月23日で受付を終了しています[8]。次に窓口が開くのは第14回です。

9月に受付予定だった枠:中小企業デジタル導入促進補助事業

規模の小さい会社に合うのがこれです。ただし2026年9月14日時点で第2回の日程が公表されていません。

助成率は2分の1以内、小規模企業者または環境負荷軽減ツールの導入では3分の2以内です[4]。助成限度額は150万円、下限は5万円です[4]。

対象は「新たに導入するデジタルツール(ソフトウェア、クラウドサービス)、及び当該ソフトウェアと連携して動作する専用の機器」です[4]。クラウドサービスが対象に入っている点が、設備投資支援事業との違いです。

対象外も明記されています。PC、タブレット、表計算ソフト等の汎用機器は含まれません[9]。申請はJグランツで、GビズIDプライムが必要です[9]。

第1回の受付は2026年6月11日から7月3日で終了しました[9]。第2回について、都は「9月頃の予定」としていましたが[9]、公社のページでは「令和8年9月頃に受付予定」の表示のままです[4]。日程が出たらすぐ動けるよう、GビズIDプライムだけ先に取得しておくことをおすすめします。

AI活用に特化した枠は、いま募集していません

名前にAIが付いた制度もあります。ただし入口が閉じています。

東京都は2026年3月30日に、令和8年度の新規事業として「DX推進トータルサポート事業」を発表しました[5]。4つのコースがあり、そのうちAI活用コースは10社が対象、助成限度額は2,000万円から3,000万円、助成率は3分の2以内(賃上げ枠は4分の3以内)、助成期間は2年間です[5]。

この事業は、アドバイザーの支援を受けたうえで提案書に基づいて申請する形です。 アドバイザー支援企業の募集期間は2026年4月6日から5月8日で、すでに終了しています[5]。助成金部分の募集開始時期は、2026年9月14日時点で公表されていません。

生産性向上コースについては、第2回の募集が2026年10月頃に予定されています[10]。こちらの助成上限は1,500万円(助成率2分の1、小規模企業者3分の2)、大幅賃上げ枠では2,000万円です[10]。

国の補助金との併用

都と国の両方を使えるか、という質問が多くあります。答えは条件付きです。

公社のQ&Aは次のように書いています[11]。

同一の内容(経費)で、国・都道府県・区市町村等の他の助成金・補助金等に併願申請を行い、本助成事業と両方で交付決定を受けた場合は、いずれか一方の助成金・補助金を取下げていただきます。

さらに厳しい条件もあります。「同一の内容(経費)で、公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する他の助成事業に併願申請はできかねます」[11]。公社の助成事業どうしは、同一経費での併願申請そのものができません。

読み替えるとこうなります。同一の経費では一方だけ。別の経費であれば、国と都の両方を使えます。会計ソフトを国の補助金で、検査装置を都の助成金で、という組み合わせは成り立ちます。

国の制度では、デジタル化・AI導入補助金2026の締切が2026年9月29日17時です[12]。制度の中身はデジタル化・AI導入補助金2026の要点にまとめました。研修費についてはAI研修の助成金もあわせてご覧ください。

採択率は公表されていません

社内で稟議を通すときに聞かれる数字です。先に伝えておきます。

公社は採択率について「採択率は設定しておりません」と回答しています[11]。躍進的な事業推進のための設備投資支援事業では採択件数の公表はありますが、申請件数が公表されないため、率は計算できません。

「何割くらい通りますか」という問いには、公表値では答えられません。 通る前提で設備投資の計画を立てず、助成が出なくても実行する価値がある投資から選んでください。

東京都以外の自治体でも、同様の制度があります。探し方は2つです。中小企業庁のミラサポplus 制度ナビでは、府省庁・都道府県・市区町村など機関別に検索できます[13]。もう1つは、自治体のホームページを直接見ることです。すべての支援策が横断検索に登録されているわけではありません[13]。

まとめ

いま動くなら順番は2つです。研修費を使うなら、DXリスキリング助成金の「研修開始日の1か月前」から逆算してください。設備やソフトウェアなら、10月23日の受付開始に向けて見積もりを揃えてください。

どちらの場合も、GビズIDプライムの取得を先に済ませてください。発行に日数がかかるため、ここで止まる会社が多くあります。何にAIを使うかから相談したい場合はAI導入コンサルティングへ、研修の設計はAI研修のページにあります。現在地の確認は1分でわかるAI活用度診断、個別の相談は無料相談へどうぞ。

※制度の名称・金額・日程は2026年9月14日時点で公表されているものです。都の制度は年度ごとに名称と内容が変わるため、申請前に各実施機関の公式ページでご確認ください。

参考文献・出典

  1. 令和8年度DXリスキリング助成金 — 東京しごと財団(参照 2026-09-14)
  2. 中小企業者向け「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」募集開始 — 東京都 産業労働局(令和8年9月1日)(参照 2026-09-14)
  3. 令和8年度事業外スキルアップ助成金 — 東京しごと財団(参照 2026-09-14)
  4. 中小企業デジタル導入促進補助事業 — 公益財団法人東京都中小企業振興公社(参照 2026-09-14)
  5. 都内中小企業のDX推進とAI活用支援 — 東京都 産業労働局(令和8年3月30日)(参照 2026-09-14)
  6. 令和8年度DXリスキリング助成金 募集要項 — 東京しごと財団(参照 2026-09-14)
  7. 第14回(令和8年度第3回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 — 公益財団法人東京都中小企業振興公社(参照 2026-09-14)
  8. 第13回(令和8年度第2回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 — 公益財団法人東京都中小企業振興公社(参照 2026-09-14)
  9. 6月11日から「中小企業デジタル導入促進補助」募集開始 — 東京都 産業労働局(令和8年5月20日)(参照 2026-09-14)
  10. 令和8年度都内中小企業のDX推進と生産性向上を支援 — 東京都 産業労働局(令和8年5月28日)(参照 2026-09-14)
  11. 中小企業デジタル導入促進補助事業 よくある質問 — 公益財団法人東京都中小企業振興公社(参照 2026-09-14)
  12. 事業スケジュール|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照 2026-09-14)
  13. 制度ナビ — 中小企業庁(ミラサポplus)(参照 2026-09-14)