ChatGPTのプロンプト例を探している方の多くは、うまい言い回しを探しています。順番が逆です。出力の質を決めるのは言い回しより材料で、次に効くのが形式の指定です。ビジネスで使う限り、この2つを押さえれば8割は片付きます。

先に結論を書きます。覚えるのは5つの型だけです。呪文の暗記は要りません。以下の型を、自分の業務の言葉に置き換えて使ってください。

プロンプトは5つの型で足りる

まず全体像を示します。

表1 業務で使うプロンプトの5つの型

何をする

効く場面

1. 材料を渡す

自社の資料・過去の文書を一緒に貼る

提案書、見積、報告書、社内文書

2. 出力の形を決める

表・箇条書き・文字数・宛先を指定する

社内共有、顧客向け文書

3. 条件を書く

使ってよい情報、避ける表現、前提を伝える

業界固有の制約がある文書

4. 反論させる

弱点や抜けを指摘させる

計画、価格設定、契約の確認

5. 手順を分ける

一度に頼まず、段階に分けて指示する

長い資料の作成、分析

5つを同時に使う必要はありません。1と2だけでも、出力は見違えます。

順番にも意味があります。上から順に、効果が大きく手間が小さい並びになっています。だから練習も上から始めてください。世の中に出回っている「使えるプロンプト集」は、多くが型2と型3の組み合わせです。型1(材料を渡す)が抜けていると、どれほど凝った指示文でも一般論しか返ってきません。

5つの型の使い方

型1: 材料を渡す(最も効きます)

多くの人が省略するのがここです。材料がないまま指示すると、AIは一般論を返します。一般論は、そのままでは使えません。

例文はこうなります。

以下は当社が昨年提出した提案書です。この構成と語り口をそのまま使い、今回の案件用に書き換えてください。案件の条件は次の通りです。(過去の提案書を貼る)(今回の条件を貼る)

材料になるのは、過去の提案書、議事録、規程、商品説明、顧客からのメールなど、社内にあるテキストです。「AIは自社のことを知らない」という前提を、材料で埋める作業だと考えてください。

貼れる量には上限があります。長い資料は、関係する章だけを抜いて渡すほうが精度が上がります。全部を貼ると、指示が資料に埋もれます。

入力してよい情報の線引きは、事前に決めておいてください。個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を入力する場合の留意点を注意喚起として示しています[5]。氏名や取引条件をそのまま貼るかどうかは、契約しているプランの扱いによっても変わります。判断の材料はAIに任せてはいけない業務の見分け方にまとめました。

型2: 出力の形を決める

形を指定しないと、長い文章が返ってきます。読む側の手間が増えるだけです。

上の内容を、社内会議で配る資料の形にしてください。A4半ページ、見出し3つ、各見出しの下は箇条書き3行以内。専門用語には短い言い換えを付けてください。

指定する項目は4つで足ります。分量・構造・宛先・語調です。宛先を書くと語調が自動的に決まるため、「社外の取引先向け」「現場の職員向け」の1語を入れるだけで書き直しが減ります。分量は文字数で書くほうが安定します。「簡潔に」では人によって解釈が違い、AIの解釈も揺れます。

表で出させたいときは、列名まで指定してください。「比較して」ではなく「項目・A社・B社・自社の4列の表で」と書くほうが速く着地します。

型3: 条件を書く

業界には固有の制約があります。それを伝えないと、使えない文章が返ってきます。

建設業の見積項目を洗い出してください。単価は書かないでください。仮設・運搬・処分・諸経費の区分を必ず含め、当社で使っていない用語は使わないでください。

条件は「やってほしいこと」より「やらないでほしいこと」を書くほうが効きます。数値を勝手に作らせないこと、断定を避けること、法令の条番号を推測で書かせないこと。この3つは業種を問わず入れておくと事故が減ります[1]

型4: 反論させる

経営に近い場面で最も価値が出る使い方です。褒めさせても意味がありません。

次の事業計画について、社外の投資家の立場で弱点を5つ挙げてください。根拠が薄い箇所と、数字の前提が甘い箇所を優先してください。

立場を指定するのが要点です。投資家、取引先の購買担当、監査法人、辞めそうな社員。立場が変わると、指摘の中身も変わります。1つの資料を3つの立場から見せるだけで、社内会議の1周分が短くなります。経営者の方がAIの実力を測るなら、この型が最短です。自社の事業計画や値決めを投げて、返ってきた指摘の鋭さを見てください。褒めさせる使い方では、性能差が分かりません。

続けて「その指摘に対して、どの数字を揃えれば説明できますか」と聞くと、次の作業が具体になります。

型5: 手順を分ける

長い成果物を一度に頼むと、途中が薄くなります。分けてください。

  1. 「この資料の要点を10行でまとめてください」
  2. 「その要点をもとに、章立てを提案してください」
  3. 「章立ての1章目だけを、800字で書いてください」

各段階で人が確認できるため、直しが小さくなります。最初から完成品を頼む形は、修正のたびに全体が書き換わるため、かえって時間がかかります。段階を分けるもう1つの利点は、途中で方針を変えられることです。章立ての段階で違和感があれば、そこで止められます。

Anthropicの公式ドキュメントでも、複雑な作業は段階に分ける手法(プロンプトチェイニング)が推奨されています[2]

公開されている事例集を使う

自作にこだわる必要はありません。公的機関が実務のプロンプトを公開しています。

東京都デジタルサービス局は、2024年1月に「都職員のアイデアが詰まった文章生成AI活用事例集」を公開しました。職員アンケートと勉強会から集めた34の活用事例が、実際のプロンプトつきで載っています[3]。都は2023年8月に文章生成AI利活用ガイドラインを定め、全局での利用を始めた経緯があります[4]

行政の文書と民間の文書は形式が違いますが、プロンプトの骨格は流用できます。挨拶文の作成、長文の要約、想定問答の作成、条件の整理。中小企業の総務や営業事務がやっている仕事と、かなり重なります。

公開事例を読むときは、指示の中身よりも構造を見てください。何を材料として渡しているか、どんな形式を指定しているか、どこに禁止事項を置いているか。この3点だけ抜き出せば、自社の業務に移し替えられます。丸写しでは自社の言葉に合いません。

使い方は単純です。事例集から近いものを1つ選び、自社の言葉に置き換えて保存します。これを5本ためれば、日常業務の大半が回ります。

業務別の例文3本

型を組み合わせると、こういう形になります。そのまま貼って使えるように書きました。

議事録の要約。

以下は会議の文字起こしです。決定事項、保留事項、担当者と期限の3つに分けてください。発言者名は残し、雑談は落としてください。数字が出てきた箇所には「要確認」と付けてください。

最後の一文が効きます。数字の確認漏れを、AI自身に指摘させる形です。

求人票の下書き。

以下は当社の既存の求人票と、今回募集する仕事の作業一覧です。作業一覧のうち「電話対応」「来客対応」「請求書の検算」だけを職務内容として書いてください。未経験でも応募できる書き方にし、専門用語は使わないでください。

材料(既存の求人票と作業一覧)と条件(3業務だけ)を同時に渡しています。棚卸しの結果をそのまま反映できるところが利点です。

クレームの一次回答。

以下はお客様からのご指摘です。当社の過去の回答例と同じ調子で、返信の下書きを作ってください。事実関係が確認できていない点は断定せず、「確認のうえご連絡します」と書いてください。謝罪の範囲は当社の対応の遅れに限定してください。

謝罪の範囲を指定するのが要点になります。ここを書かないと、責任の所在まで認める文面が出てくることがあります。送信前に人が読む工程は外さないでください。

うまくいかないときの直し方

出力が期待に届かないとき、直す場所は決まっています。

表2 症状ごとの直し方

症状

原因

直し方

一般論しか返ってこない

材料がない

過去の自社文書を貼る(型1)

長すぎて読めない

形式の指定がない

分量・構造・宛先を指定する(型2)

業界の実務と合わない

条件を伝えていない

使わない用語と禁止事項を書く(型3)

数字や条文が怪しい

検証を求めていない

出典の明示を求め、原典で確認する

途中で話が変わる

一度に頼みすぎ

段階に分ける(型5)

4行目は特に重要です。生成AIは、存在しない条文や統計を自然な文章で書くことがあります。数字と固有名詞は、必ず原典で確認してください。プロンプトの工夫で減らせますが、ゼロにはなりません。

社内用語を先に教えておく

同じ指示でも、社内の言葉が通じるかどうかで手戻りが変わります。自社の略語や商品名、取引先の呼び方は、AIにとって未知の語です。

対策は2つあります。1つは、指示の冒頭に用語の対応表を貼ることです。「当社では『A案件』を◯◯工事の意味で使います」と書くだけで、以降の出力が噛み合います。もう1つは、有料プランのカスタム指示や設定欄に、会社の前提を登録しておくことです。業種、扱う商材、顧客の層、使わない表現。この4項目を書いておけば、毎回説明する必要がなくなります。

登録した内容は社内で共有してください。担当者ごとに前提が違うと、同じ業務なのに出力の質がばらつきます。プロンプトより先に、前提の統一が効きます。

保存と共有のしかた

個人の工夫で終わらせると、会社としては前に進みません。うまくいったプロンプトは、その場で保存してください。

保存の形は簡単なものでよいはずです。共有フォルダにテキストファイルを1つ作り、「業務名/プロンプト/うまくいった点/注意点」の4行で書きます。凝った管理ツールは要りません。10本たまった段階で、よく使う3本を朝礼で共有する形が現実的です。

貯め方にコツがあります。成功したプロンプトだけを集めると、同じ失敗が繰り返されます。うまくいかなかった指示も、理由を1行付けて残してください。「この書き方だと単価を勝手に作った」という記録は、次の担当者にとって最も役に立つ情報になります。

3か月ほど続けると、自社の業務に効く型が5〜10本に絞られてきます。そこまで来たら、新人の教育資料に組み込む段階です。入社初日に渡す手順書へ、業務ごとの型を1本ずつ載せておけば、教える側の負担も軽くなります。

有料プランでは、よく使う指示を保存して呼び出す機能も用意されています。自社の前提(業種、扱う商材、社内用語)を最初に登録しておくと、毎回書く手間が消えます。プランごとの違いは社長が最初に触るAIツールの選び方で整理しました。

練習の順番と時間の目安

最初の1週間は、1業務だけで練習してください。毎日15分、同じ業務に同じ型を使います。3日目あたりで、材料の渡し方が自分の中で定まってきます。

2週目に型を1つ足します。型1と型2で回していたところに、型4(反論させる)を入れる形が自然です。ここまでで、社内の資料づくりはかなり速くなります。3週目には、同じ業務を担当している同僚に手順を見せてください。教えると、自分の型の穴が見つかります。

かける時間は1日15分で十分です。まとめて2時間の勉強会を開くより、毎日の実務で15分使うほうが定着します。研修を入れる場合も、この毎日の練習を前提に設計するほうが投資に見合います。

まとめ

覚える順番はこうです。

  1. 材料を渡す(型1)。ここだけで出力が変わります
  2. 出力の形を決める(型2)。分量・構造・宛先・語調
  3. 条件と禁止事項を書く(型3)
  4. 反論させて弱点を出す(型4)
  5. 長い作業は段階に分ける(型5)

そして、うまくいった1本を必ず保存してください。プロンプトは技能ではなく、社内に貯まる資産として扱うほうが投資に見合います。

自社のどの業務から試すか整理したい方はAI活用度診断へ。社内で使える型を業務ごとに作りたい方はAI研修・セミナー、まず相談したい方は無料相談をご利用ください。

※本記事の内容は2026年8月時点の各社ドキュメントと公開資料にもとづきます。機能名と仕様は変更されることがあります。

参考文献・出典

  1. Prompt engineering(プロンプト設計ガイド) — OpenAI(参照 2026-08-25)
  2. Prompt engineering overview — Anthropic(参照 2026-08-25)
  3. 都職員のアイデアが詰まった文章生成AI活用事例集 — 東京都デジタルサービス局(2024年1月・参照 2026-08-25)
  4. AI導入・活用ガイドライン、生成AI利用の手引き — 東京都デジタルサービス局(参照 2026-08-25)
  5. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について — 個人情報保護委員会(令和5年6月2日・参照 2026-08-25)