議事録ツールを精度で比べる時代は、ほぼ終わりました。日本語の音声認識精度は2026年時点で90〜96%に達し、専門用語を辞書登録すれば95%を超えます。主要ツールのあいだに、業務判断を変えるほどの精度差はもうありません。

では何で選ぶのか。自分が使っているAIツールから、蓄積した議事録を直接呼び出せるかどうかです。ここが2026年の分かれ目になりました。単体で完結するサービスは、AIを日常的に使う会社ほど早く行き止まりに突き当たります。

なぜ「MCP対応」が選定軸になったのか

MCP(Model Context Protocol)は、AIツールが外部サービスのデータを直接読みにいくための共通規格です。2024年11月にAnthropicが公開し、いまはClaude、ChatGPT、Cursorなど主要なAIツールが対応しています。

対応しているツールとしていないツールでは、使い方が根本的に変わります。

MCP非対応

MCP対応

過去の議事録を使うとき

ツールを開き、探し、コピーしてAIに貼る

AIに「A社との過去の打ち合わせを踏まえて」と言うだけ

横断的な問い

手作業では現実的に不可能

「今月の未完了の宿題を全部出して」が1問で済む

資料作成

議事録を探す時間が毎回発生

AIが自分で必要な会議を探して書き始める

議事録は、書いた瞬間より半年後に効く資産です。「あの件、前回どう決めたか」を探す時間は、清書の時間より実は長い。MCP対応かどうかは、その探す時間をゼロにできるかどうかの差になります。

MCPに対応しているのはどのツールか

2026年8月時点の対応状況です。ここでいう「公式MCP」は、各社が自社で提供し、OAuthで安全に接続できるものを指します。

ツール

出自

公式MCP

AIから読める範囲

Rimo Voice

国産

あり(2026年6月公開)

会議データ、文字起こし、要約

Circleback

海外

あり

会議+メール+カレンダー+人物・企業

Fireflies

海外

あり

文字起こし、要約、話者、横断検索

tl;dv

海外

あり

文字起こし、要約、参加者、意味検索

Otter.ai

海外

あり(双方向)

文字起こし、要約、アクションアイテム

Notta

国産

限定的

ローカル音声の文字起こし用の拡張が中心

Otolio(旧スマート書記)、YOMEL

国産

確認できず

Granola、Limitless

海外

なし(有志製のみ)

Rimo Voiceは、2026年6月2日にCLIとMCPを公開し、国内の議事録ツールで初めてAIエージェント連携を実現しました。さらに2026年8月には、Anthropicの公式コネクタディレクトリに国内の議事録ツールとして初めて掲載されています。日本語特化の精度と、権限管理を伴うMCPの両方が要るなら、現時点での第一候補です。

Circlebackは、MCPで読める範囲が最も広いのが特徴です。会議の要約・文字起こし・アクションアイテムに加えて、メールとカレンダー、人物・企業の情報まで含みます。メールを含むのは他にない点で、「この取引先との経緯を全部踏まえて提案書を書いて」といった指示が通ります。

そのほかFellow、Read AI、MeetGeek、Avoma、Krispにも公式MCPがあります。逆に、日本で知名度の高いNottaは、MCPとしてはClaude Desktop向けのローカル拡張(手元の音声ファイルを文字起こしする用途)が中心で、蓄積した議事録をAIから横断検索する形にはなっていません。Zapier経由でつなぐ回避策はありますが、経路が1つ増えます。

なお、議事録の置き場所としてNotionを使っているなら、Notionにも公式MCPがあります。議事録ツール側がMCP非対応でも、Notionに集約してからAIに読ませるという組み立ては有効です。

音の拾い方が自社の会議と合っているか

MCP対応を確認したら、次に見るのは「どうやって音を拾うか」です。ここが自社の会議形式と噛み合っていないと、機能以前に使われません。

音の拾い方

代表的なサービス

向いている会議

Web会議ボット型

Zoom・Teams・Meetにボットとして参加

tl;dv、Fireflies、Circleback、Rimo Voice

オンライン中心の定例・商談

録音アプリ型

スマホやPCのアプリで録音して処理

Notta、Rimo Voice、Otolio

対面の会議、現場での打ち合わせ

専用ハード型

専用デバイスで拾う

PLAUD

PCを開けない場面

料金の目安は、2026年時点でRimo Voiceが月1,650円(税込)から、Nottaのビジネスプランが1人あたり月2,508円から。すでにMicrosoft 365を使っているなら、Microsoft 365 Copilot(1人あたり月4,497円・税抜)で賄う選択肢もあります。ただしMCP機能は有料プラン限定のことが多いので、無料枠で試して本契約する場合は対応範囲を確認してください。

「議事録が作れる」で満足してはいけない

文字起こしと要約が出ただけでは、業務は1分も減りません。減るのは清書の時間だけで、誰が何をするかを整理する時間は残ります。任せる範囲を3段階で考えてください。

段階

AIに任せる範囲

削減される時間の目安

第1段階

文字起こしと要約

清書の時間(30〜60分)

第2段階

決定事項・宿題・担当者・期限の抽出

整理と共有の時間(15〜30分)

第3段階

蓄積した議事録をAIから直接参照する(MCP)

過去を探す時間そのもの

第2段階では、要約の出力形式を「決定事項/宿題(担当者・期限つき)/持ち越し論点」の3見出しに固定してください。これを最初に決めるだけで定着率が変わります。第3段階に届いてはじめて、議事録が読み返される資産になります。

精度が出ないときに疑うところ

「試したが精度が低かった」の大半は、ツールではなく環境が原因です。契約を変える前に確認してください。

  • マイクの位置。 会議室でノートPCの内蔵マイク1台では遠い席を拾えません。会議用スピーカーマイクを1台置くだけで変わります
  • 辞書登録。 自社の商品名・取引先名・略語は初期状態では正しく変換されません。まず固有名詞を30語ほど登録してから評価する
  • 要約だけを見て判断していないか。 要約が的外れでも文字起こし本体は正確なことがよくあります。その場合はツールではなく指示文を直すのが正解です

導入前に決めておく3つのこと

技術より運用の取り決めのほうが事故につながります。

  1. 録音の告知と同意。 冒頭で「記録のためAIで録音します」と伝える運用に統一する。取引先が同席する会議では事前に承諾を取る
  2. 機密情報の線引きと、MCPの接続範囲。 人事評価や係争案件など、外部サービスに送ってよくない会議を決める。MCPでつなぐと、AIが会議データを横断して読める状態になります。誰のアカウントで、どの範囲まで接続するかを先に決めてください
  3. 最終確認は人が行う。 固有名詞や金額の聞き間違いは残ります。金額・日付・数量は共有前に発言者本人が目視で確認する(AIに任せてはいけない業務の見分け方

まとめ:1つの定例会議から始める

  1. 毎週ある定例会議を1つ選ぶ
  2. MCP対応のツールから、自社の会議形式に合う型を選んで1か月試す
  3. 要約のテンプレートを「決定事項/宿題/持ち越し」に固定する
  4. 1か月後、自分のAIツールから過去の議事録を呼び出してみる。ここで効果を判断する

精度で選ぶと、1年後に乗り換えることになります。AIから呼べるかどうかで選べば、議事録が貯まるほど価値が増える側に立てます。社内で使うAIツール自体をまだ決めていない方は社長が最初に触るAIツールの選び方を先にご覧ください。どの業務から着手すべきか整理したい方はAI活用度診断、全体設計を相談したい方はAI導入コンサルティング無料相談へどうぞ。

※サービス名・料金・MCP対応状況は2026年8月時点の各社公表情報にもとづきます。この領域は動きが速いため、契約前に必ず公式ページで最新の対応状況をご確認ください。