経理BPOの相場を調べると、月5,000円から月40,000円まで幅のある数字が並びます(2026年8月時点[1])。この幅は会社の規模の差ではありません。経理BPOの相場は、月間の仕訳数と、どこまで任せるかの2つでほぼ決まります。

自社がどのあたりに入るのかは、先月の仕訳数を数えれば見当が付きます。順に見ていきます。

仕訳数別の相場

まず土台になる数字を並べます。記帳代行を中心とした委託の目安です。

表1 月間仕訳数別の料金目安(2026年8月時点)[1]

月間仕訳数

月額の目安

想定される会社

〜50件

5,000〜10,000円

個人事業、設立まもない会社

〜200件

15,000〜30,000円

従業員10名前後

500件以上

40,000円〜

複数口座・取引先が多い会社

仕訳数とは、会計ソフトに入力する行数です。数え方は単純です。売上の入金、経費の支払い、給与の振込、それぞれが1件です。通帳の明細行数と、経費精算の件数を足すと近い数字になります。先月の通帳を開いて数えてみてください。

従量課金の会社もあります。1仕訳あたり数百円という単価設定で、1仕訳300円×100件なら月3万円という計算です[1]。取引量が月によって大きく動く会社は、固定額のほうが読みやすくなります。逆に閑散期がはっきりしている会社は、従量のほうが年間では安く収まります。

業務範囲で金額が変わる

同じ仕訳数でも、どこまで任せるかで倍ほど違います。

表2 業務範囲ごとの追加費用の目安(2026年8月時点)[1]

業務

費用の目安

入力のみ(仕訳の登録まで)

月5,000〜15,000円

試算表の作成まで

月20,000〜30,000円台

給与計算代行

従業員1人あたり月1,000〜3,000円

年末調整・法定調書の作成

年10,000〜30,000円

償却資産税の申告

年5,000〜15,000円

資料整理(紙がそろっていない場合)

月5,000〜10,000円

最後の行に注意してください。領収書が封筒に入ったまま届く状態だと、整理の手間が別料金になります。月1万円の差は年12万円です(表2の目安[1]による)。社内でスキャンしてファイル名を付けるだけで、この費用は消えます。

請求書の発行、入金の消込、支払いの実行までを含めると、月10万円を超える設計になります(2026年8月時点の目安)。ここまで来ると、記帳代行というより経理部門の外部化です。

見積もりを見るときは、金額より先に「含まれない業務」の欄を読んでください。安い見積もりほど、含まれない業務が多く書いてあります。あとから追加を頼むと単価が上がるため、最初から必要な範囲で比べたほうが総額は下がります。

相場から外れる会社の見分け方

表1に当てはまらない会社があります。金額が上振れするのは次の場合です。

  • 現金取引が多い(飲食・小売など。日次の売上金の記録が仕訳数を押し上げます)
  • 口座が5つ以上ある、またはクレジットカードを部門ごとに分けている
  • 外貨建ての取引がある
  • 建設業や不動産業で、工事ごと・物件ごとの原価管理が必要

いずれも「仕訳数は少ないのに手間がかかる」型です。仕訳数だけで見積もりを取ると、契約後に追加費用の相談が来ます。最初の問い合わせで、口座数と現金取引の有無を伝えてください。それだけで見積もりの精度が上がります。

逆に下振れするのは、取引先が固定で毎月同じ仕訳が繰り返される会社です。パターンが決まっていれば自動化しやすく、その前提で安く出してくれる委託先があります。

1人採用した場合と比べる

判断の基準は「高いか安いか」ではなく、代わりに何をするかです。経理担当を1人雇う場合、給与と社会保険料で月25万〜35万円かかります[2]

表3 経理担当1名の採用と委託の比較(2026年8月時点の目安)

1名採用

経理BPO

月あたりの費用

25万〜35万円[2]

1万〜10万円[1]

立ち上がりまで

求人・採用・引き継ぎで3〜6か月

契約から1〜2か月

休んだとき

業務が止まる

委託先の中で代替される

退職リスク

ある

契約の範囲で継続

社内に残るもの

業務知識が人に付く

手順が文書に残る

仕訳300件程度までの会社なら、金額だけで見れば委託が明確に安く付きます。採用が難しくなっている状況では、そもそも募集して採れるかという問題もあります。この点は人手不足の会社がAIを使う理由の記事で扱いました。

一方、社内に人を置く利点もあります。数字の意味を社長にその場で説明できること、他部門の相談を受けられること。ここを重視するなら、入力作業だけを外に出し、社内の1人は数値の確認と分析に回すという分け方になります。

すでに経理担当がいる会社が委託を検討する場面もあります。その人が辞めそうなとき、産休に入るとき、他の業務に回したいとき。この場合に大事なのは、辞める前に委託を始めることです。引き継ぎができる人が社内にいる状態で移せば1か月で済みますが、いなくなってからでは、通帳と書類の山から状況を再構成する作業が発生します。移行の費用は、担当者が在籍しているかどうかで大きく変わります。

AI-OCRを前提にしているかで、委託先の質が分かれます

ここが2026年時点の判断材料です。料金表には出てきません。同じ「経理代行」でも、中の作業のやり方が会社によって違います。

紙の領収書を目で見て手入力している会社と、AI-OCR(画像から文字を読み取る仕組み)で自動読み取りしたうえで人が確認している会社があります。表面の料金が同じでも、後者のほうが誤りが少なく、月次が早く締まります。

生成AIを何らかの形で業務利用している日本企業は86.4%に達しています[4]。経理の委託先も例外ではありません。ただし「AIを使っています」という説明だけでは、どの工程に使っているのかが分かりません。読み取りに使っているのか、仕訳の勘定科目の推定にも使っているのかで、確認すべき点が変わります。

委託先に確認する質問を3つ挙げます。

  1. 領収書や請求書の読み取りに、AI-OCRを使っていますか。使っている場合、読み取り後の確認は誰がしますか
  2. 使っている会計ソフトは何ですか。自社が今使っているソフトのまま続けられますか
  3. 電子帳簿保存法の要件に沿った保存は、どちらの責任で行いますか

3つ目は重要です。電子帳簿保存法では、メールやクラウドで受け取った請求書などの電子取引データを電子のまま保存することが求められます[3]。この義務は委託しても自社に残ります。委託先がどこまで担うのかを契約前に確かめてください。

AIによる読み取りは万能ではありません。金額の桁や、似た取引先名の取り違えが起こります。読み取り結果を人が確認する工程が残っているかどうかが、精度を決めます。確認工程を外してはいけない業務の考え方はAIに任せてはいけない業務の記事にまとめました。

依頼する前に社内で決める3項目

見積もりを取る前に決めておくと、比較が正確になります。

1つ目は、いつまでに何が欲しいかです。月次の試算表が翌月10日に欲しいのか、20日で構わないのか。締めが早いほど費用は上がります。銀行や取引先への提出期限から逆算して、必要な日付を1つ決めてください。

2つ目は、社内に残す業務です。請求書の発行と入金確認は社内、記帳と試算表は委託、という分け方が一般的です。売上に直結する業務を社内に残すと、数字の異常に気づく人が社内にいる状態を保てます。

3つ目は、資料の渡し方です。紙で郵送するのか、スキャンしてクラウドに置くのか。後者にできれば、前述の資料整理費が消えるうえに、月次が数日早まります。スマートフォンで撮影してフォルダに入れるだけの運用でも足ります。

渡し方を変えるのは、社内の習慣を変える作業です。営業担当が財布に領収書をためる文化があるなら、そこから手を付けてください。撮影して送る、という1動作に変えるだけで、月末の回収作業がなくなります。導入の順番としては、委託の契約より先に着手して構いません。

この3つを決めてから、2社か3社に同じ条件で見積もりを依頼してください。条件がそろっていない見積もりは比べられません。

依頼するとき、先月分の通帳のコピーと経費の一覧を添えると、精度の高い金額が返ってきます。「だいたい月100件くらい」という自己申告で取った見積もりは、実際に始めてから修正されることが多くあります。実物を見せたほうが、あとの手戻りが減ります。

契約の期間にも目を向けてください。年間契約で割引がある一方、途中解約に違約金が付く場合があります。最初の3か月は月次契約にして、進め方が合うかを確かめてから年間に切り替えるという交渉は、たいてい通ります。

月次が締まる日を1日でも早くする

委託して得られるものは、費用の削減だけではありません。数字が早く出ることのほうが、経営には大きく響きます。

翌月25日にしか試算表が出ない会社では、6月の赤字に気づくのが7月末です。手を打てるのは8月から。2か月遅れます。翌月10日に出る会社なら、7月の頭から動けます。同じ売上でも、判断の速さで着地が変わります。

早めるための条件は3つあります。

表4 月次を早く締めるための条件

条件

具体的にやること

資料が月初にそろう

経費精算の締めを月末に固定し、遅れた分は翌月扱いにする

資料が電子で届く

領収書はスマートフォンで撮影してクラウドへ。郵送を減らす

判断が必要な取引を先に片づける

勘定科目が迷う取引だけ、月初に社内で決めて委託先へ伝える

3つ目を軽視すると、委託先からの質問メールが月末まで続きます。質問が1往復増えるたびに、締めは2〜3日遅れます。迷いそうな取引は先回りして伝えてください。

委託しても社内に残る仕事

外に出せない業務があります。承認と、判断です。この2つは残ります。

支払いの実行、経費の可否判断、取引先との条件交渉。これらは社内に残ります。委託によって減るのは入力と集計の時間で、意思決定の時間は減りません。むしろ、数字が早く出てくるぶん、判断に使える時間が増えます。

「経理を丸ごと任せられる」と考えて契約すると、期待とずれます。任せられるのは手を動かす部分です。そのぶん社長や管理者が数字を見る時間を確保できる、という組み立てで検討してください。

委託先が変わっても、社内で数字を読む人は必要です。読める人がいない会社は、月次が早く出ても使いこなせません。ここは委託ではなく、社内で育てる部分になります。試算表の見方を社長が身につけるだけでも、委託の価値は倍になります。

AX総合研究所では経理代行・記帳代行として、記帳から月次の数値整理までをお引き受けしています。AIによる読み取りと人の確認を組み合わせた進め方で、BPO(業務代行)は月額80,000円からです(2026年8月時点)。

まとめ

経理BPOの相場は、仕訳数と業務範囲で決まります。50件までなら月5,000〜10,000円、200件までなら月15,000〜30,000円が目安で、給与計算や年末調整を足すとそのぶん乗ります[1]

比べる相手は他社の見積もりだけではありません。1人採用した場合の月25万〜35万円[2]と、その人を採用できるかどうかも並べてください。そのうえで、資料の渡し方を電子に変えるだけで費用が下がることも覚えておいてください。

自社の仕訳数でいくらになるのか、どこまで社内に残すべきかを含めて、無料相談で個別にお話しします。

参考文献・出典

  1. 記帳代行の相場と料金体系:最適な経理代行の選び方 — CASTER BIZ accounting(参照 2026-08-29)
  2. 経理アウトソーシングの費用相場はいくら?料金に関する注意点も解説 — Bricks&UKアウトソーシング(参照 2026-08-29)
  3. 電子帳簿保存法関係 — 国税庁(参照 2026-08-29)
  4. 令和8年版 情報通信白書 生成AIの業務利用状況 — 総務省(参照 2026-08-29)

※本記事の料金は2026年8月時点の公開情報にもとづく目安です。実際の金額は取引量・業務範囲・資料の状態により変わります。