AI研修の助成金申請は、研修が終わってからでは間に合いません。人材開発支援助成金は、訓練開始日の1か月前までに計画届を出した会社だけが対象になります[1][3]。逆に言えば、この1枚を期限内に出しておけば、あとの手続きは事務作業です。

研修会社に見積もりを取る前に、社内でやるべきことがあります。日付を決めることです。

どのコースで出すのかを先に決める

人材開発支援助成金には7つのコースがあります[1]。AI研修で使うのは、ほぼ次の2つに絞られます。

表1 AI研修で候補になる2コースの違い(中小企業・2026年8月時点)

事業展開等リスキリング支援コース

人材育成支援コース

経費助成率

75%[5]

45%〜(訓練内容により変動)[1]

賃金助成(1人1時間)

1,000円[5]

760円〜[1]

求められること

事業展開に伴う新しい知識・技能であること

職務に関連した知識・技能であること

向いている会社

業務のやり方そのものを変える会社

既存業務の底上げをしたい会社

率が高いのは事業展開等リスキリング支援コースです。そのぶん、「事業をどう変えるのか」を書く様式第2号が加わります。AI研修で助成金を検討する会社のほとんどは、業務のやり方を変えたくて相談に来ます。その意図があるなら、率の高い側を選んで様式第2号を書くほうが得です。

このコースは令和4年度に始まった期間限定の制度です[1]。年度ごとに要件が見直されており、2026年8月3日にも改正が入りました[5]。使う予定があるなら、要件が変わる前に一度出しておくという判断はあり得ます。

申請は2回に分けて出す

助成金の窓口に行くのは2回です。研修の前と、研修の後。それぞれ別の書類を出します。

表2 提出の2段階と期限(事業展開等リスキリング支援コース・2026年8月時点)

段階

期限

主な提出物

提出先

計画届

訓練開始日の1か月前まで

職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、事業展開等実施計画(様式第2号)、対象者一覧(様式第4-1号)

事業所所在地を管轄する都道府県労働局[1][3]

支給申請

訓練終了日の翌日から2か月以内

支給申請書(様式第5号)、経費助成の内訳(様式第7-1号)、賃金助成の内訳(様式第6号)、OFF-JT実施状況報告書(様式第9-1号)

同上[3]

この2つの期限だけは、社内の誰かの頭に入れておいてください。 どちらも1日でも過ぎたら受け付けられません。研修の内容がどれだけ良くても、支給はゼロになります。

電子申請にも対応しています。雇用関係助成金ポータルから提出できるため、労働局へ足を運ぶ必要はありません[2]。ただし電子申請にはgBizIDプライムのアカウントが要ります。取得には印鑑証明書の郵送が必要で、審査に日数がかかります。まだ持っていない会社は、計画届の準備と並行して申請を始めてください。ここで2週間を失うと、1か月前の期限に届かなくなります。

窓口へ紙で出す方法も残っています。初めての申請で不安があるなら、窓口のほうが安全です。その場で不足を指摘してもらえるためです。2回目以降は電子申請に移せば、書類のやり取りが1日で済みます。

「1か月前」は研修の初日から数える

期限の「1か月前」は、研修の初日から数えます。9月20日に第1回を実施するなら、8月20日が計画届の締切です。研修会社との契約日でも、社内で決裁した日でもありません。

ここで多くの会社がつまずきます。研修会社を選び、日程を調整し、稟議を通してから助成金を調べ始めると、初日まで2週間しか残っていないという状況になります。そうなると、選べる道は2つです。研修を1か月先に延ばすか、助成金をあきらめるか。

順番を入れ替えてください。研修会社の候補が2社に絞れた時点で、仮の初日を置いて逆算します。金額の交渉と並行して計画届の準備を進めれば、どちらも間に合います。AI研修の費用そのものの相場はAI研修の費用相場の記事にまとめました。

仮の初日は、あとから変えられます。訓練の内容や日程が変わったときは、職業訓練実施計画変更届(様式第3号)を出せば済みます[3]変更が利くのに、遅れは取り返せません。だからこそ、確定を待たずに先に出すという判断になります。

研修会社を選ぶときは、助成金の申請実績があるかを最初に聞いてください。カリキュラムの時間数や講師の要件を、助成金の様式に合う形で出してもらえるかどうかで、社内の手間が大きく変わります。要件を知らない研修会社に当たると、時間数の内訳を自社で組み直すことになります。

計画届で何を書くのか

計画届は1枚ではありません。事業展開等リスキリング支援コースでは、次の様式を組み合わせて出します[3]

表3 計画届の段階で提出する主な様式(2026年8月時点)

様式番号

名称

書く内容

様式第1-1号

職業訓練実施計画届

訓練の名称、期間、時間数、実施場所、受講者数

様式第2号

事業展開等実施計画

どの事業をどう変えるのか。このコースの中核

様式第4-1号

対象者一覧

受講する社員の氏名、雇用保険番号、職種

様式第11号

事前確認書

支給要件を満たしているかの自己確認

様式第14-1号

事業所確認票

事業所の基本情報

様式第10-2号

OFF-JT部外講師要件確認書

外部の研修会社に頼む場合の講師要件

あわせて、研修会社との契約書またはカリキュラムがわかる資料、受講者の雇用保険加入がわかる書類を添えます。研修会社に依頼すれば、カリキュラムと時間数の資料は先方が用意します。社内で書くのは様式第2号だけと考えて差し支えありません。

様式第2号に何を書くかで結果が決まる

事業展開等実施計画は、このコースの名前そのものです。「事業展開などに伴い、必要となる新たな知識や技能を習得させる訓練」が対象なので、ここが薄いと通りません。

事業展開は、訓練開始日から3年以内に実施する予定のもの、または6か月以内にすでに実施したものである必要があります[1]。過去の話でも将来の話でもよいのですが、時期の枠は決まっています。

書き方の実際を挙げます。「社員の生成AIリテラシー向上」では通りません。何の事業を、どう変えるのかを書きます。

  • 見積書の作成を内製化し、外注していた積算業務を社内に戻す
  • 顧問先向けの月次報告を自動生成し、担当1人あたりの受け持ち件数を増やす
  • 問い合わせの一次回答を自動化し、営業時間外の対応を始める

いずれも「事業をどう変えるか」の文になっています。その事業展開のために、この研修が必要だという順番で書きます。2026年8月3日の改正で汎用的なAI研修が対象外になった経緯はAI研修と助成金の記事に詳しく書きました。

書く材料が社内にない、と感じたときの探し方も挙げておきます。直近1年で「人が足りなくて断った仕事」を思い出してください。断った理由が処理量なら、それが事業展開の種です。受けられなかった案件を受けられる状態にする、と書けば様式第2号は埋まります。

もう1つの探し方は、外注費の明細です。毎月出ている外注に、AIで内製化できるものが混ざっていないか。積算、原稿作成、データ入力、文字起こし。金額が見えている業務は、変化も数字で書けます。どの業務をAIに任せてよいかの線引きはAIに任せてはいけない業務の記事で扱いました。

訓練時間の数え方で助成額が変わる

支給対象になる訓練には時間の下限があります。10時間以上です[5]。9時間50分では対象外になります。

問題は、この10時間の数え方です。休憩時間は含みません。遅刻した社員のその日の時間も、実際に受講した分しか数えられません。5名で受講して1名が2回欠席した場合、その1名分の助成額だけが減ります。

表4 経費助成の1人あたり上限(中小企業・2026年8月時点)[5]

訓練時間

経費助成の上限

10時間以上100時間未満

30万円

100時間以上200時間未満

40万円

200時間以上

50万円

eラーニング・通信制(時間によらず一律)

15万円

多くのAI研修は10時間から20時間の設計なので、上限は30万円です(2026年8月時点)。受講料が1人20万円なら、75%の15万円が上限の範囲に収まります。上限に当たるのは、1人あたり40万円を超える研修を発注したときだけです。

賃金助成は別枠です。受講中の社員に払った給与に対し、1人1時間あたり1,000円が付きます[5]。10時間の研修に5名なら、10×5×1,000で5万円です。金額としては大きくありませんが、申請の手間は同じなので取り切ってください。

なお、eラーニングは2026年8月の改正で年1回までという制限が入りました[5]。対面と組み合わせる設計なら影響を受けませんが、eラーニングだけで年に何度も回す計画は立てられません。

支給申請でそろえる書類

研修が終わったら、翌日から2か月以内に支給申請を出します。ここで提出するのは実績の記録です[3]

  • 支給申請書(様式第5号)
  • 経費助成の内訳(様式第7-1号)と、支払いを証明する請求書・領収書
  • 賃金助成の内訳(様式第6号)と、賃金台帳・出勤簿
  • OFF-JT実施状況報告書(様式第9-1号)
  • 支給申請承諾書(様式第12号)

提出のとき、社内の誰が何を持っているかで手間が変わります。請求書と領収書は経理、賃金台帳と出勤簿は労務、研修の記録は受講した部署にあります。3か所から集める作業になるので、研修が終わった週のうちに声をかけておくと2か月の期限に余裕が生まれます。

賃金台帳と出勤簿は、研修期間を含む月のものを求められます。研修当日の勤怠を「通常出勤」で処理していると、賃金助成の計算が合わなくなります。研修日は研修として記録してください。この1点だけで差し戻しが起きます。

eラーニングや通信制で実施した場合は、様式第9-2号または第9-3号を使います[3]。実施形態ごとに報告書が分かれている点に注意が必要です。

落ちる理由は中身ではなく手続き

不支給の連絡が来る会社に共通するのは、研修の質ではありません。次の5点です。

表5 不支給・差し戻しの主な原因と防ぎ方

原因

何が起きるか

防ぎ方

計画届の遅れ

訓練開始日の1か月前を過ぎている

研修会社の選定と同時に仮の初日を置く

事業展開の記載不足

様式第2号が「リテラシー向上」で終わっている

変える業務を1つ名指しする

勤怠との食い違い

出勤簿の記録と訓練時間が一致しない

研修日を勤怠上も研修として記録する

訓練時間の不足

実施時間が10時間の下限を割る

遅刻・早退の扱いを事前に決める

支給申請の遅れ

終了日の翌日から2か月を過ぎている

終了日にカレンダーへ締切を登録する

このうち上の2つは、研修が始まる前にしか直せません。残る3つは運用でどうにでもなります。つまり、申請の成否は研修開始前のひと月でほぼ確定します。

差し戻しは不支給とは違います。労働局から連絡が来て、書類を直せば通ります。怖いのは連絡に気づかないことです。申請の窓口になる担当者を1人決め、labor局からの郵便とポータルの通知を見る人をはっきりさせてください。担当者が退職や異動でいなくなると、その時点で止まります。

期限そのものを勘違いする例もあります。支給申請の「訓練終了日の翌日から2か月以内」は、最後の研修日の翌日が起点です。修了証を発行した日でも、請求書が届いた日でもありません。全5回の研修なら、第5回の日付をカレンダーに入れてください。

雇用関係助成金には、労働関係法令の違反や労働保険料の未納など、コース共通の不支給要件もあります[1]。社会保険労務士を顧問に付けている会社は、申請の前に一度確認を取ってください。顧問料の範囲で申請を代行してもらえる場合もあります。自社で書くか任せるかは、様式第2号を自分で書けるかどうかで決めてください。事業展開の中身は社長にしか書けない一方、様式の埋め方や添付書類の管理は外に出せます。

発注前から逆算する進行表

初日を9月20日に置いた場合の進み方を並べます。日付はすべて目安です。

表6 訓練開始日から逆算した進行の目安

時期

やること

初日の10週間前

変える業務を1つ決める。研修会社に相談を始める

初日の8週間前

カリキュラムと見積もりを受け取る。仮の初日を確定する

初日の6週間前

様式第2号を書く。対象者を確定する

初日の5週間前

計画届一式を労働局へ提出する(法定の期限は1か月前)

研修期間中

出勤簿・研修記録・受講報告を毎回そろえる

終了日の翌日から2か月以内

支給申請を提出する

法定の期限は1か月前ですが、5週間前を目標に置くと、書類の不備を直す余裕が生まれます。労働局から補正の連絡が来ることは珍しくありません。

AX総合研究所のAI研修は、この助成金を使う前提で設計しています。5名までで300,000円、経費助成75%が適用された場合の実質負担は75,000円が目安です(1名あたり15,000円・2026年8月時点の試算)。対象になるかどうかは会社ごとの状況で変わるため、AI研修のページで内容を確認したうえで、無料相談で個別にお調べします。

まとめ

AI研修の助成金申請は、書類の巧拙ではなく日付の管理です。訓練開始日の1か月前までに計画届を出し、様式第2号に「変える業務」を1つ書き、終了後2か月以内に支給申請を出します。この3点を守れば、経費の75%は戻ってきます(中小企業・2026年8月時点)[5]

いま研修会社を探している段階なら、初日の候補を1つ決めてください。そこから10週間さかのぼった日が、動き始めるべき日です。自社が対象になるかどうかを含めて、無料相談で一緒に確かめます。

参考文献・出典

  1. 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照 2026-08-29)
  2. 雇用関係助成金ポータル「人材開発支援助成金」に関するお知らせ — 厚生労働省(参照 2026-08-29)
  3. 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)様式等一覧 — 新潟労働局(参照 2026-08-29)
  4. 人材開発支援助成金の申請書類一覧 — 厚生労働省(参照 2026-08-29)
  5. 人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コースとは?」最大75%助成・令和8年8月改正の変更点を解説【2026年度】 — 補助金ポータル(参照 2026-08-29)

※本記事の制度内容・助成率は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。要件と様式は改正されることがあるため、申請前に管轄の都道府県労働局で最新の内容をご確認ください。助成の可否は個別の状況により判断されます。